クラウド会計と明細の自動読込 技術と連携の分布について考える

青空と雲

クラウド会計と、銀行明細からの自動読み込み技術について、業者間の連携を考察します。会計ソフトに関心のある方向きの記事です。

説明のポイント

  • 銀行明細の読み込み技術は、自社開発と業務提携に分かれる
  • 自社開発はfreeeとMF、それ以外の業者は業務提携を選択している
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クラウド会計と銀行明細の読み込み

「クラウド会計」という名前は、会計に縁のある方には一般的になっているように思います。クラウド会計ソフトの代表的なメリットは次のようにいえます。

  • 会計データをオンラインで保管できて、共有が簡単
  • ソフトウェアのインストールが不要
  • 導入コストが安い

銀行明細の読み取り技術

クラウド会計ソフトのなかでも、freeeやMF(マネーフォワード)が有名になったおかげなのでしょう。クラウド会計ソフトであれば「銀行やクレジットカードの履歴から、自動的に明細が読み込める」という理解があるようです。

この理解は半分正解ですが、半分は誤りです。なぜなら、現状の会計ソフト業界では、「クラウド」を名乗りながらも、明細の読み込み技術を実装していないものがあるからです。

つまり「クラウド」なのは会計データの保管であって、明細の読み取り技術は別枠の話、ということです。

読み取り技術の仕組み

銀行取引をネット上でできるオンラインバンキングは、その取引明細をCSVデータとして出力することができます。

このCSVデータを会計で利用するためには、CSVデータをダウンロードしたのち、加工したうえで会計ソフトに取り込んでいました。(さらに古くは、通帳や出納帳を見ながら手作業で、1件ずつ入力していた)

CSVをオンラインバンキングから会計ソフトへ手作業で加工

クラウド会計の知名度があがったのは、CSVデータを全自動で会計ソフトに読み込める、という画期的な技術のおかげでしょう。世間では、この技術を会計分野でのフィンテックとも呼んでいるようです。

会計事務所が帳簿入力の代行業務をまるまる請け負うというサービスは、技術革新によって大きく変わりつつあります。いまは、ちょうどその境目に立っているという認識です。

自社開発と業務提携

この読み込み技術ですが、もう少しよく見てみると、会計ソフトによって、自社開発と外部との業務提携の2つに分かれる構図が鮮明になっています。

自社開発をするには難しいのか、多くの会計ソフト業者が外部との業務提携を選択しています。

1.業務提携

会計ソフト業者の多くは、読み込み技術をもつ外部業者との提携を選択しています(弥生、TKCなど)。また、クラウド会計ソフトを専門で開発している新興の業者も、読み込み技術は外部提携を選択しています(Crew会計など)。

読み込み技術をもつ業者は、「Moneytree(マネーツリー)」と「MoneyLook(マネールック)」が有名です。もともと家計簿アプリからはじまった銀行明細の読み取り技術を、会計に応用しています。

CSVをMoneytreeなど他社機能で会計ソフトへ読み込む

2.自社開発

読み込み技術を自社開発しているのは、freeeMFクラウド会計です。自社開発の強みが、サービス連携などで有利に働いている印象を強く受けます。

MFは資産管理のための読み込み技術から出発して、会計分野に進出してきました。

(※なお、会計業界大手のMJSは家計簿アプリ「マネトラ」をリリースしていますが、会計への応用は不明です)

CSVをオンラインバンキングから会計ソフトが直に読み込む

弥生のスマートコネクトは?

小規模事業者から根強い支持のある弥生会計は、どのように対応しているのでしょうか。

弥生の場合、銀行明細の読み取り技術は外部業者との提携を選択して、それ以外の技術は自社開発という選択をしています。弥生ではその技術を「YAYOI SMART CONNECT(弥生スマートコネクト)」と名付けてアピールしています。

連携のレベルは、MFやfreeeに対して見劣りしますが、要点は押さえてきているように思います。

まとめ

クラウド会計と銀行明細の読み取り技術について、外部からうかがえる構図をまとめました。大枠の認識としてご理解いただければと思います。

近年は、会計ソフトの発展がすさまじい勢いなので、事業者も税理士も情報収集はかかせません。

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