国税庁ホームページにおける掲載事例について、「突然消える」という問題があることを懸念しています。この記事では、過去に掲載されていたQ&Aのうち、「ホームページの制作費用について」という内容がいつ消えたのかを検証します。
説明のポイント
- 国税庁ホームページに掲載されていたQ&A「ホームページの制作費用について」が消去されたのは、2016年2月から2016年3月のあいだと考えられる
- 更新履歴を積み重ねず、告知なく取扱い事例を消去することは容認されるのか
結論
結論からいうと、「ホームページの制作費用について」というQ&Aが国税庁ホームページから消去されたのは、2016年2月から2016年3月のあいだであると考えられます。
以下に、アーカイブサイトから取得した、消去前と消去後の画面を転載します。
【消去前】(2016年2月時点)
【消去後】(2016年3月時点)
過去に掲載されていたQ&A「ホームページの制作費用について」を閲覧したい場合は、国立国会図書館のWEBアーカイブにて見ることができます。
→直接リンク:「No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数(ホームページの制作費用について)」(国立国会図書館WEBアーカイブ、2016年2月)
国税庁ホームページで「事例が突然消える」問題
当ブログでは、国税庁ホームページの運用方法に一定の懸念があると考えています。
納税者に7年間の取引記録を残すように要請しつつも、その一方でホームページの更新履歴を積み上げずに消去できてしまう点は、信頼性の面から問題があると考えています。
ホームページのような電子媒体は、これまでの情報を上書きしてしまえば、過去の情報は閲覧できません。
とくに、これまで示していた取扱い事例が突然消えるという対応は、納税者に混乱を招きかねない一方的な行為といえます。
ホームページで取扱い事例が閲覧できなくなったのはいつ?
なぜこのような指摘をするかというと、実際にそのような事例が発生しているからです。
一例として、国税庁ホームページで過去に掲載されていた「ホームページの制作費用について」という内容は、現在では閲覧することができません。
先に結論で示したとおり、掲載はいつ消されたかをホームページアーカイブで検証したところ、「2016年2月から2016年3月」のあいだである可能性が高いことがわかりました。
なぜ、この事例は消去されたのか?
なぜ、この事例の掲載が消去されたのか、その理由は当然ながら明らかにされていません。国税担当のメディアでも、おそらく追究していないものと考えます。
このQ&A「ホームページの制作費用について」が消去されたことについては、多数の税理士がすでに言及しています。
そのなかでも興味深い指摘として、大手企業における税務調査と比較した税理士の方がいらっしゃいました。(参考:落合会計事務所メールマガジン「ホームページ制作費用、税務の取扱い(2017年2月27日)」)
以下に、どのような話かを説明します。
まず、国税庁で示されていたQ&Aでは、ホームページの制作費用は支出時損金(「損金」とはいわゆる「経費」のこと)になる可能性が示されていました。Q&Aの一部を転載します。
通常、ホームページは企業や新製品のPRのために制作されるものであり、その内容は頻繁に更新されるため、開設の際の制作費用の支出の効果が1年以上には及ばないと考えられますので、ホームページの制作費用は、原則として、その支出時の損金として取り扱うのが相当であると考えられます。
しかし、ある大手企業の税務調査では、この「支出時損金」の取扱いが認められず、修正申告を迫られたということです。(参考:「朝日新聞」2017年2月25日)
ちなみに、このQ&Aの取扱いは、ホームページ制作や運営の実態を正しく認識していないのでは、という指摘も多かったことはよくご存じのとおりです。
この大手企業の場合は、制作費用にアニメーションを含んでいたということで、内容に特殊性もありそうです。
この税務調査がいつ頃から始まったのかはわかりませんが、修正対象期間は「2013年12月期~2014年12月期」と報道されており、修正申告したという報道(税務調査の終了時点と思われる)は「2017年2月」です。
一方、Q&A「ホームページの制作費用について」が国税庁ホームページから閲覧できなくなったのは、2016年2月~2016年3月頃と考えられます。
この税務調査と、ホームページ上の取扱い事例の消去を直接関連付けるには、時期的に少し離れている気もしますが、どうでしょうか。
まとめ
かつて国税庁ホームページに掲載されていたQ&A「ホームページの制作費用について」という内容が、いつの間にか消えていた点について追究する記事でした。
国税庁ホームページに掲載される取扱い事例は、あくまで一般的な事例での回答という前置きがなされているのが通常です。
税務調査の指摘事項とQ&Aの取扱いが違っていたことの批判は、この記事の本旨ではありません。
この記事が指摘したいのは、国税庁のような行政側が取扱事例を電子媒体で掲出している場合に、電子媒体であるとすぐに上書きできてしまい、過去の履歴が残らないということです。
そして、その事例を告知なく消すことは、過去の情報を参照した納税者からの信頼性にどう影響するか、ということです。