国税庁は、給与支払報告書と源泉徴収票の電子的提出の一元化について、情報を公表しました。来年(平成29年)1月からの実務が微妙に変わりそうです。
説明のポイント
- 給与データの電子申告が、eLTAXの送信に一元化
- 源泉徴収票データのe-tax送信は不要になる
- 報酬や不動産の使用料等の支払調書がある場合、「追加」としてe-taxで送信
給与データの送信をeLTAXに一元化する話
現在の電子申告のしくみでは、1月における給与データの電子申告を、次のとおり対応しています。
- 必要のある「源泉徴収票」と、これに関する「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」のデータをe-taxで送信
- すべての「給与支払報告書」のデータをeLTAXで送信
この手続きを改善し、eLTAXに一本化し、一括作成・送信できる件が、国税庁より公表されました。
eLTAX公式サイトでも8月に既に告知されていましたが、国税庁がその詳細が明らかにしたものです。
参照:給与・公的年金等の支払報告書及び源泉徴収票のeLTAXでの一括作成・提出(電子的提出の一元化)について(国税庁、2016年10月28日)
どういう意味なのか?
税務署(e-tax)に提出する「源泉徴収票」の内容と、市区町村(eLTAX)に提出する「給与支払報告書」の内容は、もともとは同じものです。
しかし、e-taxとeLTAXの管轄の違いで、別々に電子申告することを求められていました。これらのデータの送信先を一元化して効率化を図る、という話です。
▲「給与・公的年金等の支払報告書及び源泉徴収票のeLTAXでの一括作成・提出(電子的提出の一元化)について」より引用
どんな影響が生じるか?
(1)特に何かを新しく準備する必要はない
これまで、eLTAX対応ソフトを使って給与支払報告書を送信している場合は、税務ソフトウェアのアップデートで自動的に対応すると見込まれます。特に新しく何かを準備する必要はなさそうです。
参考:eLTAX対応ソフトウェア一覧(eLTAX)
(2)源泉徴収票データのe-tax送信が不要になる
源泉徴収票は、給与支払報告書と一元化して送信されるため、個別にe-taxでデータを送信する必要がなくなります。
なお、この取り扱いが始まるのは、平成28年分以降のものについてです。
また、1月31日を提出期限とする「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」も、同時に提出できます。提出されたかどうかは、e-taxのメッセージボックスで確認します。
参考:[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)(国税庁)
(3)報酬や不動産の使用料等の支払調書は、「追加」扱いで送信
給与以外に、報酬や不動産の使用料を払っており、支払調書を提出する場合はどう対応すればいいのでしょうか。
国税庁から「電子的提出の一元化に関するQ&A」が公表されています。このQ5によれば、次のように書かれています。
Q5 電子的提出の一元化により提出する給与所得の源泉徴収票以外にも法定調書を作成する場合、どのようにして「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出すればよいですか。
(答)
給与所得の源泉徴収票以外の法定調書を提出する場合については、e-Taxや書面等、従来と同様の方法により給与所得の源泉徴収票以外の内容を記載した「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」と併せて提出してください。その際、例えば、電子的提出の一元化により給与所得の源泉徴収票を先に提出した場合には、電子的提出の一元化による「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」は「新規」、給与所得の源泉徴収票以外の内容を記載した「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」は「追加」として提出してください。
つまり、報酬や不動産の使用料等の支払調書と、それらの内容をまとめた法定調書合計表は「追加」で提出して対応します。このあたり、実務が微妙に変わりそうです。
▲法定調書合計表の「調書の提出区分」を「追加」にする。
まとめ
給与支払報告書と源泉徴収票のデータ送信を、来年(平成29年)1月からeLTAXに一元化する話をお伝えしました。
この件は、電子申告をeLTAXで実施できる環境がある場合の話です。
- 電子申告ではなく、紙や光ディスクで税務署や市区町村に提出している
- e-taxは利用しているが、eLTAXは利用していない
などの場合は、今回の一元化は適用できません。