平成29年1月から可能になる、国税のクレジットカード納付について紹介します。
説明のポイント
- クレジットカードを利用した納付が平成29年1月から新しく始まる
- 決済専用のサイトから24時間、いつでも納付可能
- 決済手数料がかかる
国税のクレジットカード納付とは?
国税のクレジットカード納付とは、平成28年度税制改正において創設された制度です。
平成29年1月4日(予定)から、国税について、クレジットカードでの納付が可能になります。これまでの「現金払い」や「銀行口座からの納付」に加え、クレジットカードという新しい納付の選択肢が増えるわけです。
対応する税金は?
税金には、国に納める「国税」と、地方公共団体(都道府県・市町村)に納付する「地方税」の2種類があります。このうち、対応するものは国税です。
下記の図表のうち、赤枠で囲った税目が対象です。
▲国税・地方税の税目・内訳より引用(財務省)
なお、対応の進んでいる地方公共団体では、すでにクレジットカードによる地方税の納付が可能なところもあります(例:東京都の都税 クレジットカードお支払サイト)。
この点は、地方税のほうが国税よりも一歩先んじている面もありました。(ただし、対応している地方公共団体の数は少ないです)
メリット・デメリットは?
平成29年1月から始まる、国税のクレジットカード納付について、そのメリット・デメリットをまとめます。
メリット
- クレジットカードの引き落とし日まで、支払日を延長できる
- 支払回数の選択もカード会社次第で可能。分割払いによる延納の効果があるが、カード会社への金利手数料が発生する
- 事務負担の軽減。ネットで納税が完結し、24時間納付が可能
- スマートフォンからも利用可能
クレジットカードで決済した時点で、クレジットカード会社が税金の納付を立て替えます。このため、納付は完了していますが、支払いは後日にすることができます。
分割払いについては、金利手数料の負担のない「2回払い」ができるかは不明です。(国税庁のQ&Aに記載なし)
デメリット
- 決済手数料がかかる(1万円以下は税別76円+消費税、以後1万円ごとに税別76円+消費税を加算)
- 例えば、50万円をクレジットカードで納付したら、決済手数料は税別3,800円+消費税がかかる
気になるデメリットは、決済手数料です。
ただし、クレジットカードの利用分に対してポイントが付与されるとも考えられ、その点で多少はカバーされるでしょう。(※ポイント付与の有無は、各クレジットカード会社で要確認)
注意点
クレジットカードでの納付について、注意点もあります。
まず、このクレジットカード納付は、ネット限定の決済手段です。金融機関や税務署の窓口で、クレジットカードの納付ができるという意味ではありません。
また、納付可能な額は、クレジットカードの決済可能額の範囲内で、上限は1,000万円未満とされています。
クレジットカードの納付が完了しても、領収証書は発行されません。ただし、納付手続の完了ページを印刷することはできます。
要注意なのは、納税証明書の発行が可能になるまで3週間程度かかることでしょう。融資を受ける場合などで注意が必要です。
実際の納付の流れは?
納付に必要なものは次のものとされています。
- 税目・課税期間・申告区分・税額がわかるもの(※これらは申告書や通知書を見ればわかる)
- クレジットカード
これだけで納付できるならば、ハードルは相当に低いといえそうです。
クレジットカードは、主要な国際ブランドに対応しており、国内発行のクレジットカードであれば、ほとんど使用できるでしょう。
また、カードの名義人と、納税の対象者が家族などで異なってもOKとのことです。
具体的な手順は?
国税庁の公表している「クレジットカード納付手続の流れ」【PDF】より、手続きの流れを転載します。
こうしてみると、難しいところはほとんどありません。
実務に変化はあるか?
クレジットカード納付の創設を受けて、これまでの納付手続がどう影響を受けるのかを考えます。
個人事業主の場合
個人の場合、所得税や消費税の申告について、次の方法で納付していました。
- 紙の納付書を作成して、税務署や金融機関で納付
- 振替納税の申請による銀行口座からの自動引き落とし
- ネットバンキング・ATMのペイジーを利用する納付
- e-Tax(電子申告)に連動したダイレクト納付
一般的に、個人の所得税申告・消費税申告では、振替納税の申請を勧めるケースが多いです。
振替納税では、引き落としが納期限から約1ヶ月先に延びて、銀行口座から自動的に引き落とされるという利便性があります。利用手数料も発生しません。
これらを考えると、振替納税の優位性は変わらないと考えますが、手続きの簡便性を考えると、今後はクレジットカードの納付を選択する方もいるでしょう。
振替納税をやめて、クレジットカード納付に切り替えたい場合は、次の記事を参照してください。
法人の場合
法人の場合、法人税や消費税の申告について、次の方法で納付しています。
- 紙の納付書を作成して、税務署や金融機関で納付
- ネットバンキング・ATMのペイジーを利用する納付
- e-Tax(電子申告)に連動したダイレクト納付
法人の場合、個人と異なり振替納税が利用できません。このため、旧来どおりの紙の納付書による納付や、税理士が代理申告すると同時に口座引き落としする「ダイレクト納付」が多く用いられています。
これまで紙の納付書を使用していた場合は、金額的な上限はあるものの、クレジットカードによる納付も選択肢のひとつに加わります。
社長個人のクレジットカードで支払うことも可能と思われますが、社長個人の立て替えになってしまうため、会社名義のクレジットカードで支払うことが望ましいでしょう。
まとめ
平成29年(2017年)から新しく始まる、国税のクレジットカード納付について紹介しつつ、実務上の影響を考察しました。
納付の手続きは簡単です。利用手数料はかかるものの、手続きが簡便になることは大歓迎でしょう。
サイト:国税クレジットカードお支払サイト(2017年1月4日開始)
参考:[手続名]クレジットカード納付の手続(国税庁)