電子帳簿保存法の大幅改正を控え、踏まえておきたい税調の議論

まもなく令和3年度税制改正大綱が発表される見通しで、そのなかには電子帳簿保存法の大幅改正が含まれる予定と報じられています。

詳細は大綱が発表されて確認すればいいのでしょうが、その前段階として、政府税調で委員たちが意見された議事録を読んで、方向性を確認してみたいと思います。

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納税環境整備に関する専門家会合 2020年度

第1回目会合

第1回目の会合では、電子帳簿保存法の大幅改正を訴える経済団体として、日本商工会議所と、新経済連盟が発言の席につき、電子帳簿保存法の問題を指摘しました。

その内容については、両団体が提出した資料を読めばわかります。クラウド会計を中心にした記帳制度の促進と、現行のスキャナ保存制度が制約になっている点が注目されます。

第1回目の会合議事録を読んで、そのなかで注目される発言としては、土居委員(P.24~)が経済団体からの意見を受けて整理された見解で、

今日の両団体の御説明をお伺いしていると、電子保存だけで済ませたいと思っている会社にとっては、電子保存だけにしてほしいが、紙保存だけにしてほしいという会社は紙保存だけにするという、そういうアンビバレントな状況が現状として併存しているということなのだと思います。もちろん中心的な改正を行おうとするならば、今後はデジタルの時代なのだから、全員デジタルで保存するという話になるのかもしれませんが、そういうわけにもなかなかいかないというところで、行政側もどう対応すればいいかということで、手をこまねいている。そうすると、両方保存してくださいという話がどうしても出てきてしまっているという、悩ましい状況なのだろうと思いました。

という点に集約されているでしょう。

電子保存を進めたい会社が、制度上は紙保存を中心とした旧来のシステムに引きずられ、制約を受けている……という方向性を整理できるでしょう。

令和3年度税制改正で、承認制度の廃止案が浮上しているそうです。これはつまり、紙とデータのいずれかについて、保存方法は会社が選びやすくなるということです。

また、帳簿データの紙出力による保存不要という案が出ているのも、こうした視点と方向性は一致しているといえそうです。

第2回目会合

第2回目議事録で注目される発言としては、日税連会長の神津委員によるもの(P.23~)があります。

実務家である税理士からの発言ですので、税理士事務所と会社のつきあいにおける実態に注目してコメントを述べています。

 

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税理士事務所に依頼される方のうち、小企業、零細企業については、ほぼ税理士事務所に丸投げです。毎月なり、極端な場合には決算の前に一度、税理士事務所に紙ベースの資料を持ち込まれて、それをマンパワーで集計していく。それもコンピューターで行っているから、全く問題ないのですが、そこにタイムスタンプの費用をかけてまで、電子帳簿保存法を適用するメリットが少ないということだと思います。

何が言いたいかというと、中企業、零細企業も含めまして、請求書のスキャナ保存とか、データ保存を電子で行う際には、やはり税理士事務所に来る前に、企業で自ら行っていただくシステムを導入しないと、電子化は進展しないと思います。

令和3年度税制改正で、一定のクラウド利用の場合は、タイムスタンプ不要の制度が設けられる案が浮上しているようですが、この発言とも方向性は一致しているように感じます。

第4回会合

第4回会合はとりまとめの段階で、議論としてはこれまでのものを引き継いだものになっています。

第4回会合の議事録のうち注目されるのは、田中委員が実業家としての冷静な意見を述べている点(P.15~)です。

 今、ここでは、スキャンをして、そのまま記帳するというお話がずっと例として出されているのですが、企業によっては請求の妥当性をチェックしたり、仕分けをしたりすることが会社にとって大事な業務なので、その作業を必ずしもAIがやってくれるということではないので、その際にどの段階でスキャンするのかということで、今までと違った煩わしさが出てくると思います。全部スキャンした後にチェックをすると、フィードバックしなければならない項目が多いので、そのときはどうするのかということも含めて、そういうことからいえば、企業に合わせたシステムフローを考えて取り入れていくことが大事だろうと思います。
そのときに障害になるのは、スキャンデータにして保存するということが企業にとってメリットがあるかどうか、現実的かどうかということも一つあると思います。企業側にとってどのようにすることが一番スムーズになるのかということの観点から検討していただければいいと思います。要するに改ざんを防ぐためだけにスキャンを入れるということであれば、企業にとっては労力が多くなるわけです。一方で、そうすることで、AIによって仕分けをしなくてもいいというのは、あまり説得力がないと思うので、エビデンスをどう保存するのか、電子化をどのように整備していくのかということについては、一気通貫ではなくて、もう少し検討が必要だと思います。

この点、経済団体からの意見では「スキャナ保存→記帳」という流れが想定されていたわけですが、実務的な問題もあるという指摘で、冷静な意見のように感じました。

まとめ

政府税調「納税環境整備に関する専門家会合」における議論から、電子帳簿保存法に関する注目発言を個人的に抜粋してみました。

嫌な言い方ですが、財務省のお膳立てがあっての政府税調の議論でしょうから、もともと電子帳簿保存法の大幅改正については、財務省内部でも方向性は決まっていたのでしょう。

令和3年度税制改正における電子帳簿保存法の大幅改正は、承認制度の廃止により、紙を原則としていた方向性を変更し、「紙も電子も、どちらでも可能」という位置づけに変わるものと推測されます。

従来の電子帳簿保存法は、承認が必要な制度で、「きちんと経理サイクルを維持できている会社だけに認められる恩典」ともいえるものでした。

それが、第1回目の会合で土居委員が発言したように、「電子保存をできる会社にとっては、紙保存がある種ペナルティーになっている」という見方に変化しつつあり、今回の改正では、そのような制約がなくなる……という方向性で理解すればよいのでしょう。