前回記事で、マイホームの譲渡に関して譲渡損失が生じた場合に、ミスが生じやすいことを日税連保険サービスの事故事例集を参考に確認しました。
同じ事故事例集から、今回は譲渡益が生じた場合のミス事例はどのようなものがあるかを整理してみます。
事故事例集より
日税連保険サービスの事故事例集(リンク先の下の方にある)から、概要を抜粋しました。なお、2018年、2019年版についてはホームページでは掲載を終了しています。
2018年版主契約8 居住用財産の特別控除と住宅借入金等特別控除の有利不利の選択ミス。居住用財産の特別控除を選択したが、実際は住宅借入金等特別控除のほうが有利だった
2019年版主契約6 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の
課税の特例の適用を失念。本来適用できない別の特例を選択して申告したため、適用を失念した
2021年版主契約11 特定期間(平成21年・22年)に取得した土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の適用を失念した
2023年版主契約6 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の
課税の特例の適用を失念。預かり資料に特例に関するものが含まれていたが、適用を失念した
2023年版主契約7 収用交換等の代替資産を所得税申告書の提出後に取得したが、更正の請求の期限(代替資産の取得日から4月を経過する日)を誤解して還付もれが生じた
2024年版主契約8 相続税申告書の提出後、取得費加算の特例に関する所得税申告書の更正の請求の期限(相続税申告書の提出日の翌日から2月を経過する日)を誤解して還付もれが生じた
このほか、2020年度版と2023年度版の冒頭における主な事故事例の列挙の部分を見ると、「空き家特例と取得費加算の特例選択の誤り」も掲載されています。
内容を見てみると……
2023年、2024年版で連続掲載になっているのは、更正の請求期限を誤認した事例です。特殊な更正の請求は、その期限を必ず再確認するべきでしょう。
優良住宅地の造成等も2件掲載されていますが、2019年は特例適用を誤って選択、2023年は資料の見落としが原因です。とくに2023年のケースが気になりますが、納税者とのコミュニケーション不足が原因のように思われます。
2021年版の特定期間(平成21年・22年)は定番の「地雷」です。今後不景気が到来しても、このような期限のない景気対策の税制は二度と作ってほしくないです。2018年版の特別控除と住宅ローン控除の選択もややこしく、税理士泣かせです。
個別事例では紹介されていなかったものの、「空き家特例と取得費加算の特例選択の誤り」がここ5年の事故列挙のなかで2回掲載されているのも気になります。
短期間で対応する難しさ
事故事例を読んでも、これは私たちが「安全地帯」からよその結果を眺めているにすぎないものです。当事者にはその場におかれた、それなりの状況があったはずです。
とくに譲渡所得の申告は、確定申告の期限が近づいてから相談対応にあたる場合もあり、それにも関わらず相談内容は難しいこともあります。短期間で判断を迫られると、慎重さが二の次になってしまう恐れもあります。
対策を思いつくとすれば、顧客との連絡を密にして、できれば年内のうちに検討を開始できれば理想でしょう。空き家特例や、低未利用土地の特例など、事前の役所の手続きが必要な特例もあり、スケジュール管理はますますシビアになっています。
前回記事でも書きましたが、チェックシートは申告直前で活用するのではなく、相談時点から活用することも必要でしょう。
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