震災対策として、モバイルバッテリーを常備しておくことを提案します。なるべく大容量のものがよいでしょう。
被災後に必要なものはモバイルバッテリー
首都圏からの視点としては、10年前の東日本大震災で大変だった状況といえば、帰宅困難者が続出したことでしょう。これは、公共交通が麻痺したためです。
また、電話がつながりにくい状況が発生し、家族との連絡に不安が生じたとされています。このためか、遠方の自宅にも関わらず、都心から徒歩で帰宅する人が続出したと報じられています。
大震災の10年前と、現在の2021年で異なることといえば、スマートフォンの普及状況でしょう。
ホームセンターを経営するDCMホールディングスが実施した被災者へのアンケート調査「2018年自然災害被災者に聞いた、防災についてのアンケート」を読んでみると、被災後にもっとも必要と感じられたものは、モバイルバッテリーということです。
これはビジネス向けの調査ではありませんが、非常に参考になる意見でしょう。
充電に困る人が続出する
ひとたび大震災が起これば、遠方の家族と連絡がとりたくても、困難な状況が予想されます。
長期間の停電や、電話網もパンクする恐れがあります。大量のデータ送信が一斉に起こることで、アプリを管理するサーバーが停止することも予想されます。
つまり、安否確認をすぐに行うことは難しい、ということが予想されるわけです。このことを考えれば、状況が落ち着くまでの数日間は、スマホを稼働させておきたいところです。
スマホの充電に関係なく、「別にすぐに帰宅すればいいのでは?」と考える人もいるでしょう。
しかし東京都は、大震災の直後には職場からすぐに帰宅せず、その場で待機する「一斉帰宅の抑制」を呼びかけています。(参考:東京消防庁「職場の地震対策」)
都心からすぐに帰宅してはいけない
大震災の後に、職場に留まるように呼びかけられていることは、命を守るために重要な話です。
東日本大震災では首都圏で大規模な火災は発生せず、帰宅までに、帰宅者や沿道の住民どうしで助け合ったなどの「美談」が語られています。確かにこれは幸運なことでした。
しかし、こうした過去の「成功体験」は、次の災害ではあてになりません。
また、この「美談」の裏側では、多数の徒歩帰宅者が歩道を無視して幹線道路を横断・通行したため、渋滞を引き起こし、緊急車両も足止めさせられたとされていることを、忘れてはいけないでしょう。
また、都心の環七沿いは、木造家屋が多いことから、火災の危険が高いとされています。
阪神大震災では、震災後にすぐ火災が起こったのではなく、停電から回復したあとの「通電」が原因で火災が起こったとされています。つまり、火災は震災直後ではなく、時間差で起こる可能性があります。
つまり、震災後に家族に連絡がとれないからといって、急ぎ帰宅を開始することは、かなり危険な行為といえます。
都心にいる場合は、郊外の自宅に帰るのではなく、都心にそのまま待機する方が安全といえます。
避難所では充電のために行列ができる
話をスマホの電源に戻します。
近年の被災にかかる報道を見ると、「避難所ではスマホの充電のために行列ができている」という話が目につきます。
直近では、新型コロナウイルスの影響もありますので、避難所で充電のために行列をつくるだけでも過密な状況となりえます。過去の被災状況よりも過酷な環境になることは、間違いありません。
これらを想定すれば、モバイルバッテリーを備え持っておくことは、食料を確保するのと同じくらいに重要性の高い「自衛」であることがわかります。
どのバッテリーを買うか?
スマホを数日間維持させることを考えれば、容量の少ないモバイルバッテリーでは、充電が足りない可能性もあります。
他人との助け合いも考えれば、他の人にも充電させてあげるぐらいの余裕や、気遣いも必要かもしれません。
最低でも数回の満充電ができるバッテリーを、仕事用の机に入れておくべきでしょう。震災直後の長期間の停電や、不安定な電気供給による計画停電に備え、自宅にバッテリーを備え置くことも必要かもしれません。
まとめ
大震災の直後では、停電が長く続くことも想定されます。そうなれば、事務所に留まることを余儀なくされた従業員は、スマホの充電不足に直面するはずです。
過去の災害対応策では、「食料」「水」「懐中電灯」「毛布」などが重要視されてきましたが、これに加えてスマホと充電確保の問題も考える必要があるのでしょう。
余談ですが、バッテリーを雑に扱うと、火災の恐れがあります。適切なものを購入し、適切な充電、正しい廃棄が必要であると呼びかけられています。(東京消防庁「リチウムイオン電池からの火災に注意しよう」)
おことわり:
この記事の執筆者は防災アドバイザーではありません。ひとりのビジネスパーソンの視点から、防災への準備を考えたものです。