2018年11月に更新された国税庁の仮想通貨FAQに、所得計算における「仮想通貨の必要経費」という項目がありました。この内容は、株式等でも参考になると考えられますので、内容を見ておきます。
説明のポイント
- 仮想通貨FAQに「仮想通貨の必要経費」という内容がある
- 株式等の所得計算でも参考になる
特定口座年間取引報告書だけで計算が終わらない場合
最近投稿した記事で、特定口座年間取引報告書だけで所得計算が終わらない場合の懸念を書きました。
この記事のうち、株式等譲渡における必要経費について、さらに追加できるものがあるのでは……? とされているもの、その内容について明示された資料はほとんど見当たりませんでした。
このため、記事でもその内容をぼかして書いていました。
仮想通貨FAQの必要経費の例が参考になる?
ところで、2018年11月に更新された国税庁の仮想通貨についてのFAQ「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」において、「仮想通貨の必要経費」という項目が追加されました。
この内容によれば、仮想通貨の売却において必要経費になるのは、
- 取得価額
- 売却手数料
のほかに、
インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、仮想通貨の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。
と示されています。
仮想通貨の売却における所得は、総合課税における「雑所得」または「事業所得」とされています。
これに比べ、株式等の売却における所得は、分離課税における「譲渡所得」「雑所得」「事業所得」のいずれかとされています。
扱う商品は異なりますが、環境だけを見れば、株式等の売却と仮想通貨の売却は似たようなものです。
この点を考えると、株式等の取引について仮想通貨FAQと同様の取り扱いを認めない理由も考えづらく、FAQを参考にしても問題ないと考えます。(ただし、譲渡所得に該当する場合は、必要経費にできる可能性は薄まるでしょう)
なお、FAQでも念押しで示されているとおり、必要経費にできるのは、業務遂行上関連がある部分だけに限られます。
例えばトレード専用のパソコンを使っているなら区分はしやすいでしょう。しかし、私用との兼用の場合、金額にもよりますが、区分する手間も考える必要がありそうです。
まとめ
株式等の所得計算の必要経費は、仮想通貨FAQが参考になる、という気づきをお伝えしました。
まあ、いちおうそんな話があるということの整理なのですが、実際のところは特定口座年間取引報告書だけでやっていることがほとんどでしょう。
仮想通貨とは異なり、株式等の場合は特定口座(源泉徴収あり)であれば、「申告不要」を選択することもできます。
また、分離課税のため税率は20.315%(所得税と住民税の合計)で固定されており、さらに少し前までは税率がたったの10%だったことも、こうした意欲がとぼしいことに影響しているのでしょう。