ネットバンキングは経理の効率化に役立つものですが、利用していない会社もそれなりにあるとされています。その「利用しない理由」について、調査されている資料がありました。「利用しない理由」まで踏み込んだ調査はめずらしいので、この記事で紹介しておきます。
説明のポイント
- 2016年の調査、ネットバンキングを利用していない理由を尋ねた資料
- ネットバンキングを利用しない理由は「コスト」「セキュリティ」
法人のネットバンキング利用率
当ブログでは、クラウド会計の利用状況を考える観点から、その関連情報として、法人のネットバンキングの利用率を示す資料を発掘しています。
この取り組みに着手した2018年後半当時、Googleで検索しても関連資料はまったくヒットせず、途方にくれた記憶があります。
しかし、もし当ブログが調べた資料からリンクを貼れば、ネット検索においても適切なインデックスが作成されるといえます。
以下は、過去のブログ記事において、ネットバンキングの利用率を調べた記事の紹介です。
まず、2007年と2012年の利用率を紹介した資料として、平成25年度「中小企業白書」がありました。
また、2016年におけるfreeeによる独自調査と、同じく2016年に実施された中小企業庁の委託調査を紹介しました。
このほか、2018年実施の小規模事業者を対象とした調査を紹介しました。
ところで、先日の政府税制調査会「第1回 納税環境整備に関する専門家会合(2020年10月7日)資料一覧」を見ていたところ、新経済連盟の作成資料に、気になる内容があることに気づきました。
それは、上記の2016年のfreee独自調査には「続き」があって、「ネットバンキングを利用しない理由」も調査されていたということです。
法人がネットバンキングを利用しない理由
資料から、該当部分を引用します。
引用:第1回 納税環境整備に関する専門家会合(2020年10月7日)資料一覧のうち、新経済連盟の資料(p.21)
図の左は、ネットバンキングの利用率です。
このデータは出典が示されていませんが、freeeの独自調査(2016)と数値が一致しますので、出典はfreeeと考えてよいでしょう。
一方、図の右は「ネットバンキングを利用しない理由」です。これは、freeeの独自調査(2016)では、過去に紹介されていなかった資料で、筆者は初めて見ました。
この調査結果によると、ネットバンキングを利用しない主な理由は、
- 利用するのに手数料がかかるため(38.5%)
- セキュリティに不安がある(28.6%)
- 手続きが面倒(27.2%)
という結果が示されています。
一方で、「すでにATMが多数あり不便を感じない」「使いづらいため」という理由は、低い割合が示されています。
経理において銀行店舗への訪問がサイクルとして組み込まれているから、サイクルを変えるネットバンキングは必要に感じない……という考え方が主流なのだと筆者は考えていましたが、どうもそうではないようです。
しかし、「手続きが面倒」という回答が上位にあることを考えれば、ここにサイクルの変更への拒否感が含まれている可能性もあります。
これらの結果を見たところでは、ネットバンキングの利便性は法人の代表者・経理担当者には理解されているものの、コストやセキュリティの面が利用率に影響している、という整理になるでしょう。
「なぜ利用しないのか?」を聞いた資料は意外に存在しない
この資料を紹介した理由は、ネットバンキングの利用率を調査した資料は見つかるが、「なぜ利用しないのか?」を聞いた調査は、意外と少ないということが挙げられます。
こうした点で、この資料は興味深い結果といえます。
なお、2017年頃に行われていた経済産業省で実施された「FinTech研究会」「FinTech検討会合」の発言集を読むと、freeeは、法人におけるネットバンキングの利用状況について懸念を示している様子がわかります。
まとめ
最近公開された資料を見てたところ、気になる調査結果を見つけたのでこのブログで紹介しました。
結果そのものはなんとなく予想できる話で、ネットバンキングを利用しない法人の懸念としては「コスト」や「セキュリティ」が理由として示されています。
このうち、実際の「コスト」については、中小企業庁の委託調査でわかっていますので、次回の記事でお伝えします。