電子帳簿保存法、承認大幅増の「起点」は国税庁の周知依頼か?

前回の投稿で、平成30年度における電子帳簿保存法の承認件数が大幅に増加しているものの、その理由は不明であると述べました。

理由はやはり不明なのですが、この承認申請を誘発した「遠因」に思い当たりましたので、整理しておきます。

説明のポイント

  • 2016年末~2017年前半、「国税関係帳簿書類の電子保存に関する周知の依頼について」という文書が国税庁から関係団体に送付されている
  • 電帳法の申請が急増したのは、平成30年度(2018年7月~2019年6月)から。この周知依頼が遠因か?
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前回の投稿

前回の投稿で、電子帳簿保存法の承認件数が平成30年度(事務年度)において急増しているものの、その理由は不明であると述べました。

出典国税庁 統計情報を筆者加工(「一貫してコンピュータで作成」の件数は、全体の承認件数からスキャナ保存の承認件数を除いた数値。「年度」は事務年度:7/1~翌年6/30)

その後も理由を考えていたところ、その「遠因」らしいものに思い当たりましたので、この記事で述べておきます。

なお、これはあくまで筆者の推測であることにご留意ください。

「国税関係帳簿書類の電子保存に関する周知の依頼について」という文書

2016年末から2017年前半ごろ、いくつかの業界団体のホームページに、国税庁名義による「国税関係帳簿書類の電子保存に関する周知の依頼について」という文書が掲載されました。

すこし探してみましたが、一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会のホームページで、この文書をいまでも読むことができます( 国税関係書類の電子保存に関する注意事項 [2017. 2. 27]付を参照)。

その周知依頼の内容をかいつまむと、以下のとおりです。

 

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  • クラウド会計のような手軽な会計ソフトが普及しつつあるとの報道がある
  • 帳簿の電子保存は、電帳法の要件を満たしたシステムで利用できる
  • 電帳法の要件を満たさない会計ソフトが普及した場合、利用者が誤解し、承認がないままに紙で保存せずに電子データのままで保存する納税者が増える恐れがある。これは青色申告の承認取消しの要因となりえる
  • 会計ソフトの今後の普及にも悪影響が生じるため、電帳法の要件を満たしていない会計ソフトは、その旨を表示してほしい。また、帳簿等の書面印刷が必要なことを注意喚起してほしい

この文書を読むと、かなり厳しいことが書かれていることがわかります。ターゲットとなっているのは、2016年~2017年当時、爆発的に普及しつつあった新興のクラウド会計ソフトです。

会計ソフトで作成された帳簿は、電子データがもとの状態です。このデータで作成した帳簿は、あらかじめ税務署長からの承認がなければ、印刷して保存するのが原則のルールです。これは、周知依頼に書かれているとおりです。

ところで、この周知依頼が国税庁から出たのは、2016年末~2017年前半です。

そして前回の記事でお伝えしたとおり、電子帳簿保存法(自己で一貫してコンピュータで作成した場合)の承認件数が増加したのは、平成30年度(事務年度ベースなので、2018年7月~2019年6月)でした。

この周知依頼が出たあと、会計ソフトをサポートする団体(?)が対応を検討し、その後に電子帳簿保存法の承認申請の対応を進めた……と考えると、時期的に近いと考えられますが、どうでしょうか。

周知依頼は、JIIMAの認証制度の創設にも影響した?

筆者が2017年当時、この周知依頼の文書を読んだときは、さほど意識はしませんでしたが、改めて読んでみると気になった点があります。

それは、「電子帳簿保存法の要件を満たさない会計ソフトは、その旨を表示してほしい」という部分です。

……なかなかの無茶ぶりですが、国税庁が帳簿保存の状況にそれだけ憂慮していた様子もうかがえます。

新興のクラウド会計ソフトの知名度が爆発的に高まり、世間的に話題となっていた状況も影響していたのでしょう。

その後、電子帳簿保存法に非対応の会計ソフトで、実際に「当会計ソフトは電帳法に非対応です」などと表示されたことは、私の知る限りで記憶にありません。

そうなると、「電帳法には対応していません」とメーカーに表示してもらうことが難しいのであれば、対応している会計ソフトの一覧表を作ってしまえばいい!

……ということで創設されたのが、令和元年度税制改正におけるJIIMAの認証制度と考えれば、流れとして自然ではないでしょうか。

この点、JIIMAの「電子帳簿ソフト法的要件認証制度」における「はじめに」の解説でも、

一方で、2016年に国税庁から『電子保存に関する周知依頼』があり、電子帳簿保存法の要件を満たさない「会計ソフト」の利用者が、誤って帳簿を電子保存することがないよう周知することをJIIMAに依頼するものでした。

と触れられているとおりですから、あながち筆者の見当違いではないでしょう。

まとめ

前回の投稿を書いたあと、ふと思い出した内容に電子帳簿保存法の承認件数の大幅増の「遠因」があるように感じましたので、内容を述べてみました。

念を押しておきますが、ここで書いた内容は筆者の想像です。資料と結果をつなぎ合わせただけです。

しかし、原因がなければ結果は生まれません。国税庁が出した周知依頼は、電子帳簿保存法の承認件数が突如として増加したきっかけであると考えてもよさそうです。

なお、昨日税制調査会で公表された資料を読んだところ、令和元年度における電子帳簿保存法の承認件数は、さらに大幅に増えています。

国税庁の統計の発表よりも前に、この税制調査会の資料で令和元年度の承認件数がわかりましたので、次回の投稿でフォローします。