インボイス登録の電子通知データは5年後に見られなくなるが、支障はあるか?

e-Taxで適格請求書発行事業者の登録申請をした場合には、登録通知もe-Taxにて実施されます。この登録通知のデータはe-Taxで閲覧できるわけですが、通知データの保存期間は約5年間(1900日)とされており、これ以後は削除されると案内されています。

この点で実務における支障があるのか、気になったので個人的な考えをメモしておきます。

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e-Taxにおける通知データの保存期間は約5年

国税庁ホームページの「登録申請手続のe-Taxに関するよくある質問」によると、e-Taxにおける「適格請求書発行事業者の登録通知書」の電子データについて、その保存期間は1900日(約5年)と案内されています。

Q10.登録通知データはいつまで確認ができるのか。
A10.登録通知データは「メッセージボックス」の「通知書等」に1,900日(約5年間)保存されます。なお、1,900日(約5年間)経過後は、既読・未読に関わらず削除されますのでご注意ください。

紙の登録通知書であれば、自分が破棄しない限りその保存期間は無限ですが、これに比べてe-Taxだと、電子データの保存期限が設けられているのが気になります。

過去を振り返ると、インボイスの登録は令和3年10月から始まったわけですが、それが約5年後から見られなくなるとうことは、早く申請したケースでは、令和8年11月頃から通知データが見られなくなる可能性もありそうです。

適格請求書発行事業者の登録については、その効果は恒久的に生じるものですが、通知書が確認できなくなってしまった場合に、実務における支障はあるのでしょうか。

登録通知書は「課税事業者選択」である

個人的に怖いと感じていることは、インボイスの登録は、課税事業者選択を兼ねているということです。

令和11年9月30日までの間における免税事業者のインボイス登録については、経過措置により、課税事業者選択届出書を同時に提出する必要はありません。(インボイスQA問7

過去において、これほどまで大規模な事業者数で「課税事業者選択」を実施したケースは当然になかったと思われます。課税事業者選択だけでなく、インボイス登録も混じっての対応になるため、要注意といえます。

もし課税事業者選択届出書を提出したのであれば、電子データで送信したのと同時に、その控えをPDF保管、または印刷するなどで保存しているはずです。e-Taxのメッセージボックスは、5年間で削除されてしまうため、履歴を自分でもダウンロードして保存しておく必要があるためです。

これが、登録通知書ではどうでしょうか。その登録通知書は、課税事業者選択と同等の効果をもちますが、この点で履歴の保存の必要性が認識されているのか、微妙に怪しい印象もあります。

法人は検索サイトから確認できるが、個人は……?

過去にインボイスの登録をしたらしいが、その登録通知書は見当たらない、という個人事業主がいた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

個人事業主がインボイス登録をしているかを確認できる資料は、「適格請求書発行事業者の登録通知書」になるわけですが、その通知書の電子データが5年後にe-Taxで削除されてしまうと、確認がやや手間になるという不安があります。

手軽な確認方法で思いつくのは「番号検索サイトからの逆引き」ですが、このサイトでは番号からの検索しかできません。

インボイスの登録番号は、法人では法人番号と一致するのでよいですが、個人は個人番号(マイナンバー)とは異なる新規の番号が割り当てられています。

つまり、個人について検索サイトから逆引きで探すには、そのインボイス登録番号を知っていることが条件です。過去に発行した請求書や領収書に記載した登録番号から確認することは可能でしょう。

原本データか、それに近いデータか

5年後に電子通知データの原本が見られなくなってしまうのであれば、あらかじめそのデータをダウンロードしておく対応が考えられます。

通知について、「確認」ボタンを押すと表示されるのは、「視覚上確認できるように表示されたXMLの内容」であって、その内容表示は原本ではありません。

原本は「ダウンロード」ボタンを押すとダウンロードできるXMLファイルです。

個人的な推測ですが、このXMLデータをダウンロードしていることはほとんどないものと思われます。確認用として、「確認」ボタンを押して表示された通知書を印刷、またはPDFで保管しているものと思われます。

本来的に保存されるべきXMLデータの原本については、1900日経過後に削除されてしまうわけですが、この原本データが登録事業者において保存されているのかは、怪しい印象です。実務における弊害は生じないでしょうが、それで本当にいいのかと問われると、微妙な感じもします。

登録から5年経過後に登録通知書を確認するのであれば、ほとんどのケースでは、原本ではないPDFの控え(原本に近いデータ)で確認することになるのでしょう。

申告のお知らせ、マイページから確認できる情報は

届出書や通知書の控えがない場合でも、マイページで確認できる機能がe-Taxに設けられています。

しかし、現時点のマイページでは、適格請求書発行事業者の登録があるかについて、その表示をする機能は設けられていません。なお、課税事業者選択届出書の欄も、適格請求書発行事業者の登録をしたことに関する記載はなく、「-」(ハイフン)だけが表示されています。

このほか、申告の必要がある場合には、税務署から「確定申告について」という事前のお知らせがe-Taxにて通知されます。

法人の場合、適格請求書発行事業者の登録をしている場合は、「課税売上高(年換算後)」の欄に「適格請求書発行事業者」という表示がされるように変更されました。(参考:e-Tax「(法人の皆様へ)メッセージボックスに配信する「消費税及び地方消費税の確定申告について」の表示内容に関して」

これに比べて個人の「確定申告等についてのお知らせ」では、法人のような「課税売上高(年換算後)」の表示がありませんので、適格請求書発行事業者の登録があるかについて、お知らせから判断することはできません。

まとめ

インボイス登録の電子通知データは、e-Taxでは5年後に削除されてしまいます。これはメッセージボックスにおける通常のデータと同じ扱いですが、この点で問題はないのか、微妙に気になったので考えを整理しました。

とくに気になったのは、個人事業主の扱いです。検索サイトでの番号からの逆引きができないため、登録の確認は微妙に難しいです。通常の事業活動をしていれば、番号はこれまでに記載した請求書等の書類から確認できるでしょうが、事業活動が停滞していた場合はどうでしょうか。

「過去における課税事業者選択を失念したケース」という消費税のミス事例が、そのまま降りかかってくる恐れがありそうです。

個人的な意見として、令和11年9月30日までの適格請求書発行事業者の登録通知データについては、その影響を考慮してe-Taxでは保存期間を5年よりも長く、できれば恒久的に残してほしいものですが、難しいのでしょうか。

もしくは、マイページで適格請求書発行事業者の登録の有無と、その登録番号について表示される機能があればいいのに、と思うところです。

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