個人事業主のクラウド会計利用率、書面回答では低い割合になる傾向に注意

当ブログで何度か採りあげているクラウド会計の利用率ですが、書面の回答による調査ですと、利用率が低めにでている傾向のあることがわかりました。

説明のポイント

  • つい先日、経済産業省(中小企業庁)で公開された調査結果に、クラウド会計の利用率が掲載されていた
  • 書面回答だと、クラウド会計の利用率は低めになる傾向が見られる
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クラウド会計の利用率は、ネット回答が一般的

当ブログの筆者は、クラウド会計の利用をお勧めしています。

また、このブログでも、企業や個人事業主のあいだでクラウド会計がどれぐらい普及しているのかについて注視してきました。

クラウド会計の利用率における調査手法は、インターネットによる調査が一般的です。個人事業主向けに調査したものとしては、MM総研によるものが有名です。

MM総研の「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2019年3月末)」によれば、個人事業主において会計ソフトを利用していると回答し、その会計ソフトを「クラウド会計」と回答した割合は18.5%です。

対するインストール型の会計ソフトは72.3%ですので、割合としてはクラウド会計が「1」に対して、インストール型が「4」くらいの比率になっています。

書面回答だと、利用率はかなり低くなる?

これだけを見ると、「クラウド会計は普及しつつあるなあ」というイメージを持つところですが、この調査とはひと味違った結果があることもわかりました。

その調査結果が「平成30年度中小企業関係租税特別措置の効果に関する調査研究報告書」(東京商工リサーチ、2019年3月)です。

調査を実施したのは中小企業庁で、委託先の調査会社は東京商工リサーチです。調査の回答時期は、2018年7月です。

そしてこの調査結果が経済産業省のホームページに掲載されたのは、つい先日の2019年5月21日です。

この調査結果を読んでみると、個人事業主に向けた調査項目の中に、クラウド会計の利用を尋ねる項目があることに気づきました。

もともとこの調査の趣旨は、中小企業に対する税制措置への影響を調べるものですので、クラウド会計の調査が含まれているのは、微妙に違和感があります。

クラウド会計の調査は「ついで」の印象もありますが、関心の高い分野であることをうかがわせるものともいえるでしょう。

調査は書面回答で、代表者は50代以上がほとんど

次に、この調査におけるクラウド会計の利用率を見てみましょう。

まず前提として、この調査は2パートに分かれており、法人向けと個人事業主向けでは別々の調査になっています。

そして、クラウド会計の利用率が調査されたのは個人事業主向けです。回答の形式は書面です。

また、これも重要なポイントですが、調査の回答結果を見ると、個人事業主の代表者の年齢は、約9割が50代以上です。

クラウド会計の調査結果について述べると、インストール型の会計ソフトを利用していると答えたのが「71.6%」に対して、クラウド会計を利用していると答えたのは「4.3%」でした。

 

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結果をどうみるか?

この結果をどう見たらよいのでしょうか?

さきほどのMM総研の調査結果と比較するに、インストール型とクラウドとの間にはずいぶんと差があることに気づきます。

MM総研の調査では、クラウド会計「1」:インストール型「4」の割合でした。これに比べて、東京商工リサーチの調査を見ると、クラウド会計「1」:インストール型「16」くらいの開きがあります。

その理由を考えてみると、年齢層や、調査回答の方法による違いがありそうです。

まず、インターネットの調査に回答する意欲のある層は、もともとインターネットに親和性が高いから、クラウド会計の利用率も比較的高めになりやすい、ということが考えられます。

その一方で、今回の紹介したような調査の回答を見てみると、非常に面倒くさい項目が多数含まれています。つまり、記入には非常に根気がいる内容です。

こうした書面調査に答えてくれた個人事業主は、とても真面目ですから、保守的な傾向があるかもしれません。すると、インストール型の会計ソフトの利用率は高めになりやすい、という結果になりそうです。

それに、調査対象となった個人事業主(代表者)の年齢層は、50代以上がほとんどだったことも重要です。

これまで親しんできたインストール型の会計ソフトを、わざわざクラウド会計に乗り換える、というのもなかなか難しいことであると考えられるでしょう。

これ以外に、クラウド会計の利用率が低めになっている原因として、ITに強い「情報通信業」の回答数が少ないという可能性もあります。

インターネット調査だけを見ると、全体を見誤る?

アンケート調査は、あくまで一部を切り取ったものにすぎず、これをもって全体を見ることは非常に難しいと実感させられます。

インターネットによる調査だけを見れば、「クラウド会計はどんどん普及している」というイメージでしたが、別の調査を見れば、「クラウド会計なんて個人事業主では広まっていない」ということもできます。

さしあたっていえそうなことは、

  • クラウド会計は、新規開業した若い個人事業主と、小規模の法人を中心に普及しつつある
  • インターネットによるアンケート調査では、クラウド会計の利用率は高くなる

という傾向でしょう。

まとめ

先日、経済産業省のホームページで公表された調査報告書である「平成30年度中小企業関係租税特別措置の効果に関する調査研究報告書」に、個人事業主に対するクラウド会計の利用率の調査が含まれていたので、この点をご紹介しました。

その中身を見てみると、クラウド会計の利用率は、思ったよりもかなり低めになっていることがわかりました。

このことから、世間に出回っているクラウド会計の利用率とは、「インターネットにおける調査の場合」という点を念頭に置く必要があるでしょう。

インターネット調査だけをもって全体を語ると、実態とは異なる可能性がありそうです。

ちなみに、今回紹介した「平成30年度中小企業関係租税特別措置の効果に関する調査研究報告書」は、もともと税制措置に対する効果や認識を探るための調査です。

この調査は中小企業庁が実施したもので、中小企業向けの税制における効果をはかっていることがわかります。

この調査報告書では、ほかにも興味深い回答結果がありました。機会があれば、当ブログでもご紹介したいと考えています。