令和元年度における電子帳簿保存法の承認件数が、政府税制調査会の資料で公開されていることがわかりました。
説明のポイント
- 個人事業者の「自己が一貫してコンピュータで作成」の承認件数がさらに増加
- スキャナ保存の承認件数は前年度と同程度の増加
電子帳簿保存法の承認件数の動向
電子帳簿保存法の承認件数は、「税務のトレンド」のひとつといえます。この点、以前の記事で平成30年度に気になる動向があることをお伝えしました。
そして、先週末の2020年10月16日の政府税制調査会の資料にて、令和元年度(2019年度)における電子帳簿保存法の承認件数が明らかにされていました。これは、国税庁の統計よりも先の内容で、現時点で初見と思われます。
この記事では、令和元年度(2019年度)における承認件数のデータを確認します。
スキャナ保存は伸びていない
注目のスキャナ保存ですが、令和元年度(2019年度)の累計承認数は4,041件(前年比+1,143件)とされています。
前年度の平成30年度(2018年度)の累計承認数が2,898件(前年比+1,052件)だったことを考えると、スキャナ保存の申請は「伸びていない」といってよいでしょう。
文字だけで伝えてもわかりづらいでしょうから、法人の承認件数をグラフ化してみました。
注意点として、個人、法人のスキャナ保存の内訳が不明なので、とりあえず個人の件数が前年同数だったと仮定したものです。なお、件数は単年度であり、累計ではありません。
出典:国税庁統計、2019年度は政府税制調査会資料(2020年10月16日)(※「年度」は事務年度:7/1~翌年6/30、これ以降の掲載グラフも出典同)
この状況を考えれば、スキャナ保存の制度がこのままというのも、やはり考えものでしょう。
経済団体からも強い改善の要望がなされているとおりで、追加の制度緩和が期待できるかもしれません。
個人の電子帳簿承認が爆増
スキャナ保存の承認件数の伸びが低調であることに比較して、帳簿書類の電子保存の承認件数は、前年よりも伸びています。
個人における承認件数は、大幅に増えたと考えていた平成30年度(2018年度)をさらに超えて増加しています。
以前に平成30年度の増加を「激増」と述べましたが、令和元年度の増加は「爆増」に近いものがあります。
令和2年分からの青色申告特別控除の65万円要件が影響しているのでしょうか?
個人に比べ、法人の承認件数は前年比で減少していました。やはり、個人の動向が際立っています。
中小企業の電帳法承認は低調
政府税制調査会の資料を見ると、企業規模ごとの承認状況が明らかにされていました。
これによると、大企業の電子帳簿保存法の承認は3.3万社に対して2.4万件ですが、中小企業は309.9万社に対して14.8万件とされています。(※1社で複数承認を受けている場合もある)
大企業に比較して、中小企業における電子帳簿保存法の利用はやはり低調です。当然に想像されていたことですが、この資料では数値として改めて確認されたといえます。
まとめ
国税庁の統計よりも一足先に、令和元年度における電子帳簿保存法の承認件数が、政府税制調査会の資料でわかりましたので、この記事でお伝えしました。
話を整理すると、スキャナ保存は前年比で伸びていないことと、個人の帳簿の承認件数は爆増、ということです。
個人の帳簿の電子保存については、令和2年分からの青色申告特別控除の65万円要件が影響しているのかもしれません。
帳簿を電子保存するよりも、電子申告のほうが要件達成のハードルは低いはずですが、要件の新設が影響を与えているように感じます。
<留意点>
ここで紹介した数値は、累計承認数をもとに当年度の承認件数に引き直した数値ですが、「取りやめ」の件数は例年少数のため、ほとんど影響はないと考えます。
「自己が一貫してコンピュータで作成」は、全体の承認件数からスキャナ保存を差し引いた件数としています。
1事業者で複数の承認申請をしている場合もあるため、承認件数は承認を受けた事業者数を示すものではありません。