「年調ソフト→給与計算ソフト」データ取込みはどうなっているのか

「年末調整手続の電子化」において、データ提出をする場合は、給与計算ソフト側でもインポートに対応している必要があります。

そのインポートの処理は具体的にどうなっているのか? ソフトのマニュアルで確認してみます。

説明のポイント

  • 年調ソフト→給与計算ソフト ソフトどうしの対応は「ID」が基準
  • 2020年では給与計算ソフト側がインポート未対応だった場合でも、年調ソフトでは給与計算ソフトに基づく従業員IDを指定しておいたほうがよい
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年調ソフトはどれぐらい使われるか?

「年末調整手続の電子化」により、2020年10月に配布が開始された年調ソフト。

年末調整は通常、会社内で完結する税務であるため、この電子化がどれくらい会社の事務に貢献したかを集計することは難しいでしょう。

2020年は電子化の初年度であることから、混乱などを警戒して対応を見送った会社もあるかもしれません。

年調ソフトから給与計算ソフトまでの流れのしくみをうまく整えることができれば、事務負担を大きく減らせる可能性があります。

では、実際に給与計算ソフト側ではどのような挙動をしているのでしょうか? 今後の税務に活かすため、具体的なマニュアルをもとに確認してみたいと考えます。

こうして記録を残すことで、2021年以降に導入する場合にも役立つことでしょう。

JDLの給与計算ソフトではどうなっているか

以下は、筆者の手もとにあるJDL製の給与計算ソフトのマニュアルをもとに参照した情報です。

IDは、給与計算ソフトの社員コードで対応させる

年調ソフトと給与計算ソフトのあいだのリンクでもっとも気になるのが、どのようにデータをマッチさせて取り込むのか? という点です。

この点ですが、年調ソフトで指定するIDは、給与計算ソフトにおける「社員番号」と一致させておく必要があるとのことです。

年調ソフトのIDは、会社が指定しなければ、従業員は自由に設定することもありうるため、事前のアナウンスは必須でしょう。(※年調ソフトの登録時の説明では、IDは従業員が会社に確認することを推奨している)

zipファイルのまま給与計算ソフトに取り込める

年調データを従業員から受け取って、どのように給与計算ソフトにインポートするのかという点も興味深いところです。

この点、なるほどと感じたのは、従業員から受け取ったzipファイルのまま給与計算ソフトにインポートできるという点です。

筆者は、手作業でzipファイルを解凍してから、XMLファイルをインポートするのかと想像していましたが、そうではないようです。

このあたりは利用する給与計算ソフトによって対応が異なる可能性もあります。

JDL仕様では、複数のzipファイルをドラッグアンドドロップすると、パスワードの入力画面が表示され、一括解凍されてインポートされるようです。

パスワードも会社側で指定し、リスト化しておく

zipファイルを解凍するためには、パスワードの把握が必要です。

この点、パスワードは、従業員が使ったものを会社側でも把握しておく必要があります。つまり、給与計算ソフトにインポートするうえでは、IDもパスワードも、事前に会社が指定しておく必要があるということです。

多数の従業員がいる場合は、これらをリスト化しておくとよいでしょう。

zipファイルが、どの従業員かをわかりやすくするため、zipファイルの名前はIDであることが望ましいといえます。

電子署名をしても、改ざん検出には対応していないことがある

JDLの給与計算ソフトでは、電子署名をした場合のXMLファイルについて、改ざんの検出は現時点でできないとのことです。

これまで、年末調整で改ざんというのはあまり考えづらかったのですが、年末調整書類のチェックでは念のために配慮しておく必要があるでしょう。

PDFファイルも一緒に受け取ることが推奨されている

当然ですが、XMLファイルでは年末調整書類そのものは確認しづらいので、年調ソフトから同時に出力されるPDFも一緒に渡してもらうことが推奨されています。

また、インポートする前には、このPDFで内容のチェックが推奨されています。

年調ソフトを使えば、控除額の計算について検算は不要とされています。それでも給与計算ソフトにインポートしようとしても、すべてが全自動になるというわけではないことは要注意です。

例えば、紙の控除証明書により手作業で入力された部分もあるため、項目別の事前チェックは必要といえます。

マイナンバーは取り込まれないので、別途提出の必要あり

JDLの給与計算ソフトでは、マイナンバーの情報は給与計算ソフトには取り込まれないということです。

姓名とフリガナは、間をスペースで区切ったほうがよい

データベースの処理でおなじみの問題が、姓と名のあいだにスペースがあるかどうかという点です。

この点、JDLでは、姓名のあいだにスペースがない場合は、先頭5文字が姓と判定されるそうです。

細かいですが、従業員の入力ルールとして、姓名のあいだにスペースを空けるように通知したほうがいいかもしれません。

まとめ

JDL「年末調整システム」「JDL IBEX給与net2年末調整」のマニュアルから、年調ソフトから出力したデータをインポートするまでの注意点をいくつか紹介しました。

2021年以降に年調ソフトを導入しようとする場合も、給与計算ソフトとの対応関係などで役立つ内容があったものと考えます。

ここで紹介したのはJDL製のものですので、具体的な対応は、自社で利用している給与計算ソフトのマニュアルで確認されてください。

そろそろ、電子帳簿保存法など別のテーマでブログを書きたいところだったのですが、年末調整について書けば書くほど「これってどういうことなんだろう」という悩みが増えてきて、際限がなくなっています。

「年末調整手続の電子化」について研究している税理士も、さほど多くはないと思いますので、お時間のある方はもう少しお付き合いください。

謝辞

年調ソフトがリリースされた初年度に、データのインポートに対応させたJDLの開発陣とマニュアル作成担当の方に敬意を表します。

普段、会計事務所は当たり前のように会計ソフトや税務ソフトを使っていますが、裏方でこれを支える開発陣の方々には、感謝するしかありません。

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