文化庁が毎年実施している「国語に関する世論調査」。その調査では、本来の意味とは異なって使われている可能性のある日本語が調査されています。
その調査の対象となった慣用句について、一覧表としてまとめました。自分用に作っていたものですが、せっかくなのでシェアしておきます。
調査対象となった慣用句のリスト(前編)
これらの内容は、慣用句について「どちらの意味が正しいと思うか」を質問して、調査された結果を示したものです。
その結果をリスト化して、左側を「本来の意味」、右側を「本来の意味とは異なる回答」という形式でまとめています。
リストに「○」があるものは、「本来の意味とは異なる使われ方」の回答率が高かったものです。
調査年度 | 慣用句 | 本来の意味 | 本来の意味とは異なる | 異なる意味を選択した割合が高い |
---|---|---|---|---|
H28 | さわり | 話などの要点のこと | 話などの最初の部分のこと | ○ |
ぞっとしない | 面白くない | 恐ろしくない | ○ | |
知恵熱 | 乳幼児期に突然起こることのある発熱 | 深く考えたり頭を使ったりした後の発熱 | ||
H27 | 奇特 | 優れて他と違って感心なこと | 奇妙で珍しいこと | |
確信犯 | 政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 | 悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 | ○ | |
琴線に触れる | 感動や共鳴を与えること | 怒りを買ってしまうこと | ||
名前負け | 名前が立派で,中身が追い付かないこと | 名前を聞いただけで気後れしてしまうこと | ||
H26 | おもむろに | ゆっくりと | 不意に | |
枯れ木も山のにぎわい | つまらないものでも無いよりはまし | 人が集まればにぎやかになる | ○ | |
小春日和 | 初冬の頃の,穏やかで暖かな天気 | 春先の頃の,穏やかで暖かな天気 | ||
天に唾(つば)する | 人に害を与えようとして,結局自分に返ってくるような行為をすること | 自分より上位に立つような存在を,冒し汚すような行為をすること | ||
H25 | 他山の石 | 他人の誤った言行も自分の行いの参考となる | 他人の良い言行は自分の行いの手本となる | |
世間ずれ | 世間を渡ってずる賢くなっている | 世の中の考えから外れている | ○ | |
煮詰まる | (議論や意見が十分に出尽くして)結論が出る状態になること | (議論が行き詰まってしまって)結論が出せない状態になること | ||
天地無用 | 上下を逆にしてはいけない | 上下を気にしないでよい | ||
やぶさかでない | 喜んでする | 仕方なくする | ○ | |
まんじりともせず | 眠らないで | じっと動かないで | ○ | |
H24 | 役不足 | 本人の力量に対して役目が軽すぎること | 本人の力量に対して役目が重すぎること | ○ |
流れに棹さす | 傾向に乗って,ある事柄の勢いを増すような行為をする | 傾向に逆らって,ある事柄の勢いを失わせるような行為をする | ○ | |
気が置けない | 相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい | 相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない | ○ | |
潮時 | ちょうどいい時期 | ものごとの終わり | ||
噴飯もの | おかしくてたまらないこと | 腹立たしくて仕方ないこと | ○ | |
H23 | 煮え湯を飲まされる | 信頼していた者から裏切られる | 敵からひどい目に遭わされる | |
うがった見方をする | 物事の本質を捉えた見方をする | 疑って掛かるような見方をする | ○ | |
にやける | なよなよとしている | 薄笑いを浮かべている | ○ | |
失笑する | こらえ切れず吹き出して笑う | 笑いも出ないくらいあきれる | ○ | |
割愛する | 惜しいと思うものを手放す | 不必要なものを切り捨てる | ○ | |
H22 | 情けは人のためならず | 人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる | 人に情けを掛けて助けてやることは,結局はその人のためにならない | |
雨模様 | 雨が降りそうな様子 | 小雨が降ったりやんだりしている様子 | ○ | |
姑息 | 一時しのぎ | ひきょうな | ○ | |
すべからく | 当然,是非とも | 全て,皆 | ||
号泣する | 大声を上げて泣く | 激しく泣く | ○ | |
H20 | 手をこまねく | 何もせずに傍観している | 準備して待ち構える | ○ |
時を分かたず | いつも | すぐに | ○ | |
破天荒 | だれも成し得なかったことをすること | 豪快で大胆な様子 | ○ | |
御の字 | 大いに有り難い | 一応,納得できる | ○ | |
敷居が高い | 相手に不義理などをしてしまい,行きにくい | 高級過ぎたり,上品過ぎたりして,入りにくい | ○ | |
H19 | 憮然(ぶぜん) | 失望してぼんやりとしている様子 | 腹を立てている様子 | ○ |
檄(げき)を飛ばす | 自分の主張や考えを,広く人々に知らせて同意を求めること | 元気のない者に刺激を与えて活気付けること | ○ | |
琴線に触れる | 感動や共鳴を与えること | 怒りを買ってしまうこと | ||
H18 | やおら | ゆっくりと | 急に,いきなり | ○ |
H12 | 一姫二太郎 | 一人目の子供は女,二人目の子供は男であるのが理想的だ | 子供は女一人,男二人であるのが理想的だ | |
かわいい子には旅をさせよ | 子供は手元で甘やかさず,世間に出して苦労をさせた方がよい | 子供が旅することを望めば,希望どおりにさせてやるのがよい |
複数回調査されているものは、重複を避けるため、新しい年度として掲載しています。
まとめ
以上の出典は、文化庁「国語に関する世論調査」です。
ネットでも、これらの調査を抜粋した紹介記事はすでに見られましたが、全ての質問をリスト化しているものが見当たらなかったので、自分で作成しました。(たぶん、間違いはないはず)
ここで紹介した用語は、自分が正しい意味で使っていても、読み手には間違った印象を与えてしまう可能性を含んでいます。ブロガーさんは要注意ですね。
とくに、リストに「○」がついた慣用句は、文中では使わないほうがよいのでしょう。
後編は、こちらでご覧になれます。
文化庁が毎年実施している「国語に関する世論調査」。その調査では、本来の意味とは異なって使われている可...