納税証明書の実務が微妙に変わる【1】 電子納税証明書が印刷OKに?

令和2年度税制改正で措置された税務手続の改善で、納税証明書に関するものが見られます。この点、先日公表された財務省「令和2年度税制改正の解説(暫定版)」でその詳細がわかりましたので、この記事で整理しておきます。

説明のポイント

  • 2021年7月以降、電子納税証明書が印刷に対応
  • これまで郵送請求していた会社は、電子納税証明書の請求に切り替えると思われる(e-Taxで請求可能。電子証明書が必要)
スポンサーリンク

 

電子納税証明書というマイナーな存在

世間的に「納税証明書」といえば、税務署の窓口に行って紙で交付されるのが常識とされています。

ところで納税証明書については、あまり知られていないものの、電子ファイル形式の納税証明書もあります。これを「電子納税証明書」といいます。

この電子納税証明書がほとんど知られていないのは、納税証明書の提出を受ける側(自治体や金融機関など)が、紙ベースの書類提出に限定しているからです。

そして、電子納税証明書が活躍しそうな電子申請もほとんど存在せず、あいかわらずも書面提出ばかりなので、納税証明書が紙なのも当たり前……という問題があるためでした。(コロナへの対応により強制的に改善されつつありますが)

ところでこのブログが、なぜ電子納税証明書に詳しいのかというと、2018年12月に電子納税証明書の実態を分析した記事を書いたからです。

国税の納税証明書といえば、「紙」で交付を受けることがほとんどでしょう。この納税証明書は、電子ファイル...
電子納税証明書(納税証明書の電子ファイル)の利用実態について検討する記事です。 この記事は前後...

マニアックすぎて誰も見向きもしないテーマですが、納税証明書の発行枚数は、年間140万件とされており、どの会社でも発行申請をすることは度々あることでしょう。

電子納税証明書が印刷OKに!

そんなマイナーな電子納税証明書ですが、改正によって実務が微妙に変わるかもしれません。令和2年度の税制改正において、納税証明書に関する内容が見られました。

内容を理解しやすいように、順を追って解説します。

まず、「電子納税証明書」が微妙だったのは、印刷した場合には、納税証明書としては利用できないという難点があったためです。

XML形式の電子納税証明書に、税務署が発行したという真正性の証明として”税務署長の電子署名”が付与されます。しかし、書面に印刷してしまうと、この電子署名を確認することができません。

電子申請の普及を見越して用意された「電子ファイルの納税証明書」であるため、印刷による利用はもともと想定外だった、という事情もあるでしょう。

そして、当初の想定とは異なり、「書面に限る」という古い形式の申請が継続しているために、先進的な電子納税証明書はほとんど使われないままだった……という実態がありました。

こうした問題に一石を投じそうな改正が、実現する運びとなりました。

 

スポンサーリンク

 

財務省の税制改正の解説から、内容を整理してみます。

  • 電子納税証明書に電子署名ではなく、QRコードを付すことができるようになった
  • 電子納税証明書を書面に印刷した場合でも、国税庁ホームページのシステムでQRコードの真正性を確認できる
  • 複数枚の印刷も可能

これを一言でいえば、「電子納税証明書が印刷OKになる」ということです。

これまでの方式では、電子署名では印刷すると署名(真正性)を確認できません。この署名がQRコードで代替されれば、そのQRコードをもとに、証明書の真正性を確認することができます。

もちろん、印刷するだけでなく、電子申請のために電子納税証明書という用途を考えれば、電子申請・書面申請の両方に対応できるハイブリッドな形式であるといえます。

もしかすると電子署名の方式も存置され、電子申請用は電子署名付き、書面印刷用はQRコード付きという2つの区分になる可能性もあります。現時点では不明です。

実務はどう変わる?

この改正が反映されるのは、令和3年7月1日以降の請求とされています。改正後の紙と電子の納税証明書を比較してみます。

紙の納税証明書

  • 税務署の窓口、e-Taxのどちらでも請求できる(郵送依頼はe-Tax経由で電子証明書が必要)
  • 請求枚数に応じて手数料がかかる
  • 納税証明書をスキャンした場合、真正性は確保されない(QRコードなし)

電子納税証明書

  • e-Taxで請求する(請求時に電子証明書が必要)
  • 複数のファイルにコピーしたり、複数枚を印刷する場合でも、1回分の手数料でよい
  • 電子ファイルとしても、紙に印刷しても真正性を確保できる(書面・電子申請に両対応)
  • 保管コストなし
  • 外出不要
  • 郵送請求よりも、受取までの所要時間が早まる可能性あり

これらを整理してみると、電子納税証明書が請求できるのは、会社がすでにe-Taxを利用しており、なおかつ、e-Taxに利用できる電子証明書(社長のマイナンバーカードでもよい)を所有している場合です。

これまで紙の納税証明書を郵送請求していた会社では、スピード対応が期待できることから、電子納税証明書の請求に切り替えることが多くなるかもしれません。

これに比べ、もともと納税証明書を税務署に取りに行っていたような会社では、e-Taxの利用状況も、かんばしくないと思われます。

この場合、e-Taxによる納税証明書の請求は想定外といえますから、電子納税証明書の利用が改善されたとしても影響はなく、いままでどおり税務署の窓口に行くことでしょう。

(この点、税理士による請求代行により改善できないか? という視点がありますが、次回の投稿で検証します)

まとめ

これまで日陰者の存在だった「電子納税証明書」ですが、税制改正により、利用促進が見込まれる形式へ変更されることがわかりました。

具体的には、税務署長の電子署名から、QRコード付きに変更されることで、電子納税証明書を印刷した場合でも真正性の確認が可能になるというものです。

電子納税証明書の欠点の一つは、印刷ができないというものでしたが、これにより改善が見込まれます。

しかし、電子納税証明書の請求にはe-Taxを経由する必要があり、会社自身でe-Taxを利用し、なおかつ電子証明書も用意する必要があります。

参照法令等