国税庁ホームページで明らかにされている「スマホ申告」に関する資料をもとに、前年に比べて「令和元年分」(2019年分)はどこが改善されているかを確認します。
説明のポイント
- 令和元年のスマホ申告(スマホ専用画面)は、前年よりも機能が大幅に改善する
- 副業、雑損控除のための手引きも公開されており、窓口対応を減らしたい国税庁の意向がうかがえる
前年(平成30年分)のスマホ申告のおさらい
微妙に勘違いされていることがあるのですが、国税庁ホームページでは以前から、スマホを使っても確定申告書の作成は可能でした。
しかし、パソコンと同じ画面をスマホで見ることになるため、操作しづらいという問題点がありました。
これを解消したのが「平成30年分」(2018年分)におけるスマホ申告の開始です。「スマホ申告」とは、具体的にはスマホ専用画面が提供されたことをいいます。
これにあわせてe-Taxで「ID・パスワード方式」が開始されたことにより、スマホでもe-Taxでの確定申告書の送信が可能になりました。
ただし、気になる問題もありました。
「平成30年分」のスマホ申告(スマホ専用画面)は、年末調整済みの給与所得者で、医療費控除・ふるさと納税の還付申告にしか対応していない、という限定的な対応だったためです。
これ以外の申告を含む場合は、パソコン版の画面に遷移することから、「スマホ申告、マジ使えない!」という批判も多く見られました。
令和元年のスマホ申告はここが違う
そんな批判を受け、国税庁も奮起したようです。令和元年分(2019年分)のスマホ申告は、かなりのパワーアップが予告されています。
国税庁ホームページ「スマートフォン × マイナンバーカードでe-Tax!進化するスマート申告!」によると、次の点が進化するとされています。
- e-Taxが、マイナンバーカード方式に対応する
- 申告の対応範囲が拡大する(年末調整していない給与、年金、雑所得、一時所得、すべての所得控除、予定納税、繰越損失に対応)
また、2019年12月には「令和元年分のスマホ申告に関する手引き等」が国税庁ホームページで公開されています。
2019年12月31日現在でわかっている内容をもとに、スマホ申告の変化を整理します。
【1】マイナンバーカードでの読み取りに対応
すでに知られているとおり、iPhone、Androidともに、スマートフォンでマイナンバーカードの電子証明書を利用できるようになっています。
この動きを受け、e-Taxでも「マイナンバーカード方式」の申告に対応します。対応は2020年1月31日からとのことです。
なお、「iPhoneとマイナンバーカードでのe-Tax送信を予定されている方は、マイナポータルのアカウント情報の登録等が必要」と案内されています。
マイナポータルの「もっとつながる」から、e-Taxを登録しておく必要があるようです。(参考:令和元年分確定申告特集)
【2】スマホ申告の対応範囲が拡大する
先ほども述べたとおり、平成30年分のスマホ申告(スマホ専用画面)は、対応できる範囲が限定的で、批判も多いものでした。
「令和元年分」では、この状況が改善され、対応範囲が拡大します。
上の表を見るとわかるとおり、スマートフォンを利用した申告で望まれるレベルとしては、充分な範囲となっていることがわかります。
また、昨日お伝えしたとおり、雑所得の申告においては「副業に係る雑所得の⾦額の計算表」という用紙(またはExcel)が用意されるらしい……ということがわかっています。
この計算表を利用すれば、スマホ申告も楽になる可能性があります。
ただし、雑所得を計算するうえでの細かい作業を考えると、パソコンのほうがメリットもありそうです。このあたりは、使っている機器の環境や好みもありそうです。
事業所得や不動産所得については、帳簿付けが必要ということもあり、とりあえず想定外なのでしょう。
【3】納税用QRコードを表示し、コンビニで納付できる
前年の平成30年分では還付のみの対応でしたが、今回の令和元年分では、納税の申告にも対応可能となっています。
これは、スマホでの申告後に、画面表示の納付用QRコードをコンビニに持ち込んで、納付書を出力して現金納付が可能ということを意味します。
引用:「QRコードを利用したコンビニ納付ができます!」(国税庁)
源泉徴収の対象とならない雑所得が多い場合は、所得税が納付となる可能性も想定されます。
この場合、現金で納付するときは、納付書が必要となっていました。納付書のブランクは国税庁ホームページでは公開されておらず、金融機関や税務署でないと入手できません。
こうした手間が削減され、コンビニにQRコードを持ち込むことで、納付書の発行から納付までが可能となります。
国税庁は、窓口対応を減らしたい意向
記事はここで終わってもいいのですが、もう少しスマホ申告に関連した考察をしておきます。
先日、国税庁ホームページで公開された「令和元年分のスマホ申告に関する手引き等」を見ると、国税庁がどのような納税者からスマホ申告の活用を望んでいるのか、その姿勢がうかがえます。
このなかでも目をひくのが、「雑損控除」「副業」でしょう。
2019年を振り返ると、人口が密集する関東南部で、巨大台風の被害がありました。
このため、関東圏の税務署の窓口では、これからの確定申告期で雑損控除の相談対応に追われることに戦々恐々としている……という話も耳にします。
手引き記入例の「スマートフォンで、年末調整済みの給与所得者が、雑損控除を申告する場合の入力例(ID・パスワード方式)」を見ると、「被災した住宅・家財等の損失額の計算書の記載例」が最初に表示され、そのあとにスマホ申告での方法が解説されています。
なんとか少しでも窓口対応を軽減したいという、国税庁の願いが反映されているように感じます。
副業等の申告については、申告漏れが多数発生していると国税庁は考えているようです。
スマホ申告で「副業等」という手引きがあるのは、確定申告の心理的なハードルを下げることで、きちんと申告してほしいという意向があるのでしょう。
まとめ
2020年1月から始まる、令和元年分の確定申告のうち、スマホ専用画面を利用できる「スマホ申告」についての改善状況を確認しました。
e-Taxの利用でマイナンバーカード方式が可能になることや、納税の申告も可能となることで、スマートフォンに求められるレベルとしては遜色のないものになりそうです。