納税証明書の電子ファイルに関する考察【前編】

国税の納税証明書といえば、「紙」で交付を受けることがほとんどでしょう。この納税証明書は、電子ファイル形式で受け取ることも可能とされています。

ところが、電子ファイル形式の電子納税証明書について調べてみると、利用実態を詳しく調べた資料は見当たりませんでした。そこで、当ブログにて調べたものを「議論のたたき台」として掲載しておきます。

専門家を対象としたレポートですので、一般の方が読んでも難しい内容が含まれている可能性があります。

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電子納税証明書という忘れられた存在

国税の納税証明書といえば、税務署から紙で交付されるのがほとんど当たり前のことでしょう。

実務上あまり意識されていませんが、この納税証明書は電子ファイルでも受け取ることができます。(この記事では、その電子ファイルの納税証明書を「電子納税証明書」と呼称します)

納税証明書を電子ファイルで受け取ったほうが、なんだか利便性も高そうですが、実務ではまったく活用されていないこともわかっています。

では、なぜこの記事で電子納税証明書の考察をするのでしょうか。

その理由ですが、デジタルガバメントなど、手続きの電子化が注目されているなかで、電子納税証明書はいまだ関心が薄いという印象を持っているためです。

今回、筆者が電子納税証明書について言及した資料があるかどうかを調べたところ、インターネットで見つけることはできませんでした。それはそのはず、実務で利用されていることはほとんどないからでしょう。

税務専門誌においては、2004年~2009年にかけて電子納税証明書に関する言及があったようですが、その後において言及されたものは見つかりませんでした。関心が薄れているのかもしれません。(税務専門データベース「TAINS」検索で確認)

関心の薄い分野を掘り起こし、資料を整理をするのも専門家の務めの一つと考えます。そこでこの記事では、ほとんど忘れられた存在ともいえる電子納税証明書について「議論のたたき台」を作るべく考察し、読み物になるように掲載します。

ブログ記事ではやや長文となるため、読みやすいように2回に分けて掲載します。

国税庁パンフに見る、納税証明書の交付の不思議

国税庁が交付するパンフレットを見ると、なんとなく不思議な印象を覚えます。

それは、納税証明書の交付についてe-Tax(電子申告)による申請をうながしながら、その交付される納税証明書は、窓口や郵送で渡される「紙」ベースのものだからです。

現に、国税庁のパンフレットを見ても「オンライン請求」をうながしながら、その交付の対象となる納税証明書は書面となっています。

引用納税証明書の請求は便利なオンライン請求をご利用ください!(国税庁)

納税証明書を紙で受け取るのは「紙の納税証明書が必要だから」という、あたりまえの結論になるでしょう。(納税証明書の利用パターンについても、のちほど考察します)

行政手続きの電子化が見込まれる中で、電子申請と相性のよさそうな「電子納税証明書」はいったいどうなっているのでしょうか?

パンフレットには、納税証明書を「電子ファイル」で受け取れることも書いてあります。しかし、補足的に書いてあるに過ぎない印象で、メインで利用されている形式とはとても思えません。

電子納税証明書とはなにか?

そもそも、電子納税証明書とはどのようなものでしょうか?

なんだかイメージがわきづらいですが、かんたんにいえば、パソコン内部で扱えるファイルで、ファイル形式はXMLです。(参考:XML形式の詳細

電子納税証明書の取得方法については、国税庁e-Taxサイトで案内されています。その取得方法の流れについて、画像を引用します。

かいつまんでいえば、e-Taxにて税務署に申請し、発行された電子納税証明書をe-Taxのメッセージボックスからダウンロードして、XMLファイルを入手できます。

XML形式の証明書がどんなものかを説明するのは、ちょっと難しいです。

電子納税証明書とは形式が異なりますが、イメージをしやすくするため、国税庁e-Taxホームページのトラブルシューティングで掲載されているXML形式での「電子申告をしたことの証明書」を表示した画面がありますので、参考として掲載します。

 

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電子納税証明書は電子ファイルが原本

電子納税証明書の注意点ですが、電子ファイルはこれが原本の状態であり、これを印刷しても正式な納税証明書として扱うことはできないということです。

国税庁の案内では、

仮に、書面に出力したものを有効とした場合、ワープロ等を使用して偽造することが容易に可能となるなど、証明書としての信頼性を欠くものになる恐れがあるため、電子納税証明書のデータを書面に出力したものは、あくまで電子納税証明書の内容を知覚できる形で確認するための控えとなります。

