請求日=売上計上日とは限らない 請求書ソフトとの連携に注意

請求書

前回の記事で、簿記のルールとして、入金と売上のタイミングは同じとは限らないことを説明しました。この話に補足して、請求書の発行と売上との関係を説明します。

説明のポイント

  • 請求書の発行日は、売上の計上日とは関係ない
  • クラウド請求書ソフトによって、会計ソフトに連携される仕訳日が異なる
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売上計上日とは?

まず、簿記のルールを確認します。

売上の計上日は、「お金が入金された日」とは必ずしもいえない……という点を前回の記事で説明しました。

クラウド会計の提案するままに、通帳への入金を「売上」として処理している事例があるようです。しかし、こ...

とくに、クラウド会計ソフトの仕訳提案では、入金日を売上とする処理(これを「現金主義」といいます)が見られるため、簿記の知識に乏しいかた向けに注意を喚起したものです。

前回のおさらいになりますが、売上の計上日とは、物を販売したり、サービスの提供が完了した日を指します。よって、入金日、支払調書を受け取った日は、一切関係ありません。

請求書の管理で、現金主義を防げるか

簿記に不慣れな人には、「入金」という事実が理解しやすいため、よくわからないままに入金ベース(現金主義)で仕訳をしてしまうようです。

こうした現金ベースの処理による帳簿を防ぐ方法として、「請求書ソフトを利用すれば、現金主義の考え方を防げるかもしれない」という提案を、前回の記事で書きました。

請求書を発行した時点で、下記の仕訳が自動的に発生します。入金よりも先に「売掛金」を計上するので、入金時に現金主義の仕訳をすると不自然なことに気づくわけです。

① 請求書を発行

↓ 連携のクラウド会計で仕訳を自動提案

② [借方] (売掛金)324,000 / [貸方] (売上高)324,000

請求書の発行日は売上の計上日ではない

しつこいようですが、請求書の発行で注意したいのは、請求書の発行日と売上の計上日には、何の関係もないということです。

先ほども述べたとおり、売上の計上日とは、物を販売したり、サービスの提供が完了した日です。例えば12月に仕事が完了して、1月に請求書を送った場合でも、売上は12月になります。

もし、請求書の発行日を売上の日にできるならば、意図的に請求書の発行を遅らせることを考える人もいるでしょう。

売上を減らすことができれば、税金の納付も先送りにできてしまうからです。

請求書ソフトによる売上計上日の処理

請求書を開封する

当ブログではクラウド会計ソフトを中心に取り上げています。

これに関連して、クラウドで見積書や請求書を作成する「クラウド請求書ソフト」も、同様に人気があります。

クラウド請求書ソフトでは、ブラウザで作成した請求書を電子メールで送ることや、郵送の手続きもオンラインで済ますことができます。

クラウドなので、パッケージ型のようなインストールはもちろん不要です。データもすべてクラウド上に保管されます。

請求書ソフトの動作に注意

先ほど述べたとおり、請求書の発行日と売上の計上日に関連はありません。

では、請求書ソフトのデータを引き継いだクラウド会計ソフトは、何をもって、仕訳する日を決定しているのでしょうか?

実際に、主要なクラウド会計ソフトに連携する請求書ソフトを見ていきましょう。

(1)MFクラウド請求書

MFクラウド請求書は、マネーフォワードが提供する請求書作成ソフトです。「MFクラウド会計」を利用している場合は、連携しやすいでしょう。

MFクラウド請求書では、売上の計上日は「締め日」の単位で行われます。次の操作で締め日を確認できます。

まず、右上の歯車マークを押して、「帳票設定」を選択します。

MFクラウド請求書の設定

設定の項目を見ていくと「帳票詳細デフォルト設定」という場所に、「売上計上日」があります。

MFクラウド請求書の売上締め日

この締め日をもとに例を挙げてみます。例えば、2月15日に発行した請求書の扱いですが、

  • 締め日を「前月末日」に設定している場合
  • 2月15日に請求書を発行 →1月31日の売上としてMFクラウド会計に自動連携

というかたちになります。請求書の発行日と締め日の両方を基準に、売上が計上されるしくみです。

締め日の後に請求書を発行することがほどんどですから、感覚的には使いやすいでしょう。

なお、特別な事情があって請求が遅れた場合では、締め日との関連はないため、クラウド会計ソフトの仕訳上で売上計上日を設定し直す必要があります。

(2)freeeの請求書機能

freeeの請求書機能は、「会計freee」に標準で付属しています。freeeを活用している場合は、この請求書機能を使うといいでしょう。

freeeの請求書では、「請求日」と「売上計上日」の欄が別々になっています。請求日を入力すれば、自動的に「売上計上日」も同じ日で設定されますが、自分で変更することも可能です。

freeeの請求書の売上計上日

(3)Misoca

Misocaは、独立したクラウド請求書ソフトです。

月額利用料が無料プランでも、機能制限が少ないこともあり、フリーランスを中心に人気を博しています。実際に利用している方も多いでしょう。

Misocaは、MFクラウド会計、会計freee、弥生会計オンラインなど、主要なクラウド会計ソフトと連携しており、自動で仕訳を作成することができます。

Misocaは2016年に弥生の傘下に入ったため、弥生会計との連携が強化されると考えられます。

Misocaを、freeeやMFクラウドに連携させると、請求書の「請求日」を「売上計上日」として仕訳にします。

請求書の発行日は、正しい売上の計上日とは限らないので、自分で修正する必要があるでしょう。

下の画像は、Misocaの請求書の発行日

Misocaの請求書の日付

MFクラウドに連携した仕訳の日付は、請求書の発行日と同じになっている。

Misocaの請求書仕訳

まとめ

請求書の発行日と売上計上日の違いを確認しました。

ここまで見たとおり、請求書ソフトでは、請求書発行日を売上日とする動作が見られますが、これは「本来あるべき売上日」とは異なる可能性があります。

とくに12月と1月のような決算をまたぐ処理では要注意です。

また、その内容を踏まえて、クラウド会計ソフトと主要な請求書作成ソフトとの連携における動作の違いも確認しました。

請求書ソフトを過信せず、売上計上日は自分でも確認するようにしましょう。

ここに書いてあることは、「簿記のもっともむずかしい部分」といえるので、理解が難しい……と思われるのもやむをえないです。

悩んでいる場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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