100円未満のレシートが手元にあったとして、これを帳簿にいちいち入れるべきなのか? という、ある種の「禁断」の話を考えます。
説明のポイント
- きちんと登録すべきという視点と、時間の無駄という視点
- レシート1枚あたりの登録コストの視点
100円未満のレシートをどう扱ったらいいか?
100円未満という、少額な経費のレシートがある場合に、わざわざ手間をかけて帳簿に入力するべきでしょうか?
あまり正面切って取り上げられることもなさそうな話題ですが、かんたんに検討してみます。
「入れるべき」「入れなくてもいい」の2つの意見にわけて、それぞれの考え方を見てみましょう。
意見A 「少額もきちんと入れるべき」
まず、少額でもきちんと入れるべき、という考え方から述べてみましょう。
どんなに少額であっても、発生した経費に違いはないのですから、きちんともれなく帳簿につけるべきと考えます。
帳簿の集計は、すなわち事業の結果の集計です。よって、どんな経費ももれなく帳簿に載せることが、正しい帳簿を作るための道筋です。
また、仮にその経費の相手方の勘定科目が「普通預金」や「未払金」であれば、少額のレシートを入れないと、残高がズレてしまう可能性もあります。
それに、もし従業員が経費精算をしている場合において、「少額経費は時間の無駄だから経費精算なんかするな」と、強制できるでしょうか?
たとえ少額とはいえ、事業経費を従業員の自己負担として強制することは、なかなか難しいのではないでしょうか。
意見B 「少額なレシートは入れなくていい」
次に、少額のレシートは経費に入れなくてもいいのでは? という視点から考えてみます。
100円未満という少額な経費のレシートは、せいぜい10枚集まって、ようやく数百円という程度の話です。
そんなレシートをいちいち1枚ずつ入力するのは、明らかに時間の無駄でしょう。時間は有限であり、利益を生み出す源泉です。
それに、いくらがんばって少額のレシートを入力しようが、実際のところ帳簿の集計値にはたいして変化もないでしょうし、経費が微増しても税負担もそこまで変わらないでしょう。
むしろ、少額のレシートを頑張って入力して税金がちょっと減るぐらいならば、その入力時間を別のことに使った方が有意義ではないでしょうか?
レシートの入力コストの計測
上記のとおり、意見Aと意見Bの2通りの考え方を対比してみました。
次に、これらを検討するうえでの材料として、レシートの入力コストも考えます。
その一例として、クラウド会計のマネーフォワードは、関係会社を通じて入力代行サービス「STREAMED(ストリームド)」を提供しています。
このサービスの個人事業主向けプランでは、レシートの代行入力の料金は1件あたり20円~30円(税抜)とされています。
入力代行のオペレーターは、日本語トレーニングを受けたベトナムのスタッフであり、そのうえで日本人によるチェックがなされているとのことです。(参考:株式会社クラビスの資料より)
こうしてみると、どんなに安く見積もっても、1件あたりのレシートの入力には20円の負担がかかると計測されます。
また、入力代行サービスを利用せずに、経理や従業員自身がレシートを手入力しているのであれば、入力コストはさらに高まると考えて間違いないでしょう。
もし1時間あたりの給与を3,000円と仮定すれば、1分あたりの給与は50円です。そして、レシート1枚の登録には1分以上かかるかもしれません。
コスト面だけに注目するならば、100円未満のレシートを入力するために、さらに20円~50円のコストがかかることに意味を見いだせるのか? という問題は避けて通れないでしょう。
ここではレシートの入力だけに注目しています。
もしこれが経費精算であるならば、レシート等の台紙への貼り付け、申請書類の提出から経理によるチェック、最後の保管コスト(電子帳簿保存法を適用しているのであれば、タイムスタンプの費用)まで含めて、時間やコストを計測しなければならないでしょう。
まとめ
100円未満という少額のレシートについて、きちんと登録すべきという視点と、時間の無駄という視点から検討してみました。
また、レシート1枚あたりの登録コストの視点も含めて考えてみると、少額のレシートというものが微妙な存在であることもわかります。
考えかたは人それぞれですので、とくに結論らしきものは書きませんが、考える材料のひとつになれば幸いです。