法人設立時の税務は、2019年~2021年にかけてどう変わるか?

「法人設立オンライン・ワンストップ化」の影響を受けて、法人設立時の税務が大きく変わりそうです。現時点でわかっている情報を整理しました。

説明のポイント

  • 2019年9月~2020年3月にかけて、税務署・地方公共団体への法人設立届が一元化される
  • 添付書類が削減される
  • 法人設立オンライン・ワンストップ化との関連にも要注目
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法人設立手続きの複雑さを解消する動き

以前に当ブログでもお伝えしましたが、政府において、法人設立の手続きを簡便化する動きが予定されています。

その理由ですが、ビジネスのしやすさをはかる国際比較ランキングにおいて、日本は低い順位となっており、とくに設立手続きが複雑であることが問題視されているそうです。

やたらと手間のかかる印象のある「法人設立」。そのしくみが変更になりそうです。関係機関の討議資料から、...

政府内部の効率化を図る「デジタル・ガバメント」や、民間企業の競争力を高める労働生産性の向上の動きとあわせて、法人設立の分野においても「オンライン化、ワンストップ化」が計画されています。

この動きを受けて、法人設立時の税務についても変化が見られそう……ということなのですが、関連する情報が散らばっていてわかりづらいと感じたので、このブログでいったん整理してみることにしました。

複数地方団体への法人設立届出書等の電子的提出の一元化(2019年9月)

2019年9月、「複数地方団体への法人設立届出書等の電子的提出の一元化」が実施予定とされています。(参考総務省「「行政手続コスト」削減のための基本計画(地方税)2018年3月

2018年12月現在のところでは、法人を設立した場合には、都道府県の役所と市町村の役所にはそれぞれ、別に設立届を出しています。これらを一本化し、都道府県と市町村について1回の届出でOKにするという改善です。

ただし、「電子的提出」というタイトルがついていることから、書面で提出する場合には、一元化の適用は受けられないと予想されます。

また、東京23区内で設立している法人の場合、もともと都税事務所の1箇所だけに届出しているので、とくに効率化の実感はなさそうです。

法人納税者の開廃業・異動等に係る申請・届出手続の電子的提出の一元化(2020年3月)

つづいて2020年3月には、「法人納税者の開廃業・異動等に係る申請・届出手続の電子的提出の一元化」が予定されています。(参考総務省「「行政手続コスト」削減のための基本計画(地方税)2018年3月

上記2019年9月の「複数地方公共団体」の一元化に続いて、こんどは税務署(国税)への届出も合流するかたちです。

この点については、法人納税者だけでなく、個人納税者も同様に提出を一元化する見込みとされています。

なお、この電子的提出については、いままでのような「eLTAX(地方公共団体)とe-Tax(国)のどちらに一元化するか?」という話よりも、法人設立オンライン・ワンストップ化の影響が大きいと考えます。

法人設立オンライン・ワンストップ化との関連

このため、税務においても「法人設立オンライン・ワンストップ化」については、十分に注視しておく必要がありそうです。

詳しい内容はまだ公表されていませんが、まずは2019年度中に「設立後」の手続きがワンストップ化されたのち、その翌年度に「定款認証・設立登記」も含めた部分で、ワンストップ化が実現される予定です。(下のイメージを参照)

引用内閣府「第17回税制調査会」資料

設立者自身がオンラインで設立届を出せるようになる

上記のイメージを見るとわかるとおり、「マイナポータル」および「法人共通認証基盤」(2020年度運用開始予定)との連携を通じ、設立後に必要な手続きの共有化をはかるものとされています。

また、平成31年度税制改正大綱を見ると、マイナポータルを利用してe-Tax(国)とeLTAX(地方公共団体)あてに法人設立届出書等を送信する場合には、電子署名と電子証明書の送信を不要とする改正が検討されます。

このことから、設立者自身がオンラインで設立届を出すのも通常のスタイルになるでしょう。

設立届以外にも同時に出せる書類について注視が必要でしょう。大綱には「法人設立届出書等の設立関係書類の申請等を行う場合」と記載されていることから、「青色申告承認申請書」や「給与支払事務所の設置届」などの同時提出も可能になると予想されます。

社会保険・労務分野にも目配りが必要

法人の新規設立については、労務の手続きも関係しますので、こちらの分野にも目配りが必要でしょう。

内閣官房「行政手続簡素化工程表の進捗状況」(2018年12月)のスケジュール表を見ると、「法人(事業所)の設立時に必要となる手続(厚生年金、健康保険(協会けんぽ)、雇用保険、労災保険)のオンライン・ワンストップについては、2019年度中に実現予定」とあります。

この点は、さきほどのイメージに書かれている内容や時期と一致しています。また、電子証明書の負担をなくすために「ID・パスワード方式」の導入も予定されています。(個人納税者の確定申告における「ID・パスワード方式」とはまったく別物の話です。いちおう念のため。)

設立時の添付書類の削減

税務署での設立時添付書類の削減(時期不明)

平成31年度税制改正により、法人設立時の税務署への届出で添付書類が削減されることを、以前の投稿で説明しました。

2018年12月21日に閣議決定された「平成31年度税制改正の大綱」より、気になるトピックス...

税務署に提出する法人設立届の添付書類について、「株主名簿」と「設立時貸借対照表」が不要になります。

ただし、不要にする実施時期は、「平成31年度税制改正大綱」には明記されていませんでした。(追記:改正により、2019年4月1日をもって不要になっています)

地方公共団体での登記事項証明書の添付削減(2020年度?)

また、かつて税務署で要添付とされていた「登記事項証明書」は、2017年4月から添付不要とされています。

しかし、地方公共団体では現在でも要添付とされています。その理由は、設立年月日と資本金の額を確認するためとされています。(国税庁の法人番号公表サイトでは、設立年月日や資本金の額は確認できない)

この点への手当てですが、行政機関に対して、オンラインにより新たに設立された法人の登記情報を提供可能とするしくみを法務省が構築する予定とされており、その運用開始の予定は2020年度内ということです。(参考「法務省デジタル・ガバメント中長期計画」2018年6月

この法務省のしくみを利用し、地方公共団体は、法人設立届出時に添付する登記事項証明書を不要とする措置を検討しています。(参考総務省「「行政手続コスト」削減のための基本計画(地方税)2018年3月

つまり、地方公共団体の側で登記事項を見られるようになるので、届出する側では登記事項証明書を添付しなくてよいということです。

このことから、法人設立時の添付書類は、2020年度あたりまでに定款等の写しだけになると考えてよいでしょう。

ワンストップ化の影響で添付書類は不要になるか?

「ワンストップ化」といいつつ、法人設立時に認証した定款について、その写しをわざわざ設立届に添付させるなら、「ワンストップじゃないよね?」という疑問もわきます。

制度として書面提出では添付が必要だが、オンラインでは連携が進んで実質不要となる可能性も考えられます。

2020年度で「定款認証・設立登記」も含めたワンストップ化が実現する時点での情報に注目です。

まとめ

現時点(2018年12月)でわかっている情報をもとに、法人設立時の税務について、今後かわりそうな予定を整理しました。

散らばっている情報を関連付けるように整理したのですが、もしかしたら筆者の思い込みや勘違いがあるかもしれません。いちおうご参考ということでお願いします。

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