この投稿では、来年以降に変わる税制を、「平成28年度税制改正大綱」をもとに簡単にまとめました。第2回目は、法人課税の改正内容です。主要なものを抜粋しました。(→税制改正大綱の全文はこちら)
法人税率の引き下げ
1.実効税率(外形標準課税適用法人の場合)
現行 | 改正案 | ||
26年度 | 34.62% | ||
27年度 | 32.11% | ||
28年度 | 29.97% | 早期引下げを実施して20%台へ | |
29年度 | 29.97% | ||
30年度 | 20%台目標 | 29.74% |
※「年度」とは、4月1日以降に開始される事業年度です。
2.法人税率
中小法人の軽減税率 (年800万円以下の所得) |
中小法人(年800万円超の所得) 中小法人以外の普通法人 |
|||
現行 | 改正案 | |||
26年度 | 15% | 25.5% | ||
27年度 | 15% | 23.9% | ||
28年度 | 15% | 23.9% | 23.4% | 法人税率の引き下げ |
29年度 | 19% | 23.4% | ||
30年度 | 19% | 23.2% |
建物附属設備・構築物の償却方法の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備と構築物については、償却方法が「定額法」に限定されます。「定率法」による償却はできません。(所得税についても同様です)
対象となる資産について、例えば構築物では駐車場のアスファルト敷き、建物附属設備では給排水設備やエレベーターなどが該当します。
定率法は資産取得後に多額の償却が可能になるのがメリットとされていました。償却額が増えれば税負担が減るためです。(その代わり、償却期間の後半は定額法よりも償却額が少ない。)
【参考】 どんな資産が「建物附属設備」「構築物」に該当するか?
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-gav)
ちょっと見づらいですが、下の方にある「別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」という一覧表から探してください。
欠損金の繰越控除制度等の見直し
欠損金の繰越控除 | 欠損金の繰越期間 | |||
事業年度開始日 | 改正前 | 改正案 | 改正前 | 改正案 |
H27/4/1~H28/3/31 | 所得金額×65% | 所得金額×65% | 9年 | 9年 |
H28/4/1~H29/3/31 | 所得金額×60% | |||
H29/4/1~H30/3/31 | 所得金額×50% | 所得金額×55% | 10年 | |
H30/4/1~H31/3/31 | 所得金額×50% | 10年 |
※欠損金の繰越控除の控除額の制限は、中小法人等には適用されません。欠損金がある限り、所得金額の100%を控除できます。
※欠損金の繰越期間について・・・・・・その事業年度に発生した欠損金について、繰越できる期間が延長される。
参考:No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|法人税|国税庁
地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
対象となる寄付金
- H32/3/31までに支出
- 地域再生法の認定地域再生計画に記載された「地方創生推進寄付活用事業(仮称)」に関連する寄付金
参考:地方創生応援税制 – 地方創生推進事務局
計算の流れ
- 地方公共団体に対する寄付金は、もともと、支出した全額が損金算入(実効税率約30%)
- 法人事業税の税額控除:10%
- 法人住民税の税額控除:20%
- 法人税の税額控除:法人住民税で20%に達しなかった分がある場合、法人税から税額控除
- 残額は法人の自己負担(支出額の約40%)
雇用促進税制の制度改正
これまでは日本中どの地域でも利用できた税額控除制度でした。
参考:No.5926 雇用促進税制(雇用者の数が増加した場合の税額控除)|法人税|国税庁
しかし、今回の改正案で
- 「地域雇用促進法の同意雇用開発促進地域内にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者の増加数」
という制限が設けられました。これにより、適用できる地域は相当に狭くなります。
関東地方では、茨城県の高萩・北茨城地域、常陸大宮地域、栃木県の矢板地域、大田原地域と南部の小山地域が対象です。
その他の改正事項は次の通りです。
- 適用期限が2年延長(H28/3/31→H30/3/31 までに開始する事業年度)
- 所得税も同様の扱い
- 「所得拡大促進税制」との重複適用を認めるように変更
【参考】同意雇用開発促進地域とは?
参考:地域雇用開発促進法に基づく地域の要件と支援措置について|厚生労働省
同意雇用開発促進地域一覧は、平成27年10月現在で28道府県100地域。画面上部の「(1) 雇用開発促進地域 (地域一覧)」のPDFを閲覧のこと。
少額減価償却資産(30万円)の取得価額の損金算入特例の制限
- 期限をH28/3/31→H30/3/31に延長(取得日で判定)
- 所得税も同様
- 適用除外基準が新設「従業員が1,000人超の法人は除外」
参考:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|法人税|国税庁
その他
- 生産性向上設備投資促進税制は、延長なくH28/3/31で終了
参考:No.5455 生産性向上設備投資促進税制(生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