空室率の急上昇。アパート投資による相続税対策は慎重な検討を

アパート

2015年(平成27年)の相続税増税が影響したためか、アパートの空室率が急上昇しています。今後のアパート投資による相続税対策は、ますます慎重な検討が必要でしょう。

説明のポイント

  • 2015年(平成27年)の相続税増税を機に、アパートの空室率が急上昇している。
  • 相続税対策だとしても、アパート投資のデメリットも理解しておくこと。
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相続税対策でアパート建築ラッシュ?

2015年(平成27年)1月から相続税が増税されました。増税の内容は、税率がかからない最低ラインである「基礎控除額」が引き下げられたほか、税率も上昇しています。

相続税の基礎控除額の変化

国税庁タックスアンサー(No.4152 相続税の計算)より。基礎控除額が引き下げられた。

相続税の税率の変化

国税庁タックスアンサー(No.4155 相続税の税率)より。

この相続税の増税によって、「相続税対策」というセールストークが一段と魅力を増したようです。

新聞の広告欄を見ると、「相続税」という文字を見かけることも多くなったのではないでしょうか。実際に、その結果を裏付けるレポートが発表されています。

不動産調査会社のタスが今年(2016年)6月に発表したレポートによって、首都圏のアパートの空室率が急上昇しつつある状況が浮き彫りになっています。

1都3県アパート系空室率

参照:【PDF】TAS賃貸住宅市場レポート(2016年6月版)(データ提供:アットホーム株式会社、分析:株式会社タス)

このグラフは、4ページ目の図-2「1都3県アパート系(木造、軽量鉄骨)空室率TVI」を引用したものです。

一方、他のグラフを見ても、関西圏に目立った変化が無く、マンション系にも変化が無いことをみると、アパートに限った空室率の上昇は奇妙です。

2015年1月を機に上昇が始まっていることを見ると、相続税対策によるアパートの建築ラッシュが影響したものとみていいでしょう。

相続税対策の意味とは?

なぜアパートを建てると相続税対策になるのかをおさらいしましょう。

1.建物を建築する

路線価評価6,000万円の土地(更地)を所有しており、有効活用を考えています。また、4,000万円の現金を持っているとします。この4,000万円は、自分のものでも、銀行から借りても構いません。

その4,000万円を使ってアパートを建築します。

2.建物を賃貸に出す

アパートが建築できたら、賃貸に出します。幸いアパートは満室になりました。

3.相続税の評価額はいくらか?

①土地:路線価は、公示地価の約8割として評価されます。これは更地だった場合でも同じです。そしてアパートを建築すると、自由に利用できないことから評価額が下がります(貸家建付地)。

  •  6,000万円×82%(貸家建付地の減額(一例))=4,920万円

②建物:建物は、建築費に対して約7割で評価されます(固定資産税評価)。アパートを他人に貸しているので、自由に利用できないことから評価額が下がります(借家権分の減額)。

  •  4,000万円×70%(固定資産税評価)×70%(借家権を差し引いた割合)=1,960万円

③ ①+②=6,880万円

路線価6,000万円の土地と4,000万円の現金(合計して1億円の評価)は、アパート投資をすると、相続税の計算では約7,000万円の評価になります。この評価額の大きな減額が、アパート投資による相続税対策の魅力です。

また、更地の場合であれば、支払っている固定資産税は経費になりません。しかし、不動産所得があれば、その土地や建物の固定資産税を経費にすることができます。

この固定資産税の負担も、土地活用を促す要因の一つになっています。

デメリットは何か?

