2019年から始まった「スマホ申告」について、今後の要望を述べます。現在の見通しでは還付申告のみの対応となっていますが、副業時代を見すえ、雑所得を加えた申告に対応すべきではと考えます。
説明のポイント
- スマホ申告とは「スマホ専用画面」のことであり、専用画面に対応しているのは医療費控除・ふるさと納税の還付申告のみ
- 副業時代をみすえて、雑所得の申告への対応が望まれる
- スマホ申告は、QRコード納税と相性がよい
スマホ専用画面は還付申告のみの対応
2019年から始まった「確定申告書等作成コーナー」でのスマホ申告ですが、還付申告しか対応していないことで微妙な評価とされています。
この点については、以前の記事で触れました。
上記の記事をかいつまんで述べると、「スマホ申告」とは「スマホ専用画面」のことであり、以前からスマホでもPC仕様の画面で申告書を作成できたものが、2019年から一部改善しただけの話である、ということでした。
「スマート申告」(下の画像。国税庁ホームページより)などとアピールしすぎたためか、期待するレベルと現実のギャップがありすぎたようにも思われます。
なお、スマホを利用した確定申告では、税務署で取得できる「ID・パスワード」を利用することで、電子申告(e-Tax)もできるようになりました。これも2019年からの対応です。
なお、その「ID・パスワード」がない場合は、スマホから書面(PDF)を印刷して、税務署に郵送します。
還付申告のみの対応、という微妙さ
スマホ申告(スマホ専用画面)は、2019年現在、年末調整済みの給与所得があって、医療費控除か、ふるさと納税の適用を受ける人が利用できます。
2020年からは年金収入のある人にも対応するほか、医療費控除・ふるさと納税以外のすべての所得控除にも対応する予定とされています。(参考:第17回税制調査会(2018年10月10日)財務省説明資料)
よって、来年の2020年も、スマホ申告は還付申告のみの対応になると考えられます。
副業時代を見すえた対応ではなかった
当初「スマホ申告」と聞いて筆者が期待していたのは、「雑所得の申告」が手軽にできるシステムなのでは? ということでした。
なぜかというと、副業時代が到来することで、「小商い」や「ギグ・エコノミー」のような細切れの収入が増え、これに応じた所得申告をスマホでする人が増えるのでは、と考えたためです。
しかし、そのふたを開けてみれば、「スマホ申告」とは単に一部の手続きがスマホ専用画面になったにすぎず、しかも還付申告にのみに対応しているだけ……ということでした。
もちろん、スマホでも「PC版」というPC向けの操作画面を利用して、申告書を作成できますが、文字の表示が細かいうえに、操作感も劣ります。
(画面下の画像がPC版。大きめのスマホを横向きにすれば、なんとか使える)
スマホで「PC版」を使うくらいならば、画面の大きいパソコンで使ったほうが操作しやすいでしょう。
つまり「あえてスマホで!」というほどでもない……ということです。
スマホ申告と相性のいいのが、コンビニのQRコード納税
ところで、2019年から新しく始まった納税方法に、QRコードを利用したコンビニ納付(QRコード納税)というものがあります。
QRコード納税は、国税庁ホームページで納税申請して発行されたQRコードを、コンビニのマルチメディア端末にかざすと、納付書が発行されるというシステムです。
引用:QRコードを利用したコンビニ納付を開始します(国税庁)
念のため述べておくと、そのQRコードはコンビニのレジで提示するのではありません。
店舗に備え付けてあるマルチメディア端末にQRコードをかざして、納付書を発行する必要があります。若干の手間を感じます。
また、納付手段は現金のみで、納税額の上限は30万円とされています。
さきほどのスマホ申告とあわせて考えると、スマホ申告とQRコード納税は相性がいいように思われます。
なぜなら、スマホで申告したことで納税が生じた場合は、そのスマホを持ってコンビニで納税手続きができ、一連の流れがシームレスだからです。
年末調整済みの給与所得者において、副業をしており、源泉徴収のない収入があるならば、所得申告をすることで納税が発生する可能性も高いといえます。
どのような流れになるのか?
以下に、国税庁のパンフから抜粋したイメージを並べてみましょう。
収入の入力は、現在「給与所得の源泉徴収票」のみの対応ですが、これに「雑所得」を加えたものでイメージしてみてください。
【e-Taxで送信後に、QRコードが表示される】
e-Taxの送信画面後に表示されるQRコードを利用すれば、そのままコンビニへ納税に行けるわけです。
しかしここまで説明したとおり、現状でスマホから納税の申告をしたい場合は、「PC版」の利用に限られます。これでは、お手軽なスマホのメリットも失われてしまうでしょう。
スマホ申告(スマホ専用画面)が、雑所得の申告にも対応することが望まれます。
まとめ
2019年から始まった2つの新しいシステム
- スマホ申告(スマホ専用画面)
- QRコード納税
を活かすならば、「スマホ申告」の画面で雑所得の申告に対応し、副業時代としての複数収入に対応できることが望まれるでしょう。
雑所得を超える規模であれば、おそらくは専用のシステムできちんと帳簿をつけていることが想定され、「スマホ申告」の必要性も薄れるものと考えます。
記事を投稿したあとで感じたことですが、2つ目の給与所得(源泉徴収票)にも対応できるといいでしょう。単発バイトならば、給与で支払われる可能性もあります。(この場合、2ヶ所目の給与は源泉徴収の乙欄となり、多めに源泉徴収されていることから還付申告の可能性が高いです)
パンフ引用:いつでもどこでもスマホで申告(国税庁)