「年末調整手続の電子化」対応アドバイス【2】IDを事前に指定しておく

前回に引き続き、「年末調整手続の電子化」について、対応を事前に検討するためのアドバイス集を提供します。

説明のポイント

  • 従業員による「年末調整ソフト」の初回入力では「ID・パスワード」の設定が必要となる
  • zipファイルによるデータ提出を受ける場合は、指定済みのID・パスワードを利用してもらう(税務上の要件)
  • 書面印刷におけるIDは自由だが、書面にもID欄が表示されるため、会社で事前指定しておくことが望ましい
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【2】利用IDは事前に指定しておくことが望ましい

「年末調整ソフト」の利用にあたっては、まず従業員がソフトをインストールし、自分の情報を初期登録します。

そのときに「IDとパスワード」も登録が必要です。

このIDとパスワードは、別に適当なものを入力しても、そのまま登録は可能です。

年末調整ソフトはスタンドアロンで動作していますので、ソフト自身には、そのIDが本当に正しいかを検証する機能はありません。

給与担当者にとっては、事前の周知が手間になることから、「会社でIDを指定しなくても、べつに従業員が任意で決めればいいのでは?」という疑問も浮かぶところです。

この点については、やはり会社が事前指定することが望ましいといえます。以下、ID指定の必要性をお伝えしていきます。

年末調整ソフトに「IDは給与の支払者に確認してください」と書いてある

会社が従業員に対してIDを何も指定しなかった場合、従業員は、このIDの設定欄の入力で手が止まることでしょう。

なぜかというと、年末調整ソフトの説明欄に「IDについては社員番号などを利用するケースがありますので、給与の支払者に確認してください」と書いてあるからです。

前述のとおり、別に適当なIDを入力しても年末調整ソフトは利用可能です。

しかし、そんなことを知らない従業員の大多数は、「IDは何を入力すればいいか?」と給与担当者に問い合わせをしてくることでしょう。

よって、負担の事前に軽減するためには、何らかのIDを指定し、周知しておくことが望ましいといえます。

なぜ年末調整ソフトには「社員番号を利用する場合がある」と書いてあるのか

先ほども述べたとおり、「年末調整ソフト」の説明には「社員番号を利用する場合がある」と書かれています。この意味について考えてみましょう。

まず、年末調整ソフトの説明、パンフレット、FAQをひととおり読んでみるとわかることですが、このソフトを利用して作成する年末調整書類の提出方法は、「データ提出」を目標として想定されています。(「書面提出」については、「できる」という書きぶりになっている。FAQ問5-16参照)

ここでいう「データ提出」とは、従業員が作成した年末調整書類(XMLファイル)を会社に提出することをいいます。

データ提出の場合、電子署名のあるXMLファイルか、ID・パスワードで暗号化されたzipファイルを会社に提出します。(※下画像を例にすると、IDを001とした場合の「001pass.zip」)

 

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また、給与担当者は、この受け取ったzipファイルをパスワードで解凍する必要があります。

データ提出の承認申請をすでに行っていればおわかりでしょうが、これは本人確認措置としての税務上の要件です。

「社員番号などを利用するケースがあります」「給与の支払者に確認してください」という意味について考えると、データ提出の場合において税務上の要件を満たす適切なID登録を促すために案内されていると考えられます。

前述のとおり、別にどんなIDでも年末調整ソフトの利用登録はできますが、データ提出を採用している場合において、従業員が好き勝手なIDを登録することを防ぐ「足止め」的な意味合いがあるのでしょう。

(データ提出でzipファイル受け渡しの場合)IDは申請時に指定したものを周知する

ここからは、実際の対応について整理します。

まず「データ提出」を採用する場合、ID・パスワードは、税務署に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出しているはずですので、この方法に従います。

暗号化されたzipファイルを受け渡しする場合、従業員に対しては、税務署へ申請した方法に応じた「ID・パスワード」をそれぞれ従業員に周知することが必須といえます。

電子署名による場合や、社内LANによるzipファイル受け渡しの場合は、zipファイルの暗号化は必須ではありません。よって、年末調整ソフトそのものにおけるID指定の必要性は薄れています。

しかし、暗号化されていないzipファイルを受け渡す場合でも、ファイル名にIDが付与されることや作業のしやすさを考えますと、やはり社員番号などを指定したほうがよいでしょう。

これ以外の注意点として、インポートする側の給与計算ソフトにおいても、年末調整ソフトにおけるIDと給与計算ソフトにおけるIDを一致させる必要があるかもしれません。給与計算ソフトの解説を確認してください。

(書面提出の場合)IDは任意でよいが、手間削減のため事前指定を

書面提出の場合、ID・パスワードについて税務上の要件は関係ありません。よって、従業員が任意でIDを設定しても問題ありません。

ただし、前述のとおり「給与の支払者に確認してください」などという説明があることから、給与担当者への問い合わせの可能性は高いといえます。

よって、IDやパスワードの設定方法を周知しておくほうが望ましいといえます。

今年は書面提出を採用するが、数年内にデータ提出への移行も視野に入れている場合は、あとでIDを変更するのは手間が生じることから、会社指定の社員番号などにしておくことが望ましいといえます。

また、書面提出の場合であっても、年末調整ソフトから出力・印刷した書類の末尾には、参考情報として提出年月日やIDが記載されます。(下の画像の「001」がID)

もしIDは「なんでもいいんだ」と考えた従業員が、適当に「iloveyou」などとすると、あとで痛々しいことになります(笑)

なお、IDをいったん登録したあとでも、基本情報の変更画面でID・パスワードを変更することは可能です。

まとめ

「年末調整手続の電子化」について、対応を事前に検討するためのアドバイス集を提供しています。

2回目のアドバイスは、年末調整ソフトの利用にあたっては、事前にIDを周知しておいた方がよいという点をお伝えしました。

年末調整ソフトの説明に「社員番号などを利用するケースがあります」「給与の支払者に確認してください」と書いてある以上、従業員は勝手にIDを登録することに、とまどいを感じるはずです。

問い合わせが給与担当者に殺到する恐れもありますので、周知を心がけたほうがよいでしょう。

zipファイルを受け渡しするデータ提出の場合、ID・パスワードの指定は税務上の要件でもあるため、とくに重要といえます。