添付書類と「遅滞なく」 添付書類送付書に記載を忘れたらどうなる

細かい話ですが、e-Taxで添付書類を郵送する場合には、「遅滞なく」というのが一般的な認識だと思います。

この「遅滞なく」について、どこに要件が書かれているのか疑問を覚えて探してみたけど……という内容で、疑問を投げっぱなしの記事です。

もやもやで終わるので、比較的気分がいいときにお読みください。

説明のポイント

  • e-Taxで送信できなかった添付書類の提出は「遅滞なく」。その根拠は国税庁ホームページ?
  • 「添付書類送付書」に記載がもれたらどうなるのか?(疑問のみ)
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添付書類は「遅滞なく」提出する

e-Taxが実務に取り入れられても、書類を電子データで送信できないものはそれなりにありました。

昨今ではPDFで送信できる書類が大幅に増えましたが、「添付書類は郵送で」という実務はそれなりに続いてきたものと思われます。

例えば、決算書はPDFで送信できないことから、郵送しているケースもあることでしょう。

ものすごくいまさらの話なのですが、その添付書類を郵送で送るときには、その期限は「遅滞なく」と理解されています。

この点、根拠などはあるのだろうか……という疑問があったので、調べてみました。

根拠は国税庁HPか?

筆者が調べてみたところ、「遅滞なく」という話は、国税オンライン化省令を探してもとくに見当たりませんでした。

法令ではなく、国税庁のe-Taxホームページにおける記載が参照されているようです。

医療費の領収書など利用者以外の方が作成する証明書類等の添付書類(e-Taxソフト等で作成できない書類)については、別途、送付等により、所轄税務署等に提出していただくことになります。

e-Taxソフトでは、申告等データの送信後に利用者のメッセージボックスにご利用になられた手続の受付結果の通知が格納されます。通知を開くと「送付書表示」ボタンがありますので、クリックし、「申告書等送信票(兼送付書)」を表示させて印刷の上、必要事項を記載し、添付書類とともに提出してください。
詳細については、e-Taxソフト操作マニュアル「11 受付結果を確認する【PDF形式:約1.12MB】」を参照してください。

なお、送付等により提出する添付書類については、申告等データの送信後、遅滞なく提出していただく必要があります。

この部分が根拠であるらしい……というのは、TKCが提供している「電子申告Q&A」を読んでもうかがえます。

日税連が提供する電子申告Q&A(4-3-11)でも、「別途送付する書類については、申告データ送信後、遅滞なく提出してください。」とあるだけで、その根拠はとくに示されていません。

郵送は期限後でも大丈夫か?

心配になるのは、e-Taxの送信が期限内であっても、その添付書類の郵送が期限後になった場合でしょう。

望ましい話ではありませんが、提出期限日の午後11時55分に電子申告をした場合、その申告にかかる添付書類の郵送を期限内に行うことは困難です。

この点、ある税務署に問い合わせをしたときに、親切そうな管理運営部門の人と話す機会があったので、聞いてみたことがあります。

その人の回答では、「添付書類の提出があることは、送信された添付書類送付書で把握できていますので、郵送は期限後になっても大丈夫ですよ」ということでした。

なるほど、例の「添付書類送付書」で、税務署も添付書類の有無を把握しているのだな……ということがわかります。

添付書類送付書の記載を忘れたらどうなる……?

しかし、さらに疑問に覚えた点もあります。

それは、もし「添付書類送付書」に記載を失念して、それでも添付書類を提出すべきものを期限後に送ったらどうなるのだろう……? ということです。期限後に郵送した場合でも、「遅滞なく」提出した扱いになるのでしょうか。

そこまで突っ込んだ質問はできなかったので、あくまで個人的な意見ですが、電子申告で送信しているところ、同時に送信できない添付書類を代替的に郵送しているわけです。

期限後に郵送しても、「添付書類送付書」の記載がもれている場合では、期限内に提出していないと扱われる可能性がありそうです。(実務上どのように処理されているかはわかりませんので、あくまで想像です)

追記:2023年5月26日、国税庁e-Taxホームページに掲載されたお知らせ「法人税申告書の送信時に「HUBH001E:送信されたデータ形式では読み取ることができません。」のエラーメッセージが表示された場合の対応について」において、財務諸表データについては「期限内に申告に係るデータを提出されていれば、当該エラーにより修正したデータの提出が期限後となった場合であっても、期限内申告として取り扱われます。」という案内が掲載されています。

e-Taxで別途添付書類を送信する場合、そのときにも「添付書類送付書」が作成されます。

このため、当初の「添付書類送付書」には記載せず、別途送信のときに添付書類を書けばいいと思っていることで、提出忘れになってしまう可能性があるかもしれません。

送信できなかった書類は、当初の「添付書類送付書」に網羅しておくのが安全かもしれません。

「当初の添付書類送付書」のほかに、別途送信のときにも「添付書類送付書」を作成すると、添付書類送付書が重複になるのではと気になるところです。この点、別途送信の受付番号は、当初の送信の受付番号とのあいだに関連が示されています(※別途送信の受信通知には、その送信の受付番号のほかに「元の申告・申請書の受付番号」があわせて記載される)。この点を考えると、相互の「添付書類送付書」の記載が重複しても問題ないように思います。

リリース前別表は……?

また、添付書類よりも気になるのが、リリース前の法人税別表です。今ではPDFで送信するのも楽になりましたが、印刷した書面で提出することもあるかもしれません。

ここで疑問が浮かぶのは、リリース前別表は「添付書類」なのか、という点です。リリース前別表も添付書類と同じく「遅滞なく」の取扱いになるのかが気になるところです。

株式会社日税連保険サービス「税理士職業賠償責任保険事故事例」(2019年7月1日~2020年6月30日の事例11)では、電子申告で送信できない法人税別表の郵送を失念したために、特別控除の適用を受けられなかった事例が書かれています。

この事例について、「添付書類送付書」に郵送すべき別表を記載して送信していたが郵送を失念したのか、それとも、「添付書類送付書」に郵送すべき別表を記載して送信していなかったのか、詳細は不明です。

あくまで私見ですが、法人税別表は「添付書類」ではないことから、期限内に郵送した方がよいと考えます。

まとめ

e-Taxで送信できない場合の「添付書類送付書」については「遅滞なく」提出するとされていますが、それにまつわる実務上の疑問を述べてみました。

e-Taxの「添付書類送付書」の実務は、当たり前のように行われているわりに、その取扱いがどうなるかはあまりハッキリしておらず、正直いって怖いところがあります。

備忘のため、気になった点を整理してみました。

たんに筆者が知らないだけで、昔の税務雑誌の取材記事がどこかにあって、解決済みの疑問かもしれませんのでご注意ください。

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