アパート投資は、相続税対策になることがわかりました。しかし、いいことばかりではありません。デメリットにも目を向けてみましょう。

 

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1.賃料の減額リスク

事前に立てた収支予測が、本当にその通りになるかは誰にもわかりません。アパート投資も、ひとつの商売であり、うまくいく場合とうまくいかない場合があるからです。

例えば、大学のキャンパスや工場ができるのを見越して単身者向けのアパートを建てたものの、キャンパスや工場が移転してしまう可能性が考えられます。

このように、アパートが将来にわたって常に満室である保証はありません。長い先のことなんて、誰も見通すことはできないからです。

また、サブリースによる契約で賃料が保証されているとしても、賃料が引き下げになるリスクも認識しておく必要があります。

参考「国民生活」2014年8月号 特集 不動産サブリース問題の現状(国民生活センター)

2.流動性が低い

いったん投資を始めると、そのアパート投資から撤退することは簡単ではありません。そのアパートをすぐに買ってくれる人は見つからないからです。このように、売り手と買い手が少ない状態を「流動性が低い」といいます。

また、アパートを相続した相続人が、経営を引き継ぐ意向があるのかもよく検討する必要があります。いくら相続税対策だからといって、いらないものを引き継ぐとしたら、相続人も売却しづらい資産を相続することになってしまいます。

単に不動産から収益を得る目的であれば、アパート投資ではなくても、証券化された不動産投資信託を買う選択肢もあります。これらは流動性が高く、保有するための手数料も比較的安いです。国内にとどまらず、海外の不動産から収益を得ることもできます。

ただし、土地や建物の実物を保有するわけではありませんので、相続税対策にはなりません。株式と同様に、価格の変動が大きいことにも配慮が必要です。

参考J-REITってなんだろう?(一般社団法人投資信託協会)

3.投資した額と同じ額で売れるとは限らない

流動性が低いこととも関係がありますが、もし建築後にアパートをすぐ売却したいと思っても、投資した額と同額で売れるとは限りません。

いつも満員御礼で、収益性の高い物件であれば、高値で買い手もつくかもしれません。しかし、空室だらけのアパートで収益性が低い場合、売却額は低くなります。

いくら相続税対策になったとしても、投資で大損していれば意味がありません。

「自分でずっと持ち続けるから、売却できなくても関係ない」と考える人もいますが、売っても売らなくても、損をしている状況に変わりはありません。

4.分割しづらい

建物と土地を合わせた金額が大きいため、他の資産に比べて分割しづらくなります。このため、アパートを個人で経営する場合、そのアパートを将来誰が相続するつもりなのかを想定しておくことです。

そして、アパートを引き継がない相続人には、納得できる別の資産を分けられるのかも考える必要があります。

土地や建物は、持分を共有して相続する方法もありますが、これは将来のトラブルのもとになりますので絶対に避けるべきです。

5.初期投資で多額のキャッシュが必要

あまっている土地をアパート投資で活用して、現金収入を得たい意向もあるでしょう。しかし、その欲している現金収入を得るために、最初に多額の現金が出ていくことには、意外と気にしないという事実があります。

その現金を銀行で借りたのであれば、収益を確保できないと首が絞まることになります。教訓として、バブル期に不動産投資をした人が、借入の返済が終わらずに苦しんでいる事実を忘れてはいけません。

6.空室が続く場合、貸家建付地が適用されないことも

オーナーがアパートを賃貸している場合は、空室になっている期間にも注意です。空室が長く続いている物件については、貸家建付地の評価減が適用されない場合もあるからです。

なお、サブリースの場合は、部屋を継続的に賃貸する契約になっているので、空室の影響は生じません。

まとめ

アパート投資と相続税対策の関係について述べました。このアパート投資による相続税対策がもてはやされたのは、とくにバブル期のころといわれています。当時の異常な土地高騰が、相続税対策の必要性を促したわけです。

ところが現在は社会構造も変化し、人口減少社会がテーマとなっています。インフラとしての住宅は過剰になりつつあり、むしろ空き家対策が話題になる時代です。

これらを踏まえて、アパートの空室率が急上昇している事実をどのように捉えるか。現状でアパート投資を検討している場合は、いったん冷静になったほうがいいでしょう。少なくとも、空室率の変動を見極めてからでも遅くはないと考えます。

先にも述べたとおり、アパート投資は、いったん投資すると後戻りの難しいものです。どうしてもアパート投資を考えるのであれば、厳しく見積もった収支予測を立てる必要があるでしょう。

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