国税不服審判所ホームページで見ることができる裁決事例集に、e-Taxに関する裁決事例が掲載されました(令和6年10月~12月分(裁決事例集No.137))。
この裁決事例は、所得税の確定申告書について無申告になったことを「e-Taxが悪い」と主張しても、正当な理由があったとは認められなかったものです。
これまでにも似たようなe-Taxがらみの裁決は存在しており、これらはすべて非公表でしたが、今回は公表裁決とされました。
令6.10.15 東裁(所)令6-48
国税不服審判所ホームページに掲載されている要旨を転載します。
《ポイント》
本事例は、請求人がe-Taxにより確定申告データを法定申告期限内に送信しておらず期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないとしたものである。《要旨》
請求人は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)により確定申告書及び財産債務調書等(本件調書)のデータを送信するつもりであったが、結果として本件調書のデータしか送信できておらず、このような誤操作が生じてしまうe-Taxにはシステム上の問題があるといわざるを得ないこと、上記送信後に完了画面が表示されたことにより、請求人が確定申告書のデータも正常に送信できたと認識したことはやむを得ないことから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの)第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の期限内申告書の提出がなかったのは、請求人がe-Taxの操作を誤って本件調書のデータの送信しか行っていなかったにもかかわらず、本件調書のデータの即時通知を見て、確定申告書のデータも送信されたと誤って認識したという請求人自身の主観的な事情によるものにほかならない。したがって、期限内申告書の提出がなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったとはいえず、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を課することが不当又は酷になる場合に当たるとはいえないから正当な理由があると認められる場合には該当しない。《参照条文等》
国税通則法第66条第1項
これまでも同様の裁決はあったが……
e-Taxウオッチャー(?)の視点でいうと、これまでにも似たような裁決は存在していたものの、すべて非公表とされていました。ところが今回は、公表裁決になった点が気になるところです。
国税不服審判所の裁決要旨検索で「e-Tax」とキーワード検索すると、e-Taxにまつわる無申告加算税の事例が見つかります。一部を抜粋します。
○ 請求人は、e-Taxのシステム自体が複雑であり、年一度の処理では申告データが送信されていないにもかかわらず、送信したものと勘違いするようなミスが起こることは十分予測されることから、これを単なる過失として納税者の責めに帰するべきではない旨主張する。しかしながら・・・(平22. 8.25 大裁(所)平22-12)
○ 請求人は、e-Taxによる平成25年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告データの送信の操作を誤り、その結果、期限後申告することとなったが、①平成16年分ないし平成24年分の所得税について、e-Taxを利用して、いずれも法定申告期限内に確定申告をしたこと、②法定申告期限内に、申告書等送信票兼送付書及び確定申告書の添付書類を送付したこと、③原処分庁からの連絡後速やかに、所得税等に係る税額を納付したことなどの事情からすると、法定申告期限内に確定申告をする意思があったことは明らかであり、このような場合に無申告加算税を課すことは酷であって、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。しかしながら・・・(平27. 4. 3 東裁(所)平26-90)
請求人(納税者)の主張はいずれも棄却されています。e-Taxにまつわる操作ミスについて何かを主張しても、納税者の言い分が認められた事例は見当たりません。
e-Tax利用率の上昇も影響?
国税庁のスマホ申告の奨励策が功を奏したこともあり、e-Taxの利用率は上昇しています。令和6年分の確定申告に関する国税庁の報道資料によると、「申告人員の約 4 人に3人は e-Tax で申告」とされています。
これはe-Taxの利用率が74%に到達したもので、国税庁の頑張りを評価すべきでしょう。
しかし、e-Taxの利用者が増えれば、e-Taxへの誤解や操作ミスについて「e-Taxが悪い!」としてクレームをつける件数も、利用者の割合に応じて増加すると予想されます。
あくまで外野の予想ですが、「e-Taxで申告することが当たり前」になった時代だからこそ、ついにe-Taxに関する裁決事例が公表されたとも考えられそうです。

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