IT化に取り残された3割の小規模事業者のグループを考える【1】

小規模事業者とIT化について考える記事です。中小企業庁が実施している調査に基づき、中小企業の現場に密接している税理士自身が考えていきます。

説明のポイント

  • 小規模事業者における未IT化率は、3割程度
  • 人手不足への対応や人材育成についても、IT化への関心は薄い傾向が見られる
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小規模事業者は、経理業務におけるIT化の割合が低い?

当ブログでは先々週から2週間にわたり、クラウド会計の利用率を考える記事を提供してきました。

政府方針として、中小企業におけるバックオフィス業務の効率化が掲げられています。クラウドサービスを活用...

クラウド会計の利用率を調べており、その根拠となったデータを見ていると、「小規模事業者では、IT化の割合が著しく低い」という結果が、はっきりと明示されていることに気づきました。

引用:中小企業庁委託調査「決済事務の事務量等に関する実態調査」(2016年12月)問29

つまり、ここで紹介する記事は、クラウド会計の利用率を調べていたときの「副産物」として始まった疑問点になります。

この点は調べ始めると興味深いテーマであり、なおかつ、中小企業の施策を考えるうえでも重要と感じました。

現場に密接している税理士自身が、IT化の問題を語ることは、職業上の貢献として重要であると考えます。

シンクタンクの研究員でもない、たんなる税理士個人のブログではありますが、論考を試みてみましょう。

1.経理業務で表計算ソフトを使っていない割合は、全体で13%、うち小規模事業者で3割に達する

タイトルが長くて恐縮ですが、いいたいことはタイトルにつまっています。

中小企業庁による委託調査で、中小企業向けのアンケート調査によると、「経理業務で利用しているソフト・システム」において、表計算ソフトや会計ソフトを使っていないと回答した割合は、13.2%でした。

このデータを詳しく見ると、従業員数が10名以下の企業では、その割合は3割程度に達することがわかります。

中小企業基本法の定義によると「小規模事業者」とは、商業・サービス業で5人以下、製造業で20人以下とされています。業種によって従業員数に幅がありますので、厳密にいえば、従業員数10人以下の企業=小規模事業者とは言い切れない部分もありますが、おおむねという点で捉えてください。

表計算ソフトは、大量の数字を集計する場合に便利なソフトです。

この特性を考えれば、経理業務で表計算ソフトを使わなければ、これ以外の業務でも使っている可能性は「かなり低い」と考えられます。

そう考えれば、小規模事業者の未IT化率は、3割程度とみてもよいでしょう。

ちなみにこの調査の対象は、法人が95%となっていますので、個人事業主はほとんど含みません。きちんと法人登記をしている企業であっても、このような実態があるということです。

2.裏付ける同種のデータを探すと、やはり同じ結果がある

この点を裏付ける同種のデータを探してみると、似たようなデータが見つかります。

 

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小規模事業者を専門に調査した「平成27年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査」(中小企業庁委託、日本アプライドリサーチ研究所調査)を見ると、情報管理面におけるIT活用状況について「事務処理ソフト(ワープロ、表計算、グラフ作成など)」の割合は62.2%となっています。

引用:中小企業庁委託調査「平成27年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査」(2016年3月)問21

複数回答が可能な項目ですが、事務処理ソフトは最も難易度が低いと思われますので、62.2%の範囲外は、IT化されていないとみなしてよいでしょう。

つまり、ITの未利用率は、「特にない」と回答した20.1%~37.8%のあいだと推測されます。

もう1件、似たデータを紹介します。

違う調査年度の「平成29年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査」(中小企業庁委託、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査)ですが、電子化の状況という調査で「財務・会計(記帳)」を「ほぼ紙で管理している」と回答した割合は24.2%でした。

引用:中小企業庁委託調査「平成29年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査」(2018年3月)問15-2

これらを見ても、やはり小規模事業者におけるITの未利用率は3割程度である、といえるでしょう。

3.小規模事業者は、IT化への関心が薄い

小規模事業者はIT化の割合が低いわけですが、こうした土台となっているのは、IT化への関心がそもそも低いという問題がありそうです。

小規模事業者を含め、中小企業では人手不足が問題となっています。

そこで、そのような問題を感じている小規模企業に、どのような解決案を考えているかの対応を聞いたところ、「IT化、設備導入による省力化」と答えた割合は14.6%に留まりました。

引用:中小企業庁委託調査「平成29年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査」(2018年3月)問13-2

これは設備投資を含む項目であり、たんなる表計算ソフトのレベルの話からは、やや飛躍してしまいます。

それでも、「しくみ」で解決しようとする項目は低い一方で、「マンパワー」で解決しようとする割合は高めになっている様子がうかがえます。

もう1件、こんどは人材育成の面から見た調査です。

「取り組んでいる人材育成の狙いや目的」という調査を見ると、「ITスキルの向上」と回答した割合は、1位~3位をすべて合計してようやく13%です。

これに比べて、本業である「技術・技能の向上」は、高い割合が示されています。

引用:中小企業庁委託調査「平成27年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査」(2016年3月)問43

大胆な予測をしてしまうと、ITスキルの向上は、本業とは関わりがないと見られている可能性があります。

別の言い方をすれば、ITを活用しても、本業にはさほどのメリットもないと見られているともいえるでしょう。

このITへの「忌避感」はどこからくるのか、「デジタル・デバイド」の根深い問題が示されているといえます。

ここまでのまとめ

中小企業のうち、とくに小規模事業者におけるIT化を考える記事を書いています。

その第1回目となる今回は、

  • 小規模事業者における未IT化率は、3割程度であること
  • 人手不足への対応や人材育成についても、IT化への関心は薄い

という点を紹介しました。

この記事の続きはこちらです。

小規模事業者とIT化について考える記事です。中小企業庁が実施している調査に基づき、中小企業の現場に密...