国税に関する情報公開請求をe-Taxのイメージデータで送信して実感したこと

税務に関する情報公開請求をした経験のある人はそれなりにいるでしょうが、これをe-Taxでやるとどうなるのか、という話です。

手続き的な感想は世間で語られることが少ないので、このブログで書いてみます。雑談形式なので、肩の力を抜いてお読みください。

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国税不服審判所にe-Taxで情報公開請求をしたら……

前回の記事で、ある非公開裁決についてもう少し詳しく知りたかったことから、国税不服審判所に情報公開請求をして判明した内容を紹介しました。

この情報公開請求はすべてe-Taxで実施しましたので、その点で感じたことを書いてみます。

情報公開請求はどのようにするか

前提として、国税に関する情報公開請求については、2段階の手続きがあります。詳しい手続きは国税庁「開示請求の手続」に整理されていますが、これをわかりやすく説明すると、手順としては、

① 「行政文書開示請求書」を提出する →国税側で開示決定通知書を受領、開示するか判断

② 開示決定の通知を受ける →「行政文書の開示の実施方法等申出書」を提出する →開示が実施される

という2段階の流れがあります。開示を受けるまでは、開示請求書と申出書を計2回、提出します。

国税不服審判所の非公開裁決についての「開示請求書」の書き方は、柳谷憲司先生のブログ「非公開裁決はどのように入手するのか?」がわかりやすいです。

e-Taxで請求するとどうなるか

本題はここからです。

e-Taxソフト(WEB版)がイメージデータの送信に対応したことで、使いやすくなったことを以前の記事で述べました。

今年(2023年)4月に書いた記事「備忘:関与先名簿と従業員名簿をe-Taxソフトで送信する方法」の...

情報公開請求については書面で行うことが一般的なようですが、イメージデータの送信は、「行政文書開示請求書」や「行政文書の開示の実施方法等申出書」でも対応しています。汎用手続IDは「HSO0455」「HSO0460」です。

引用:国税庁e-Taxホームページ「イメージデータで送信可能な手続検索」

今回、イメージデータの送信によって、国税不服審判所に非公開裁決の裁決書を請求してみました。

「行政文書開示請求書」の送信

注意点として、「行政文書開示請求書」をイメージデータで送信するときは、書面で提出する場合に作成する様式とは別のものが用意されています。

リンクをご参照いただくとわかるとおり、書面郵送用と、オンライン申請用では、様式が異なっています。

これらの違いとして、書面郵送では収入印紙を貼って郵送しますが、オンライン申請の場合は、手数料をあとで電子納付します。

下の画像のように、オンライン申請用の様式では、収入印紙の貼り付けは当然ながら不要です。

e-Taxで「行政文書開示請求書」をイメージ送信すると、受信側である行政機関が内容を確認します。そして、手数料の納付に関する受信通知がe-Taxのメッセージボックスに届きます。

手数料は200円なので、インターネットバンキングで電子納付します。クレジットカード納付やQRコード納付には非対応のようでした。

書面郵送の場合の手数料は300円なので、オンライン申請のほうが少しお得です。

ただし、このあとで開示が実施されるときに負担する開示実施手数料と、開示請求の手数料は相殺されますので、最終的な負担感に違いはほとんどありません。

e-Taxによる開示請求のメリットは、国税庁のパンフレットでも整理されています。

引用:国税庁「e‐Taxを利⽤して⾏政⽂書の開⽰請求保有個人情報の開⽰請求等ができます︕」

「行政文書の開示の実施方法等申出書」の送信

請求先の行政機関から開示決定があると、「行政文書開示決定通知書」という書面が郵送されてきます。e-Taxで情報公開請求をした場合でも、開示決定通知書は書面で郵送されてきます。e-Taxによる電子通知はありません。

通知書といっしょに、請求する文書が記載された「行政文書の開示の実施方法等申出書」も同封されています。この申出書を郵送で返送して、返送用の切手も同封する、というのが一般的な実務のようです。

しかし、筆者はあえて「行政文書の開示の実施方法等申出書」をオンライン申請用の様式に内容を転記して、e-Taxでイメージデータとして送信してみました。

イメージデータで送信しても、結局のところ、開示請求に関する文書について郵送を希望する場合は、切手を相手先に送る必要があります。切手代の電子納付はしくみとして用意されていないためです。

つまり、手間としては、どのみち切手を郵送で送る必要があるため、イメージデータで送信するメリットが感じられません。

なお、開示実施手数料が、開示請求で納付済みの手数料(200円)を上回る場合は、開示実施手数料については電子納付ができますので、収入印紙を買わなくてよいというメリットはあるでしょう。

今回、高松国税不服審判所の担当官に電話で聞いたところ、この「行政文書の開示の実施方法等申出書」をイメージデータで高松の審判所に送信したのは、筆者が初めてのケースとのことでした。

実務的にあまり意味がないので、e-Taxで送信されないのも当然だよな……と思いました。

なお、開示される文書については、(1)直接の閲覧、(2)複写したものを交付、(3)スキャンしたPDFをCD-Rで交付 の3点が選べます。

PDFをe-Taxで交付してくれれば、切手代の負担もなくてよいように思われますが、このようなしくみは用意されていません。

全体を通じての感想

全体を通じての感想ですが、最初の①「行政文書開示請求書」の提出 については、e-Taxによるイメージデータの送信の場合だと、収入印紙の貼付が不要で郵送の手間もなく、電子納付に慣れていれば利便性が高いように感じました。

心理的な感覚かもしれませんが、書面を作成して郵送するよりも、イメージデータの送信のほうが、請求のしやすさとしてのハードルが低く感じました。

しかし、その後に開示が決定されたあとは、手続きに関する書面が郵送で届き、その返送も書面が前提とされているように感じます。e-Taxによるイメージデータの送信は実務上可能としても、使い勝手は悪く感じました。

税務署などから書面の返送を受ける場合には、請求側が切手を送付しなければならないことがあります。この送料の負担としては、結局のところ請求側が「現物の切手」を相手先に送る必要がありますが、これは情報公開請求でも同じで、オンライン請求のメリットを台無しにしています。

開示決定された文書の交付も、スキャンされたPDFを「CD-Rで交付」という手続きは選べますが、e-Taxのメッセージボックスにアップロードしてもらう、という方法は選べません。

「申告書等情報取得サービス」のような方法も創設されていますので、将来的に対応するとよいように思われますが、PDFのデータ容量が大きい場合の対応をどうするかなどの問題もありそうです。結局は利便性とコストとの見合いになるのでしょう。

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