電子インボイスの予習【2】国際規格Peppol(ペポル)とは?

2023年10月からスタート予定の「インボイス制度」。この制度で目新しいのは、インボイスの範囲に「電子インボイス」が含まれていることです。

そこで、電子インボイスについて現状わかっていることを整理し、今後増えてくるであろう情報を理解しやすくする記事を書いておきます。

前回の記事は、消費税法における電子インボイスの定義を確認し、電子インボイスには標準仕様などに沿って構造化されているものと、そうではないものがあることを確認しました。

今回の記事では、電子インボイス推進協議会が策定・公開する日本標準仕様と、そのなかで導入される国際規格「Peppol(ペポル)」がどのようなものかを確認します。

説明のポイント

  • 国際規格Peppolのフレームワークの紹介
  • 電子インボイスを利用すれば、請求書の情報をスムーズにやりとりできる
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国際規格Peppolとは?

電子インボイス推進協議会が2020年12月に発表したプレスリリースを読むと、今後発表する日本標準仕様は、国際規格Peppol(ペポル)に準拠すると書かれています。

この国際規格Peppol(ペポル)とは、どのようなものでしょうか? プレスリリースから該当する部分を引用します。

「Peppol」は、電子インボイスなどの電子文書をネットワーク上で授受するための国際的な標準規格です。欧州各国をはじめ、シンガポール、オーストラリアなどで採用されており、「Peppol」に基づく電子インボイスの国際的な利用が進んでいます。

引用したとおりPeppolは「電子文書をネットワーク上で授受するための国際的な標準規格」とのことです。

また、ヨーロッパの各国や、シンガポール、オーストラリアで用いられていることがわかります。

Peppolの情報はどこで入手できる?

Peppolについては、公式サイト(英語)を参照すれば、くわしい情報を得ることができます。

ただし、筆者が読んだところですと、公式サイトはちょっと難しい印象もありました。

それよりも、アジアで初めてPeppolを導入したというシンガポールの情報通信メディア開発庁(IMDA)に書かれている情報のほうが、何ができるのかをシンプルに理解できました。

そこで、以下に、シンガポール情報通信メディア開発庁の公式サイトに書かれているものを、日本語で読みやすいように意訳したものを載せておきます。

Peppolフレームワークとは(意訳)

既存の処理では、ほとんどの会社(売り手)が、会計/ERPシステムからデータを抽出し、視覚的に読める形式である紙や電子メールにて、請求書を発行しています。

そして、発行を受けた側の会社(買い手)では、その請求書にある情報をシステムに入力したり、紙をスキャンするなど、手作業が求められます。

これらの作業は、時間がかかるうえに、エラーも発生しやすくなります。

引用シンガポール情報通信メディア開発庁(IMDA)

そこで、標準仕様であるPeppolフレームワークを採用した場合では、自動的にひとつの財務システムから他のシステムに請求書(電子インボイス)を直接送信できます。

これにより、請求書の確認と支払いの追跡にかかる時間が大幅に短縮され、請求書の処理から支払いまでのプロセスが高速化されます。

Peppolネットワークでは、BIS(Business Interoperability Specification)Billing 3.0UBLと呼ばれる、一般的なXML形式を使用して請求書等の情報が交換されます。

この標準仕様により、ネットワークを利用する会社は、それぞれ自由な会計ソフトやERPプラットフォームの選択が可能であり、異なるプラットフォームを利用している可能性のある取引相手であっても、問題なく請求書を交換することができます。

(次回記事に続く)

ここまでわかったこと(まとめ)

ここまでの内容をもとに話を整理してみましょう。

既存の処理では、紙やPDFによって情報を送信していましたが、これらは構造化されていないデータなので、受け取った側の会社でも、改めて情報の手入力が必要でした。

この負担を解決できる新しいEDIのしくみが、標準仕様の電子インボイスです。

もし請求相手が異なるシステムを利用していても、Peppolに準拠した標準仕様の請求書を受け入れられるのであれば、電子インボイスの送信が可能です。

電子インボイス推進協議会に参加している会社の顔ぶれを見ると、大手のソフト会社のほとんどが参加しているようです。このため、取引相手にも支障なく電子インボイスを送信できることが期待できます。

また、やりとりは電子インボイスという請求情報に限られているため、他業種など異なるEDIを利用していても、やりとりが可能とされています。

つまり、標準仕様の電子インボイスは、経理を大幅に効率化できる可能性を秘めていることがわかります。

こうして考えてみると、近年話題となっていた「スキャナ保存」も、若干色あせて見えます。

スキャナ保存が必要なのは、「相手が紙で送ってくるから、仕方なくスキャンして保存せざるをえない」という、やむを得ないレベルの対応であって、電子インボイスへの対応が進めば「補完的な制度」に位置づけが変わることでしょう。

次回は、このPeppolネットワークがどのようにして情報の交換をしているのか、そのしくみをもう少し詳しく見ていきます。

2023年10月からスタート予定の「インボイス制度」。この制度で目新しいのは、インボイスの範囲に「電...

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