iDeco(イデコ)や小規模企業共済に加入した場合に、所得控除によって受けられる税の減少について「年利」「利回り」と書いている記事や動画を見かけることがあります。
なんだか違和感があるので、ブログに意見を書いておきます。
所得(利益)が減ったから税が減少した
イデコや小規模企業共済の掛金を支払うと、所得控除を受けることができます。この所得控除により、課税される所得が減少したことで、税も減少します。
ということは、掛金を払ったことで、所得(利益)は減少したのだから、「所得(利益)はマイナス」という気がします。
「税が戻って、もうかった」ように感じますが、実際の所得は、掛金を払う前によりも減少しています。(所得が減ったから税負担も減る)
また、源泉徴収のない所得の場合は、確定申告時には納税します。イデコなどの掛金の支払いで所得控除が増えても、納税額が当初よりも減るだけですので、還付はありません。
税が戻れば利益か?
上記の意見については、「そうではない、外部に年金や掛金を積み立てたので、これは投資だ。その投資に対して税が戻ってきたから利益で、投資額に対する税の還付の割合が年利だ」という反論がありそうです。
まず、「税が戻れば、利益か」という点で考えてみることにします。
税率を20%と仮定します。医薬品を5万円買って、医療費控除で税金1万円の減少(還付)を受けたものとします。
この場合、医薬品は「年利20%」なのでしょうか? 医薬品の購入後、税で一部の補助を受けたように見えます。
この税の戻りを仮に利益と考えるとしても、「年利」という説明には引っかかりを覚えます。
設例についても異論がありそうです。「医薬品は使うもので、投資ではない」という意見もあるでしょう。
拠出時のみ税の減少は「年利」か?
さきほど書いたとおり、税の減少が生じるのは、所得が減ったために起こります。これは、1回の掛金の支払いに対して生じた、1回きりの税の減少です。
この税の減少について、「年利」や「利回り」と書くのは適切なのでしょうか。筆者の認識では、「年利」や「利回り」とは、投資に対して継続的に生じるイメージを持っていました。
税の減少は、投資そのものが生み出した収益ではないので、これを「年利」「利回り」と書くとなんだか違和感があります。
受取時の「年利」はマイナスでは
税の還付を「年利」「利回り」と説明するなら、イデコや共済の給付を受けた場合、この給付について課税されると、「年利」「利回り」はマイナスということになります。
給付の受取時は「年利はマイナスになる」と、同時に説明することになるでしょう。
年金の追納も「年利」では?
「年利」と説明する傾向が生じやすいのは、外部に拠出した掛金を「自己の資産」と認識していることも理由にあるかもしれません。
例えば、国民年金の追納をした場合には、社会保険料控除によって税が減少し、将来の受取年金は増額しますが、これを「年利20%、超お得!」と説明しているコンテンツは見たことがありません。
老齢年金は「自己の資産」ではない、という感覚の違いがあるように感じます。
用語の問題か
所得控除が増えたことで、その掛金の支払時の税金が減少することは事実です。税負担は「コスト」だから、税負担が減少したならば、その反対の「利益」だという考えもあるでしょう。
ここでいいたかったことは、「年利」という用語が適切なのか、という疑問です。これは、たとえば「節税の効果」などであれば、まだ納得できる範囲のようにも思われます。
ふと感じた疑問を書いておきました。知見のある方ならば、もっとよい説明もできるのでしょうが、悩む疑問でした。

電子申告や電子納税など、他の税理士さんがあまり採り上げそうにない税務の話題をブログに書いています。オンライン対応に特化した税理士です。