前回の記事で、社保の現物給与のうち、住宅の貸与(社宅)の金額の計算方法が変更になる点を書きました。
よくよく考えてみると、所得税(通達)と社会保険とでは、現物給与の考え方が異なっているのは興味深いです。個人的な興味として、双方を比較してみます。
比較
1.勤務地
社会保険では、本人の勤務地を基準に決められた金額を使用します。もし勤務地が「埼玉県」であれば「埼玉県」の金額を用いますので、もし社宅が「東京都」にあっても社宅の場所は関係しません。
勤務地と社宅が県境をまたぐとズレを感じますが、これは最低賃金のようなしくみでも同じだと思われます。
一方、所得税(通達)では、勤務地のような考え方はありません。
2.面積
社会保険では、2026年9月までは居住している部分のスペースを「畳」の単位でカウントし、これに県ごとの金額を乗じていましたが、10月以降は「総面積」でカウントします。
所得税(通達)でも、建物の「総床面積」で計算する部分がありますので、この点は共通しています。
3.固定資産税の課税標準額
「固定資産税の課税標準額」は、所得税(通達)で使用する金額です。固定資産税は所得税ではない他の税目ですが、どの土地建物にも価格がすでについているため、利便性が高いことも理由と思われます。
他方、社会保険では「固定資産税の課税標準額」は使用しません。
4.借りている家賃の金額
その社宅を借りている場合に支払っている家賃ですが、所得税(通達)においては、役員の社宅で使用することがあります。このほか、実務上の簡便な計算方法として、支払家賃の50%を従業員から徴収しているケースもあると思われます。
社会保険では、支払家賃の金額は関係しません。
両者を比較してみると
社会保険では、建物の構造や、建物がどこに所在しているか、という要素は考慮していません。
このため、会社の勤務地と、物件の総面積という要素しか使用しないのでシンプルな計算ですが、いざ計算をしてみると不合理な面も見えてきます。
例えば「古くて広めの木造」を借り上げの社宅にすると、床面積あたりの支払家賃は比較的安くなります。しかし、社会保険の現物給与の金額としては、高めになる可能性があります。
個人的な見方ですが、所得税(通達)は、使用されている金額が比較的優しいように感じます。福利厚生的な側面を考慮しているのでしょうか。土地や建物の固定資産税の課税標準額を使用していることも、物件ごとの価値が反映されており、公平性が高いように感じます。
社会保険では、古い木造でも新築の鉄筋コンクリートでも、とにかく面積だけなので、計算はとにかく楽ですが、雑な計算に感じます。
所得税(通達)では、固定資産税課税標準額を調べる必要があるため、事務的な煩雑さを感じる面も否めません。共同住宅の一室を借りている場合では、調べるのに手間がかかることも多いです。それでも頑張って調べてみると、支払家賃と比較して、所得税(通達)の賃貸料相当額はかなり低めに算出されることも多いです。このために「社宅で節税」というフレーズは、「節税本」の定番の内容になっています(その趣旨に賛同しているわけではありません)。
あまり注目されるテーマではないのですが、ちょっと興味深いと思ったので、メモとして書いてきました。個人的な雑感なので、なにか根拠資料を拾ったわけではありません。この点にご注意ください。
電子申告や電子納税など、他の税理士さんがあまり採り上げそうにない、税務の話題をブログに書いています。オンライン対応に特化した税理士です。→事務所HP