書面で申請している「個人情報の開示請求」について、マイナポータルを活用してネットで確認できるようになるかもしれない、という期待について述べます。
マニアックなテーマですので、「情報開示」に興味がある人向きの話です。
説明のポイント
- 個人情報の開示請求は、書面の郵送または窓口での申請のみ
- マイナポータルを活用して、個人情報をネットで確認請求できるようになるかも
個人情報の開示請求とは
税務署に提出した確定申告書や届出書を紛失してしまった場合、税務署に内容の確認を請求することができます。
この手続きについては、以前の記事で紹介しました。
この記事の要点をかいつまんで紹介すると、
- 税務署の窓口で「申告書等閲覧サービス」を利用できるが、コピーの交付は認められない
- 個人情報の開示請求ならば、郵送でコピーを請求できる(法人・死亡後の個人のものは不可)
というものでした。
以前は可能だった、ネットからの個人情報の開示請求
個人情報の開示請求の手続きは、税務署の窓口だけでなく、郵送でも申請ができます。
「なんだ、郵送で申請できるなら、ネットでも申請できないの?」と疑問に感じるところですが、現在はできません。
「現在は」と述べたのは、実は以前に「国税庁電子開示請求システム」というものが存在していたからです。
引用:【PDF】『国税庁電子開示請求システム』について(国税庁、2010年)
「国税庁電子開示請求システム」は、電子政府の総合窓口システム(e-Gov)を利用して請求する手続きでした。
しかし、平成20年度における利用者数は61件で、利用者数の増加が見込めないことから、「国税庁電子開示請求システム」は平成22年(2010年)に運用を終了しています。
「国税庁電子開示請求システム」の利用者数が少なかった理由は、税務署の窓口で内容を確認しながら直接請求する人が多いことや、電子署名で送信するのが手間になっている、ということが原因として挙げられています。
マイナンバーカードの普及で電子署名の障壁は下がる
先に述べたとおり、かつて存在した「電子開示請求システム」が利用されなかった原因は、「電子署名が面倒でハードル高すぎ!」ということに尽きます。
しかし、2016年から導入されたマイナンバー制度では、マイナンバーカードの広い普及が期待できます。
マイナンバーカードは、国民に各一枚ずつ交付される、顔写真入りのIDカードです。(画像のうち右のカード)
このマイナンバーカードには、電子証明書がカード内部に装備されています。この電子証明書を利用して、ネット上における本人確認(電子署名)ができるわけです。
さらに、「マイナポータル」という基本サイトができたことにより、申請手続きもわかりやすくできることが見込まれます。
このことは、かつて存在していた「電子署名のハードル」や、手続きの難易度が下がっていくことを意味します。
現在は取得率の低いマイナンバーカードですが、今後、社会のインフラ基盤として活用されていくことが見込まれており、取得率も向上すると考えられます。
個人情報はどこまで確認できる?
マイナポータルでは、行政機関等が保有している個人情報を確認できるしくみが設けられる予定です。マイナポータルでは、「自己情報表示」と呼ばれています。
どこまでの範囲での個人情報が閲覧できるのかは、現時点ではわかりません。
なお、2017年8月現在で確認した時点では、税の分野は「地方税」のみの確認となっており、「国税」の確認はできません。「地方税」は、2017年度の住民税の課税明細書が表示できるようになっていました。
確認はできるが、申請はできない?
現在のマイナポータルの仕様を見ると、マイナポータルに登録された手続きは確認できますが、掲載されていないものを探してもらうことまではできないようです。
情報表示ができない場合は、従来どおり、書面での手続きが継続して求められることになるでしょう。
情報開示の面からみれば、マイナポータルでは情報表示だけでなく、開示請求の手続きまでできることが望ましいですが、難しいのかもしれません。
また、国税庁のネットワークにマイナポータルがどう結びつくのかも、わかりません。
もし、これまで税務署(国税)に申請していた書面での開示請求を、ネットで代替できるようになれば便利でしょうが、期待はうすそうです。
まとめ
現在は書面でしか申請できない個人情報の開示請求について、マイナポータルの活用にからめて、開示請求を考えました。
マイナポータルでは、マイナンバーにからむ個人情報の表示を申請できるようになっています。地方税だけでなく、国税でも個人情報の表示ができるのか、という点に注目しています。