平成29年分の確定申告で新しくなったところを発掘しています。今回は、「医療費のお知らせ」が確定申告に使えるようになったものの、電子申告であっても、郵送が必要になるというデメリットをお伝えします。
説明のポイント
- 書面の医療費通知を使った申告は、電子申告であっても、その書面の郵送を求められる
- 集計は楽になるが、郵送の手間が増える
「医療費のお知らせ」とは
「医療費のお知らせ」(医療費通知)とは、協会けんぽや、健康保険組合などから送付されてくる、「医療費をいくら使ったか?」というお知らせです。
いままでこのお知らせは、確定申告の医療費控除の集計には使えない、という不便な制度になっていました。
引用:平成30年2月に「医療費のお知らせ」を送付します(協会けんぽ)
しかし、制度が改善されて、平成29年分の確定申告からは、この「医療費のお知らせ」を医療費控除の集計で活用できるようになりました。
この点は、国税庁のトップページでも周知されています。
引用:平成29年分確定申告の医療費控除の提出書類の簡略化について(平成29年9月)(国税庁)
メリット
その「医療費のお知らせ」が使えるようになったことで、みんなハッピーなのか? メリット・デメリットを考えてみましょう。
メリットは、なんといっても集計が楽になることです。
いままでは医療費の領収書をすべて保存し、それを集計して、明細書に記入していました。
また、紙の申告書で提出している場合は、その領収書を税務署に提出する必要もありました。
電子申告の場合は、領収書は提出省略とされていましたが、領収書は手許に保存する義務がありました。
これらは、医療費通知で集計すれば、領収書から集計することは不要になります。さらに、領収書の保存も不要です。これは画期的な改善でしょう。
医療費通知の集計値だけを、明細書の一番上に記入すればいいので、とても楽です。
引用: 「医療費控除の明細書」の様式と記載例(国税庁)
デメリット
これで万々歳かと思いきや、そうではないデメリットがあるようです。
まず大問題として、そもそも、その「医療費通知」が使えない可能性がある、という点については、以前の記事で触れました。
さらに気になる点は、医療費通知の書面を利用した集計の場合は、その医療費通知を税務署に郵送する必要がある、ということです。
これは、電子申告であっても同じことで、やはり郵送が必要とされるようです。この点はちょっと驚きでしょう。
医療費通知の書面について郵送が必要な点は、国税庁が平成30年1月に明らかにしたQ&Aにおいて、明記されています。
引用:【PDF】「医療費控除に関する手続について(Q&A)」
領収書で集計していた場合は、明細書の提出だけでOK。領収書を税務署に提出する必要はありません。
これは、紙の申告書でも、電子申告でも同様の対応です。(平成29年分から紙の申告書でも領収書の提出は不要)
ところが、医療費通知を使えば集計が楽になるものの、郵送が求められるというのは微妙な感じです。
この点を検証するために、テキトーな確定申告書を作成してみましたが、やはり税務署への書面の郵送(提出)を求められました。
つまり、何がいいたいか(まとめ)
話をまとめると、こういうことになるでしょう。
医療費通知で集計が楽になるものの、なぜか郵送の手間は増える……という、微妙な仕様。
いままで電子申告で医療費控除を適用していた人にとっては、医療費通知を使うと郵送の手間が増えることになり、戸惑いを覚える部分があるでしょう。
医療費通知が使えない可能性……というリスクも考えると、いままでどおり領収書からの集計が無難なのかもしれません。
【追記】この記事をご覧になった方へ(重要)
この記事で示した問題点は、令和2年分の確定申告までの状況を解説したものです。この記事を執筆したあとで行われた税制改正により、ここで説明した問題は解決されます。
つまり、医療費通知の書面提出は、e-Taxで送信した場合には郵送不要とされるということです。ただし、改正の実施は、令和3年分(令和4年3月15日提出期限)の確定申告からになります。令和2年分の申告までは、e-Taxでも医療費通知の郵送は必要です。
詳しくは以下の記事をご覧ください。