MFクラウド会計と会計freeeは、人気の2大クラウド会計ソフトです。これらについて、どんな点が違っているのかを説明します。
MFクラウドとfreeeの違いとは
このブログでいまさら述べるまでもなく、「MFクラウド」と「freee」を比較した記事は、ネット上に多数見られます。しかし、それらの紹介記事の多くは、パンフレットに記載された内容の比較がほとんどです。
しかし、検索からこの記事にたどり着いた人は、もっと「深いレベル」の違いを知りたいものと考えます。
そこで、2つのクラウド会計ソフトが根本的な点で、どこが違っているのかを、もう少し具体的に確認しましょう。ただし、すべてを一気に紹介すると長文になってしまうので、連載形式とさせていただき、1回目は「銀行口座・クレジットカードとの連携」の違いにスポットを当てます。
銀行口座・クレジットカードとの連携
クラウド会計ソフトが注目された理由の一つは、金融機関やクレジットカード会社と連携し、明細の読み取りを自動化して、帳簿にそのまま入力できるという点にあります。
このことから、明細の読み取りにおける比較は非常に重要です。
MFクラウドやfreeeが使いやすいのは、独自の読み取り技術を持ち、シームレスな動作になっていることが挙げられます。これに比べると、他社開発の読み取り技術を採用しているクラウド会計ソフトは、使い勝手が悪いことも多いです。
対応する金融機関
MFクラウド(マネーフォワード)はもともと、資産管理・会計簿アプリから出発したという歴史があります。このため、金融機関のオンラインバンキングからのデータ読み取り(アグリゲーションサービス)には定評があります。
資料によれば、連携できる金融機関の数は約3,600件とされています。全国のオンラインバンキングのほどんどが網羅されているといってよいでしょう。
一方のfreeeも、独自のデータ読み取り技術を自社のクラウド会計ソフトに組み込んでいます。
freeeの連携できる金融機関も約3,600件とされており、MFクラウドに比べて見劣りすることはありません。両者の違いを細かいレベルで見てみると、地方銀行や信用金庫において、微妙に対応できる・できないの違いがあるようです。
freeeの残念な点
前述のとおり、MFクラウドは金融機関からのデータ読み取り技術に長けた会社です。
これに比べて、freeeは、明細の読み取りについて残念な点がいくつかあります。具体例を挙げると、次のようなものです。
- クレジットカードの明細読み取りは、カード会社の請求内容が確定した時点で読み取りを実行する
- オンラインバンキングのパスワード以外にもfreeeに情報を預ける必要がある
- ワンタイムパスワードを使っていると、明細読み取りごとに入力を求める銀行があり、全自動にならない
[1] クレジットカード明細の読み取りのタイミング
もっとも気になるのは、クレジットカード明細の読み取りが遅い点でしょう。
毎月15日締め(24日確定)のクレジットカードを使っている場合、締め日直後の16日にクレジットカードを利用すると、その明細は翌月24日で確定します。freeeは、クレジットカードの明細が確定してから、データを読み取ります。
もし月次(月ごとに締めて)で決算をしていると、16日~31日のデータがすぐにほしいのに、もどかしさを感じます。例えば、4月16日に利用したクレジットカードを仕訳として入力するには、その翌月の5月24日まで待つ必要が生じるからです。
明細の読み取りについては、freeeのヘルプにも書かれています。下記にその部分を引用しておきます。
この対策として、どうしても早く利用履歴を反映したい場合は、デビットカードを利用するのが有効です。デビットカードは、利用時に銀行口座から引き落としされるため、利用履歴を即座に反映することができます。
また、月末締めのクレジットカードを利用することでも、問題はやや緩和されます。ただし、月末締めのクレジットカードでも、31日の利用分は翌月請求分に回ることがあります。
一方、MFクラウドでは、クレジットカードの利用明細はリアルタイムでの読み取りです。締め日や明細の確定に関わりなく、クレジットカード会社の利用明細に反映されれば、それを読み取ったMFクラウドにおいて、すぐに仕訳を入力できます。
[2] ログインパスワード以外にも情報を預ける必要がある
freeeにおける口座連携の登録では、ログインパスワード以外の認証番号も預ける必要があります。下に引用した画像は、新生銀行の口座登録画面です。
新生銀行では、ログイン時にセキュリティカードのコードも求められます。
セキュリティカードは振込のときに使用する認証コードでもあるため、たとえfreeeが高度なセキュリティを実現しているとしても、この情報を預けるのは不安を覚えます。
一方のMFクラウドでは、基本的にログインIDとパスワードのみで、その他の情報を預ける必要はありません。
参考:APIを公開、第1弾としてfreee社とのAPI接続を開始(ジャパンネット銀行、2017年3月)
[3] ワンタイムパスワードを使っている場合は要注意
freeeでは、ワンタイムパスワードを使っている金融機関との連携においても、気になる点があります。
その気になる点とは、freeeがデータを取得するたびにワンタイムパスワードを求められ、全自動にならない場合があるということです。
下の画像は、freeeにソニー銀行の口座を連携させた場合の画面です。口座のデータ取得から数日経つと、再びワンタイムパスワードの入力を求められ、全自動になりません。
一方のMFクラウドでは、筆者はこのような問題を耳にしたことがありません。両者の技術にはなんらかの違いがあるようです。
外部連携サービスにも違いあり
読み取り技術にも関連する内容ですが、MFクラウドやfreeeでは、外部のサービスから連携して情報を引き出すことができます。
例えば、MFクラウドでは「もしもアフィリエイト」「もしもドロップシッピング」や「A8.net」のアフィリエイト収益の情報を、仕訳に反映することができます。アフィリエイターにとっては、利便性が高まります。
対応する外部サービスの数は、大差ではありませんが、MFクラウドに軍配があがります。
【MFクラウド】外部連携サービス
【freee】外部連携サービス・電子マネー
電子証明書の対応でも、freeeのほうが若干手間がかかる
法人の利用の場合、電子証明書を利用するオンラインバンキングも多いです。
MFクラウドは、電子証明書を利用する金融機関に対応しています。対応するOSはWindowsのみで、専用ソフトをインストールすることで、そのソフトが明細を自動で読み取ります。ワンタイムパスワードを利用している場合は、手作業が必要です。(参考)
freeeも、電子証明書を利用する金融機関に対応しています。同じくWindows対応の専用ソフトをインストールして読み取りますが、アプリの動作は全自動ではないため、やや手間が生じます。(参考)
まとめ
今回は「MFクラウドとfreeeはどう違うのか」について【銀行口座・クレカとの連携】の技術から、その違いを確認しました。明細からの読み込みについていえば、MFクラウドに軍配があがります。
しかし、freeeも独自の読み取り技術を用いているわけですが、それだけでも評価に値するといえるでしょう。
なぜなら、他のクラウド会計ソフトは、独自の読み取り技術を開発せず、他社開発の技術に依存していることも多いからです。この点を見ても、技術の難易度がうかがえます。
今回はfreeeに不利な点を紹介することになりましたが、比較材料はこれだけではありません。第2回目の記事では、freeeにしかできないことや、その優位点も紹介していきます。