e-Taxの法人マイページで(現時点で)消費税の届出情報が見られない理由は

e-Taxで利用できる「マイページ」について、2023年9月19日から法人でも利用できるようになりました。

しかし、個人では確認できた「課税事業者選択届」や「簡易課税制度選択届」などの肝心な情報が、法人ではなぜか確認できません。その理由を勝手に推測してみます。

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マイページとは

マイページは、納税者が過去に行った届出や納税の情報などを参照できるe-Taxのサービスです。

2023年1月4日に個人でサービス提供が開始されたあと、9月19日からは法人でも利用ができるようになりました。(参考:e-Tax「マイページ(法人)のご利用が可能になりました。」2023年9月19日)

しかし気になるのが、法人ではなぜか、消費税の「課税事業者選択」「簡易課税制度選択」「課税期間特例選択」の届出状況が確認できないという点です。

個人のマイページでは提供されている情報なのに、法人のマイページではなぜか情報が提供されていないという、よくわからない状態となっています。

e-Taxホームページのマイページの案内を見ると、個人は「消費税に関する届出書の提出状況などが確認できます。」と書かれていますが、法人は「消費税に関する各種情報を確認できます。」と書かれており、微妙に違いがあります。

なぜ法人では「簡易課税」や「課税事業者選択」の状況が確認できないのか、という疑問が当然に浮かぶことでしょう。

国税庁もその反応は事前に考慮していたでしょうが、その理由は明らかにされていません。いちおう外野としては、どうなっているのかの推測をしてみます。

統計では

まず、令和3年度の統計として、個人の消費税の申告数は1,063,741件で、このうち簡易課税の申告が632,700件です。割合としては59.4%です。

これに比べて法人では、申告数が1,857,869件のうち、簡易課税の申告は497,174件です。割合としては26.7%です。

こうしてみると、簡易課税の割合が法人では少ないことが読み取れます。だから簡易課税の情報はなくていい、という意味ではありませんが、個人と比較して情報の影響度は低いといえます。

統計では、課税事業者選択届出書については年度ごとの提出件数があるのみです。課税期間特例選択に関する統計は公表されていません。

消費税の申告件数としては、法人は個人の2倍程度あるとしても、数が違いすぎるから把握できない、ということはなさそうです。

そもそも、申告前には「申告のお知らせ」を送付しており、そこでは簡易課税や課税事業者選択の届出についても情報が記載されています。

これは個人の確定申告でも同様(参考)ですので、個人と法人に違いはなさそうです。

免税事業者では「ハイフン」の表示?

少し気になったのが、個人のマイページで免税事業者の場合では、過去に提出済みの届出書であったとしても、その情報は「-(ハイフン)」で表示されるという話です。

これは「税務通信」3757号のインボイスに関する対談企画で、石井幸子先生が言及されていたことです。この点について金井恵美子先生は「提出がないというメッセージだと勘違いしそう」とも述べられていました。

ブログ筆者では、同じ状況の方を担当していないので自分で確認できていない情報ではありますが、これが関係している可能性があるかも……とブログ筆者は思いました。

考えてみると、「申告のお知らせ」も、個人の免税事業者であれば所得税の情報だけで消費税の情報の記載はなく、法人の免税事業者でも消費税の「お知らせ」が届かないので、過去の届出書の提出状況は参照できません。

この点を考えると、免税事業者への対応を検討するために、消費税の届出書の表示は現状で保留となっているのではないか…… と勝手に推測しています。

このほか、免税事業者のインボイス登録で課税事業者選択が届出書の提出なしで行われる影響なども予想されます。

表示情報は充実の予定

国税庁が2023年6月に公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像 2023-」(P.15)によると、

◆ 令和5年9月から法人の方向けにもe-Taxのマイページを提供するとともに、表示する情報や税務代理人への利用の拡大など機能の充実を目指します。

と書かれているので、いずれは届出書の提出状況についても確認できるようになるように思われます。

日税連の要望(2023年6月)では「土地の無償返還」「買換え」「相続時精算課税」なども追加するように求めており、要注目です。

まとめ

法人もe-Taxのマイページが利用できるようになったものの、消費税の届出情報については記載がなく、戸惑いの声もあるようです。

その理由は公表されていないのであくまで推測になりますが、事前の予定とは異なる対応が必要になったために、保留となっているようにも思われます。

e-Taxの利用者識別番号とマイページがリンクしていることを考えると、利用者識別番号の重要性はますます高まったものといえます。

過去には、会計事務所を変更した場合に、以前の会計事務所が利用者識別番号を教えてくれない(もしくは聞きたくない)ので、やむなく再取得するという乱暴な処理も見られましたが、番号の取り直しによる情報の断絶が気になるところです。

税理士変更による引継ぎ後は、情報を素早く把握したいニーズがあるでしょうから、利用者識別番号も取り直しをせずに、引き継ぐことが当然になっていくことでしょう。

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