全銀協の調査レポート、法人の電子納付利用率は15%

内閣府で行われた第18回行政手続部会(2019年5月14日)で、全国銀行協会からのヒアリングで提出された調査レポートに、法人における電子納付の利用率について示されたデータがありましたのでご紹介します。

説明のポイント

  • 全国銀行協会の調査レポートによると、法人における電子納付の利用率は15%
  • 電子納付を利用しない理由は、「紙の領収証書がない」など
スポンサーリンク

 

銀行も収納の効率化に注目している

このブログの筆者は、税理士という立場から、経理の効率化推進のために電子納税の周知に努めています。

一方、収納を受ける側の金融機関も、税・公金収納における効率化に注目しているようです。そのための調査を行ったレポートが全国銀行協会「税・公金収納・支払の効率化等に関する勉強会 調査レポート」(2019年3月、調査委託先は野村総合研究所)です。

このレポートは、内閣府第18回行政手続部会(2019年5月14日)における全国銀行協会からのヒアリングにおいて提出された資料で、誰でも読むことができます。

興味深い調査結果が載っていましたので、周知のためにこのブログでご紹介します。

このレポートで筆者が気になったのは、個人と法人における電子納税の利用率について、調査結果が出ていた点です。

法人における電子納付の利用率は15%

結論からいうと、法人における電子納付の割合は「15%」という結果でした。他方、紙を利用した窓口等での納付は「72%」となっています。

電子納付は、まだまだ普及途上にあるといえます。なお、この電子納付の割合は、口座振替を含むものとなっています。

法人以外を見てみると?

ちなみに、個人・個人事業主の場合は、口座振替の利用率が比較的高いことから、口座振替を含めた「電子納付」の割合は32%となっています。

たとえば国税においては、個人にだけ所得税・消費税の口座振替を認めています。個人は、法人に比べて口座振替が利用しやすい環境にあるともいえそうです。

【参考】国税だけを個人・法人全体でみると?

参考として、国税だけの納付件数から見たデータも紹介しておきます。(※全国銀行協会の調査レポートの掲載データではありません)

国税庁の資料に掲載されていた国税の納付件数の集計結果を見ると、口座振替+クレジットカード納付+電子納税の割合は「21.5%」である一方、現金納付は「74.5%」となっています(2017年度)。

やはり、全国銀行協会の調査レポートに近い割合(法人15%~個人32%)であることがうかがえます。(※ただし、源泉所得税や消費税の納税回数を踏まえると、納付方法の選択により偏りが出やすいことに留意)

参照「第20回 国税審議会」参考資料(2019年3月13日)

なぜ電子納付は普及しないのか?

このレポートで興味をひくのは、なぜ電子納付を利用しないのか? という点について聞き取りをしている点です。

電子納付を選択しなかった理由を見てみると、

  • セキュリティが不安
  • 納付実感がない
  • 領収証書が発行されない
  • 収納機関・税目等によって利用可能な納付方法が異なり不便
  • 操作が面倒、手続を間違えそう

といった意見がリストアップされています。(レポートP.17)

紙の領収証書がほしいが、「なぜ必要か」の理由はあやしい?

電子納付を使わなかった法人の意見を見てみると、「紙の領収証書がほしい」という回答の割合が多いです。(レポートP.14)

窓口での納付ならば、紙の領収証書が発行されるので「いつもどおり」です。固定化されたルーチンからの脱却は、よほどのメリットがない限り、難しいものがあるといえそうです。

また、「本当に紙の領収証書は必要だったのか?」という点に着目してみると、あやしい点も示唆されています。

レポートP.15下部の「注11」を見ると、

「監査の際に提出することにしている」という回答があった一方で、「必要になったことはない」・「例えばインターネットバンキングの履歴を印刷することでも代替可能」という回答があったことから、法人が税・公金を納付する場合、必ずしも紙の領収証書が必要ではないケースもあると想定される

※太字による強調は筆者

という点に触れています。

「紙の領収証書がほしいといっても、本当に必要だったのか?」という考え方は興味深いですが、このレポートでは、その先まで踏み込んだ調査は行われていません。

まとめ

全国銀行協会の調査レポートから、法人における電子納付の利用率について紹介しました。

そのレポートによると、電子納付の利用率は15%とされており、窓口納付に比べて利用率は圧倒的に低い結果でした。

また、電子納付を利用しない問題について調べてみると、紙による窓口納付とは異なる環境のため、不安感をともなう様子がうかがえます。

ところで、当ブログの以前の記事で紹介しましたが、法人におけるネットバンキングの利用率は50%程度というデータがありました。

クラウド会計ソフトを考えるときに重要なのが、連携する金融機関のネットバンキングです。この記事...

もし法人がネットバンキングを利用していなければ、口座振替を除いて、やはり電子納付も難しいことになります。

電子納付の問題は、ネットバンキングの利用率ともリンクしている問題のように考えられます。

次回の更新では、今回のレポートを踏まえ、紙の領収証書は必要かという点にスポットを当ててみたいと考えています。

スポンサーリンク