代理取得IDとマイナンバーカード方式の関係 紐付けしないとトラブルも

個人のe-Taxについて、旧来のID・パスワード方式と、新式のマイナンバーカード方式について、税理士における代理業務において気になる点があったので、メモしておきます。

すでに取得済みのe-Taxの利用者識別番号があるところ、個人顧客がマイナンバーカード方式でログインすると、紐付けが必要になるという注意点です。

説明のポイント

  • マイナンバーカード方式の初回ログイン時には、既存の利用者識別番号とのひも付けが必要
  • 税理士が代行管理している場合にはトラブルに注意
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既存のe-TaxIDとマイナンバーカード方式

ブログ筆者が先日見ていた税理士向けの動画配信において、既存のe-TaxのID(利用者識別番号)とマイナンバーカード方式の併用について注意喚起をされている内容があり、ハッとさせられるものがありました。

その動画は、東京税理士会の「税理士情報フォーラム 2022」で、税理士の遠山優里先生が話されていた注意喚起です。2023年3月までの限定配信ですので、もし東京税理士会の税理士であれば視聴をおすすめします。実務家から見たe-Taxへの問題意識がよく整理されています。

以下は、遠山先生が提起された問題をヒントに、ブログ筆者が問題を整理し直した内容です。(内容の間違いがあっても、文責はブログ筆者にあります)

税理士が代行取得した場合にトラブル要因?

旧来のe-Taxでは、ログインの認証方式は「ID・パスワード方式」しかありませんでしたが、国税庁は個人向けの認証方式を「マイナンバーカード方式」に移行しつつあります。

しかし、税理士の立場からすると、マイナンバーカードは顧客しか持っていないので、マイナンバーカード方式は扱えません。このため、税理士が代理で取得できるのは、「ID・パスワード方式」のID(利用者識別番号)です。

この場合で、税理士が代理取得したIDがすでにあるのに、顧客がマイナンバーカード方式でログインしようとすると、トラブルが起こる可能性があるのではないか、という問題提起がありました。

マイナンバーカード方式でログインするときは紐付けが必要

ブログ筆者も気になったので調べてみたところ、個人がマイナンバーカード方式で初回ログインするときは、既存のID(利用者識別番号)との紐付けが必要とされているようです。

参考:e-Tax利用の簡便化についてよくある質問「パソコンからマイナンバーカード方式の利用を開始する方法を教えてください。」の手順②

下に引用したとおり、マイナンバーカード方式の利用開始時において、ID(利用者識別番号)と暗証番号の入力が求められるようです。

紐付けしなかった場合はIDの新規取得になる?

この点で気になるのは、税理士がID(利用者識別番号)を代行管理しているために、税理士の顧客である個人は、ID・暗証番号を把握していなかったケースでしょう。

個人がマイナンバーカード方式でログインすると、当然にID・暗証番号は認識していませんから、上記で引用した画面の選択では、「初めてe-Taxをご利用される方はこちら」を選んでしまうのではないか……ということです。

この場合、既存のIDと紐付けがされないままに、新規のIDが作成されてしまう(?)可能性があります。

ブログ筆者もe-Taxサポートに、こうした事態が想定されるかを聞いてみたのですが、明確な回答はなく、マイナンバーカード方式のログイン時に既存のIDと紐付けするように案内があっただけでした。

マイナンバーカードが普及したことで起こりうる問題

上記のような事態が起こりうるようになったのは、マイナンバーカードが普及した影響が大きいと考えられます。あの手この手の普及策によって、2022年12月末の交付枚数は人口比で57.1%に達しています。(総務省ホームページ

e-Taxについては、以前は「ID・パスワード方式」しかありませんでしたし、税理士に税務を依頼している場合において、あえて個人でe-Taxにアクセスする必要はほとんどなかったはずです。

しかし現在では、マイナポータルとe-Taxの連携が強化されていることや、e-Taxのメッセージボックスの閲覧権限に認証を用いて厳しくするなど、個人向けのe-Taxについては、税理士の管理だけでは限界が生じる点も見えています。

e-Tax以外でもマイナンバーカードを用いる機会が増えつつありますので、個人顧客でもe-Taxにアクセスしてみる機会が増えるかもしれません。

この点を考えれば、仮に税理士がID(利用者識別番号)と暗証番号を代理取得した場合でも、そのIDと暗証番号は、個人顧客にも共有する必要があるでしょう。

顧客の個人が認識していないと、マイナンバーカード方式のログイン時において当然に紐付けができないことから、上記のトラブル要因となりえます。

遠山先生の動画によれば、マイナンバーカード方式が優先された結果、税理士側で管理しているIDがいつの間にか無効になっている可能性もありえるとのことです。

マイナンバーカード方式で初回ログイン→IDを表示する場合は?

上記で紹介したケースでは当てはまりませんが、税理士の関与はまだなく、マイナンバーカード方式で初めてログインした個人顧客が、その後に税理士にID(利用者識別番号)を共有する必要がある場合は、「受付システム」にログインした画面の下の方にある「利用者識別番号の通知・確認」で表示することができます。

税理士の質問としては、これまでは「e-Taxの利用者識別番号をお持ちですか?」という聞き方をしていましたが、もしかするとそれだけでは不十分で、「マイナンバーカードでe-Taxにログインしたことがありますか?」という質問も、現在では必要になっているかもしれません。

遠山先生の動画では、この受付システムでの利用者識別番号の表示についても、税理士としては案内が難しい問題を指摘されています。

まとめ

e-Taxで個人の利用者識別番号を取得済みのところ、マイナンバーカード方式でログインした場合は、既存の利用者識別番号と紐付けが必要とされているようです。

この点において、マイナンバーカード方式と税理士業務とでは、相性が微妙な点がうかがえるので、利用者識別番号の扱いや情報共有に注意する必要があるかもしれない、という話でした。

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