引用:国税庁e-Taxサイト「2 電子納税証明書(電子ファイル)について(詳細)

と説明されています。

そんな電子納税証明書を利用するメリットは、以下のように説明されています。

  • 取得費用が紙に比べて、安価であること(書面の窓口請求は400円。電子申請で請求した電子納税証明書と書面の納税証明書はともに370円)
  • 同一の納税証明書が必要な場合でも、ファイルをコピーして複数の提出先に提出できる

もちろん、紙媒体ではないこともメリットとして挙げられるでしょう。(現在は紙ベースの申請手続きがほとんどなので、それが逆にデメリットになっている)

納税証明書に関する法令・国税庁告示について

納税証明書に関する法令も確認しておきます。

納税証明書の交付に関する法令は、国税通則法123、施行令41、施行規則16が該当します。以下に、国税通則法123を引用します。

(納税証明書の交付等)
第百二十三条 国税局長、税務署長又は税関長は、国税に関する事項のうち納付すべき税額その他政令で定めるものについての証明書の交付を請求する者があるときは、その者に関するものに限り、政令で定めるところにより、これを交付しなければならない。

また、納税証明書を電子ファイルで交付できる根拠ですが、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」及び「国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令」において「処分通知等」が定められており、これが電子納税証明書に該当するとされています(参考岩崎吉彦「電子申告等に関する一考察 」税大ジャーナル、2009年)。

また、税務署長が電子的に交付できる書類等を定める告示(平成三十年国税庁告示第八号)に定めがあり、電子ファイルで交付できるものとして次のように書かれています。

三 国税通則法第百二十三条第一項の規定による証明書の交付

納税証明書の交付件数はどれぐらいか?

では、納税証明書の交付件数は、年間でどれぐらいなのでしょうか?

国税庁の統計では、その具体的な件数を見つけることはできませんでした。しかし、e-Gov(総務省)の資料で、交付請求数を明らかにしたものがありました。(総務省「行政手続オンライン化法第10条に基づく公表」)

そのe-Gov(総務省)の資料によると、納税証明書の交付請求数は1,461,455件とされています(平成28年度)。

このうちオンラインで請求された件数は144,048件であり、オンライン利用率は9.9%であると説明されています。(なお、国税庁は交付請求の料金を割安にすることで、オンライン請求への誘導を図っています)

注意点ですが、オンライン請求とは紙の納税証明書を請求したものを含みます。というか、紙の請求がほとんどです。

これらの交付請求数のうち、この記事のテーマとなる電子納税証明書の請求件数については明らかになっていません。

交付数を勝手に推測してみる

しかたがないので、当てずっぽうに電子納税証明書の交付請求数を推測してみましょう。おかたい論文では絶対にできませんが、ブログであれば許されるでしょう(笑)

筆者が某地方都市の税務署で聞いた話では、電子納税証明書(電子ファイル)が交付されるのは「ごくまれ」「年に数件」「大企業だけ」という話でした。

大企業は都心部の税務署に集中していることから、都心の税務署では電子納税証明書の交付請求数は多いことも予想されます。

仮に全国524税務署での平均交付件数を10件と仮定すると、全国では5,240件となります。このことから、すべての交付件数に対する電子納税証明書の交付割合は、0.3%という予想になります。

もちろんこれらはイメージをしやすくするための勝手な推測で、実際の件数はもっと少ないようにも感じられます。

前編のまとめ

ここで前編のまとめです。

行政手続きの電子化が注目されるなか、税務の証明として用いられる「納税証明書」については、電子化された納税証明書の存在があるにもかかわらず、ほとんど用いられていないことが気になっていました。

そこで、じぶんの時間が確保できたところで、思い切ってこの情報を体系化してまとめてみることにしました。

今回の前編では、電子納税証明書の請求方法、電子ファイルが原本であることのメリット、関連する法令と国税庁告示を確認し、年間の交付請求件数を推測しました。

次の後編では、電子納税証明書が受け付けられる方法の区分、公的機関の取り組み、電子納税証明書が用いられない問題の分析を述べます。

電子納税証明書(納税証明書の電子ファイル)の利用実態について検討する記事です。 この記事は前後...

納税証明書の受け取り方法の解説は、国税庁の案内をご参照ください。