源泉徴収票の添付不要で生じる影響の検討【1】 持参不要と誤解される可能性

平成31年度税制改正により、2019年4月以後に提出する確定申告書について、給与所得の源泉徴収票が添付不要になりました。この改正で生じる影響を考えます。1回目は、改正の前提をふまえつつ、添付不要が「持参不要」と誤解される懸念を考えます。

説明のポイント

  • 税制改正により、確定申告書に源泉徴収票は添付不要となった
  • なぜこのような改正があったのか、その理由
  • 添付不要が「持参不要」と誤解される懸念と、その対応策
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源泉徴収票は今後、添付不要に

平成31年度税制改正により、給与所得の源泉徴収票は、2019年4月以後に提出する確定申告書において添付不要とされました。

この点は、国税庁ホームページにおける「国税関係手続が簡素化されました」で、すでに周知がはじまっています。

納税者の利便性向上を図る観点から、国税当局が他の添付書類や行政機関間の情報連携等で記載事項の確認を行うことにより、平成31年4月1日以後(※)に提出する以下の申告・届出等については、住民票の写し等の各種書類の添付が不要となりました。

  • 手続名 所得税申告(確定申告書及び修正申告書)
  • 添付不要とする書類 給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票

(上記は一部抜粋)

改正の理由は?

上記の理由を見ると、改正の理由は「納税者の利便性向上を図る観点」とされています。

そのうち公表されるであろう、財務省の税制改正の解説でも、おそらく同様の趣旨で説明されることでしょう。

給与所得の源泉徴収票について考えてみますと、そもそも会社において、それなりの給与をもらっている人については、法定調書(源泉徴収票)の提出義務が会社に課されています。

役員は年収150万円以上、従業員は年収500万円以上で提出対象となりますので、そもそも確定申告書に源泉徴収票を添付させなくても、税務署は「もともと知っている」わけです。

すでにそんな状態であるにもかかわらず、「みんな添付してくださいね」などというのは、効率の観点からもほとんど意味のない制度だったといえるでしょう。

また、紙の源泉徴収票を添付させるのは、昔ながらの紙の申告書がメインだった時代の慣習ということもあるでしょう。

さらにこれ以外の理由としてですが、会社から電子交付された源泉徴収票を自ら印刷しても、なぜか確定申告書に添付できないという「不都合」があるため、その実務上のバグを手当てするものと筆者は考えています。

この点は以前の記事でも触れました。

2018年12月14日に与党から発表された「平成31年度税制改正大綱」より、気になるトピック...

添付不要が「持参不要」と誤解される懸念

長くなりましたが、ここからがようやく本題です。

あまりにも長らく、「確定申告書には源泉徴収票を添付するのが当然」という慣習が続いてきました。

今回の改正はそのような「常識」を覆すものであるため、これが混乱を招く要因になるのではと懸念しています。

国税庁が提供しているリーフレットでも、そのような懸念を感じる記載があります。

どういうことが懸念されるのか?

これがどういうことになるのか? 少し想像してみましょう。

次回(2020年3月申告期限)の確定申告では、これまでどおり、源泉徴収票を問題なく持参することでしょう。そして、その場でいわれるのが

「今回から源泉徴収票は添付不要になりました」

ということです。源泉徴収票は添付せず、持ち帰ってもらうことになります。

そして、その次(2021年3月申告期限)では、前回の申告でいわれた「不要」という言葉の印象だけが強く残っています。

そのことで、源泉徴収票が資料として必要であることも「不要」と解釈してしまうことが懸念されます。

なぜかというと、税務の知識に不慣れなひとにとっては「源泉徴収票は、確定申告書に添付するために持って行く」と考えている可能性があるからです。

一方、税務の知識のあるひとにとっては、「源泉徴収票とは、確定申告書を作成するための資料」という常識であるため、認識にギャップがあります。

「添付不要」と「持参不要」の区別がつきづらいので、「源泉徴収票って、もう要らなくなったんじゃないの?」という混乱をまねくことは必定です。

「源泉徴収票がなければ、確定申告書は作れないじゃんか(苦笑)」と思うかもしれませんが、それは税務の知識があるから、そう理解できるのです。

筆者からの提案

こうした点を考えるに、筆者が提案できる対策ですが、なるべく「添付不要」ということばは使わない方がよいでしょう。

「添付不要」という言葉は、「源泉徴収票はもう今後、必要なくなった」というイメージにつながるからです。

その代わりに提案するのは、「源泉徴収票は、確認用の資料になった」というような言い回しです。

「不要」ということばをなるべく使わないことで誤解を避けつつ、制度の変更も伝えるため、このような言い回しが重要になるでしょう。

丁寧に説明するとすれば、このようになるでしょう。

  • 源泉徴収票は、確認用(記入用)の資料になったこと
  • 添付はしなくてよくなったが、毎年持ってくるのはいままでどおりであること

まとめ

平成31年度税制改正により、給与所得の源泉徴収票が確定申告書に添付不要となった件をお伝えしました。

e-Taxで電子申告をしているひとにとっては、もともと源泉徴収票は提出省略になっているので、このような改正があっても影響はほとんどありません。

しかし、現段階での確定申告におけるe-Tax利用率は50%程度ということもあり、紙の申告書に添付させない改正は意味があるものでしょう。

税制改正による影響で、源泉徴収票の添付不要が「持参不要」に勘違いされる恐れがあります。

このため、この記事では、これを避けるための言い回しとして「源泉徴収票は、確認用の資料になった」という表現を提案しました。

この話の続きもありますので、興味のある方は、以下もご参照ください。

平成31年度税制改正により、2019年4月以後に提出する確定申告書について、給与所得の源泉徴収票が添...
平成31年度税制改正により、2019年4月以後に提出する確定申告書について、給与所得などの源泉徴収票...

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