中学生が執筆する「税についての作文」について、今年度である令和5年度の内閣総理大臣賞は、東京都北区の中学生の方が受賞されました。
正直な話、お世辞抜きに素晴らしい作文なので、どなたさまも一読されることをお勧めします。
ブログ筆者の事務所も東京都北区にありますので、北区つながりとして、受賞を祝して紹介させていただきます。
国税庁ホームページで作文が読めます
税についての作文は、国税庁ホームページ「税の学習コーナー」で読めます。
参考:令和5年度 中学生の「税についての作文」各大臣賞・国税庁長官賞受賞者発表
お忙しい方は、書き出しの一段落目でもよいから、目を通してみてほしいです。格調高い文章に、大人顔負けであることがわかります。受賞作であることは万人が納得するでしょう。
税の負担・税の給付
受賞作だけでなく、「税についての作文」で共通していることとして、税の負担だけでなく、税の給付についても言及されていることは重要です。
これは中学校の公民の教科書でも書かれていることだと思いますし、大人向けとしては、財政学の書籍でも次のことが書かれています。
最後に、税負担を論じるに当たっては、負担と給付を総合した「純負担」で考えることが非常に重要であることを述べておきたい。ごく当たり前のことだが、人々から徴収された税はすべて、何かしらの形で人々に給付されている。それは子育て支援かもしれないし雇用支援かもしれないが、いずれにせよ税収は人々へ何らかの形で還元されているという事実が大切である。
引用:高端正幸・佐藤滋『財政学の扉をひらく』有斐閣、2020年 P.49
昨今よく耳にする「増税メガネ」などという誹謗中傷は、相手が反論してこないから、言いたい放題なのでしょう。
しかし、その「増税」がどこに行くのかという給付の効率性や、増税と給付の差額である「純負担」を述べている人はほとんど見たことがありません。
同業の知名度のある税理士の方でも、増税について「景気が悪くなる」「国が終わる」などと激怒している人を見かけたことがあります。
しかし、増税は給付の財源にもなりうるわけですから、その増税分が適切な給付に回るならば、景気はさほど変わらないようにも思われます。増税で「国が終わる」なら、国民負担率がもっと高い欧州諸国はすでに壊滅していると思います。
増税を批判する人にとっては、税金は「蒸発して消えてなくなる」ようなイメージなのかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか。
中学生が論じている「税の負担・税の給付」が、なぜ大人になると、さほど理解されなくなるのか。租税教育の難しさを感じるところでしょう。
(誤解のないように付言しておきますが、現行の日本の社会保障は老年層向けに片寄っています。「給付に問題がない」といっているわけではありません)