税務にかかわる者にとって重要な電子申告システム「e-Tax」と「eLTAX」。その電子申告で利用できる文字の種類について確認します。
説明のポイント
- e-TaxとeLTAXで利用できる文字の確認と比較
- e-TaxとeLTAXの対応範囲は一致していない(eLTAXの対応範囲がせまい)
e-Tax・eLTAXで使用できる文字には制限がある
ふだん意識することは少ないでしょうが、e-Tax(国税の電子申告システム)やeLTAX(地方税の電子申告システム)には、利用できる文字に制限があります。
特殊な文字を使う可能性があるのは、氏名や住所などでしょう。この場合、源泉徴収票や支払調書において記入した文字は、e-TaxやeLTAXで認識してもらえる文字データにする必要があります。
つまり、送信元である事業者・税理士側で作成したデータに使用不可の文字が含まれていると、受信側のe-Tax・eLTAX側ではエラーとなってしまう問題があるわけです。
そこで、ふだん意識することが少ない、e-TaxやeLTAXで使用できる文字コードの範囲を、この記事で確認してみましょう。
e-Taxで使用できる文字・できない文字
e-Taxで使用できる文字の範囲は、国税庁のe-Taxホームページで公表されています。(参考)
- 「基本ラテン(JIS X 0201と互換性のあるもの。ただし、文字タブ(0009)、改行(000A)及び復帰(000D)以外の制御文字(0000~001F、007F)を除く)」
- 「平仮名」
- 「片仮名」
- 「CJK統合漢字」
- 「CJK互換漢字」
- 「CJK用の記号及び分音記号」
- 「半角形・全角形(ただし、半角カナ(FF66~FF9F)を除く)」
- 「ラテン-1補助(ただし、制御文字(0080~009F)を除く)」
- 「矢印」
- 「一般句読点」
- 「罫線素片」
- 「幾何学模様」
- 「基本ギリシャ」
- 「キリール」
- 「数字記号」
- 「数字の形」
- 「囲み英数字」
- 「囲みCJK文字/月」
- 「CJK互換文字」
これだけ見てもいまいちピンと来ないでしょうけれど、結論からいえば、通常業務で利用するであろう日本語の文字は、当然ですが、そのほとんどが網羅されています。
具体的な「利用可能文字一覧」も公開されています。
その一覧から使えない文字を見てみると、機種依存文字や中国語の漢字(簡体字)はダメなようです。
ほかにもきわどそうなラインを見てみましょう。
1文字の機種依存文字でよく使いそうなものでは、「㈱」と「㈲」が対応しています。
◯囲み数字は「①」から「⑳」まで対応しています。単位数字については、「㎎、㎏、㎜、㎝、㎞、㎡、㏄」が対応しています。支払調書の単位で使う可能性があるでしょう。
ローマ数字は「Ⅰ」から「Ⅹ」まで対応しています。ローマ数字は、マンションやアパート名で入力する場合が多いでしょう。
きわどい漢字はどうか?
きわどい難しい漢字はどうなっているのか? という点も気になるところです。
この点の理解は、光ディスク等に法定調書のCSVデータを記録し、提出する場合の文字規格と、e-Taxの対応範囲を対比させると理解がしやすいでしょう。
まず「光ディスク等の文字規格」で使える文字コードは、「シフトJIS(JIS第1水準及び第2水準)」とされています。
これはつまり、第2水準を上回る難しい漢字(JIS第3水準、JIS第4水準、これ以外にUnicodeのみにある漢字)は、光ディスク等では使えないことを意味します。
たとえば、次の点が光ディスク等の提出データにおいて非対応となります。この場合、文字の置き換えが必要です。
- 「麴」
- 「﨑」
- 「髙」
- 「𠮷」(土のように下のほうが長い)
- 「德」
- 「彅」
- 「圡」「𡈽」
- 「濵」(はま)
- 「瀨」
- 「柗」(まつ)
- 「⻆」
- 「圳」(中国広東省・深セン市のセン)
そして、e-Taxでこれらの文字の対応がどうなっているのか? という点を調べてみると、
- 麴 →非対応
- 﨑 →対応
- 髙 →対応
- 𠮷 →非対応
- 德 →対応
- 彅 →対応
- 圡 →非対応
- 𡈽 →非対応
- 濵 →対応
- 瀨 →対応
- 柗 →非対応
- ⻆ →非対応
- 圳 →非対応
という結果でした。e-Taxでは、よくある漢字を中心におおむね問題なさそう、という印象です。
ちなみに、比較的見かける文字で難しそうな印象のある「邊」「邉」「齋」「嵜」「濱」「顯(ケン)」は、JIS第2水準でした。光ディスク・e-Taxの両方で対応しています。
ちなみにe-Taxのヘルプを見ると、光ディスク等の規格に対応したデータはe-Taxでも提出できるとされています。(参考:国税庁「現在、書面に代えて磁気媒体等で法定調書の提出を行っていますが、e-Taxではそのデータを直接送信できますか。」)
この点を踏まえると、光ディスク等の対応範囲に比べてe-Taxのほうが対応範囲が広いといえるでしょう。
e-Taxの対応範囲は、JIS第1水準・第2水準を基本として、使用頻度の高い文字をカバーしているようです。
eLTAXで使用できる文字・できない文字
eLTAXで利用できる文字も確認しておきましょう。eLTAXホームページにおいても、利用できる文字の情報が公開されています。
- 使用可能な全角文字は、文字セットJIS X 0208-1990の範囲の文字
- 漢字はJIS第1水準・第2水準で、外字は含まない
つまり、eLTAXで利用できる漢字の範囲は、e-Taxよりもせまいことになります。
eLTAXの漢字の対応範囲が「JIS第1水準・第2水準」ということであれば、これは国税庁の光ディスク規格と同程度ということです。
先ほどの漢字と照らし合わせてみると、以下の漢字はすべてeLTAX非対応となります。
このほか、ローマ数字に対応していませんので、マンション名に「Ⅰ」「Ⅱ」が含まれていると、eLTAXではエラーとなります。
税理士会は改善を要望している
日本税理士会連合会は、eLTAXの対応文字数が少ないことについて、改善要望を毎年出しています。(参考)
具体的には、対応する文字コードを拡充してe-Taxと同程度にすることや、メールアドレスに使用できる文字(例:+など)に対応することを要望しています。しかし、eLTAX側で改善された気配はありません。
源泉徴収票と給与支払報告書の提出をeLTAXに一本化させる対応(電子的提出の一元化)が平成29年から実施されていることを考えれば、eLTAXの対応文字はe-Taxレベルに引き上げることが望ましいといえるでしょう。
追記(2018年12月)
総務省「行政手続コスト削減に向けた基本計画の策定について(地方税)」において、eLTAXの文字コード対応の拡大が告知されています。
これによると、2019年9月実施予定として「e-Taxにおける利用可能文字に対応する」とされていることに気づきました。
すでにeLTAXにおいて改善の対応が計画されているとのことで、ここで記載した問題点は解消されることになります。
まとめ
e-TaxとeLTAXで利用できる文字を比較し、その現状を整理しました。
e-Taxでは、よくある難しい漢字やローマ数字にも対応しており、業務において支障となる印象はほとんどありませんでした。非常にめずらしい漢字だけが未対応、というところでしょう。
その一方でeLTAXにおいては、利用できる文字がe-Taxと一致しておらず、ローマ数字にも対応していないという問題があります。