前回の投稿で、法人がネットバンキングを利用しない理由のひとつに「利用コスト」があるという調査結果を紹介しました。
では、実際にそのコストはどれぐらいかかるのか。その点を調査した回答が、中小企業庁の委託調査に見られますので、この記事で紹介しておきます。
説明のポイント
- メインバンクの銀行サービス契約料(ネットバンキング等)の月額負担を尋ねた調査
- 全体の75%が「5,400円以下」という回答
銀行の法人サービスの利用料
本題から述べますと、法人が銀行サービスの月額契約料について回答したものが、中小企業庁の委託調査に見られます。
回答を抜粋します。
出典:「決済事務の事務量等に関する実態調査 最終集計報告書」問24(帝国データバンク調査、中小企業庁委託、2016年)
この調査は、「メインバンクの銀行サービスの契約料」について尋ねたものです。
右側の「上位10回答」を見ると、回答のほとんどが2,000円~5,400円の範囲であることがわかります。
一方、左側の回答は階層別に区分されていますが、やはり「1,000円~5,000円」「5,000~10,000円」が大半です。
視覚的にわかりづらいので、整理してみます。
0円~5,000円未満の回答数に、5,000円と5,400円という回答数を加えると、全4,883件のうちの3,681件となります。
つまり、銀行サービス契約料があると回答した中小企業のうち、およそ75%が5,400円以下であると整理できます。
(※5,001円~5,399円の回答がある場合は、把握できないため5,400円超に含まれている。調査時は消費税率が8%だったことに留意)
つまり、大半の中小企業において、メインバンクの銀行サービス契約料は、月額で税抜5,000円以内におさまっているといってよいでしょう。
本当にコストが原因か?
前回の記事で紹介した、freeeの独自調査(2016年)による、法人がインターネットバンキングを利用しない理由について尋ねた回答を再掲します。
これによると、最大の理由は「利用するのに手数料がかかるため」とされていました。
しかし、前述のとおり、法人のネットバンキングの利用料は、実際に利用している中小企業の大半が「月額5,400円以内」と回答しています。
そして、上位10の回答を見ると、2,000円~3,000円と回答した企業が多いこともわかります。
金銭感覚は会社それぞれですが、本当にコストが理由なのかという点は、どうも怪しい印象を持たざるをえません。
その怪しい部分をハッキリといえば、単に選びやすい回答だから、体のいい口実として「コストが理由」と回答しただけでは? ということです。
3,000円が生み出すコストパフォーマンスを考えれば、これよりももっと微妙な月額コストも他にあるはずです。
あくまで筆者の想像にすぎませんが、実態と回答には乖離があり、回答した「会社のメンツ」も想像する必要があるように感じます。
アンケートに回答する会社は「好意的」なグループといえますから、アンケート未回答を含む全体の割合に置き直してみると、一般的な実態はアンケート調査よりも微妙な可能性もあります。
まとめ
前回の投稿で、法人がネットバンキングの利用しない理由は「コスト負担」という調査結果がありましたので、その実際のコスト負担を調査した結果を紹介しました。
調査結果としては、おおむね5,400円以下で、2,000~3,000円の会社も多いということになります。
経理の効率化や、会計業務の効率化に有用なツールとして、金融機関のインターネットバンキングサービスが挙げられます。
しかし、法人におけるネットバンキングの利用率は、どうも頭打ちになっているのでは……という感覚を筆者は覚えています。
当ブログではネットバンキングの利用率に関心を持っていますが、「なぜ利用しないのか」という回答の理由は、実際のところ「よくわからない”何か”」が横たわっているようにも感じられます。
法人のネットバンキングの利用を考えるうえで「やり玉」にあがるのは、大抵はコスト負担とされています。しかし、それが真の原因といえるのかは、どうも釈然としないものがあります。