IT化に取り残された3割の小規模事業者のグループを考える【2】

小規模事業者とIT化について考える記事です。中小企業庁が実施している調査に基づき、中小企業の現場に密接している税理士自身が考えていきます。第2回目の記事です。

説明のポイント

  • コスト負担とIT化の問題。表計算ソフトや電子メールの利用は、コスト負担とは異なる話である
  • 導入しないのは、「よくわからないから」という可能性
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前回のおさらい

前回の記事では、小規模事業者のうち、3割は表計算ソフトを使っていない未IT化の企業であることをデータで確認しました。

また、人手不足への対応を見ても、マンパワーで解決する意向が強い一方で、IT化などのしくみによる解決は低い傾向が示されていることもわかりました。

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4.表計算ソフトは有料だから使わない、というわけではない

次に検討するのは、「Excelのような表計算ソフトは、お金がかかるので使われていないのでは?」という点です。

まずは、次の調査である「活用しているIT関連ツールやサービス」をご覧ください。

この調査における回答の割合を見ると、小規模事業者における電子メールとオフィスソフトの利用割合は、ほとんど同じとなっています。

引用:中小企業庁委託調査「平成29年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査」(2018年3月)問17-1

つまり、パソコンを使っていればインターネット環境も用意されており、電子メールもオフィスソフトも併用されていると見ることができるでしょう。

電子メールの利用については、1990年代では受信ソフトにシェアウェア(有料)を使っていることもありましたが、現在では無料が当然ですし、ブラウザだけで利用できます。

それにインターネットを利用していれば、プロバイダが1つはメールアカウントを用意しますので、別途のコストを負担することもありません。

コスト負担のない電子メールと、オフィスソフトの利用率がほとんど同じということは、オフィスソフトのコスト負担はとくに意識されていない、といってよいでしょう。

ちなみに上記の図表を見ると、「この中に活用しているものはない」と回答している割合は10.5%ですが、これをもって未IT化率と見るのは危険です。その理由は、作成代行を頼みやすい「自社ホームページの開設」が含まれているためです。

5.コスト負担が問題だからITを導入していない、は本当か?

「コスト負担」について、もう少し言及しておきます。

ここまで見たとおり、3割の小規模事業者はIT化されていない環境で仕事をしている可能性が高いといえます。

また、電子メールを使っている場合は、表計算ソフトも併用しており、パソコンを使っている人と使っていない人が明確に分かれているといえます。

ところで、IT化を推し進める上でよくいわれる課題は、「コスト負担」とされています。次のデータでも、その点が示されています。

 

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IT化とコスト負担の問題は、IT化への補助金が施策として用意されていることでもわかるでしょう。(例:IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金)

しかし、この記事で問題にしているのは「そもそも、パソコンを使っていない小規模事業者が3割いるらしい」ということです。

そして、先ほどの4.でも述べたとおり、パソコンをすでに使っている小規模事業者は、電子メールも表計算ソフトも使っているということでした。

そうなると、IT化していないことを「コスト負担」の問題にしてよいのか? という疑問がうかびます。

1990年代はともかくとして、現在では高性能なノートパソコンですら、1台の価格は10万円を切ることも普通です。つまり、パソコンは、即時償却が可能な価格で導入できる、ということです。

この点を見ても、コスト負担の問題ではないことは明らかです。

6.IT未利用者は、導入効果を予想できないから導入しない

IT化のネックは、「よくわからないから導入しない」ということが問題ではないか、と考えています。

先ほどの5.の調査回答をもう一度見てみると、「導入の効果がわからない」「ITを使いこなせない」といった割合が大きいことに気づきます。

この回答は、単なるパソコンの導入から、システムの導入まで幅広い意図を含んでいますが、ITに対する苦手意識をくみ取るには十分な材料です。

そうしてみると、「よくわからないから使わない(使えない)」。これが正直な感想のように思われます。

この点は、インターネットバンキングを使っていない小規模事業者で、その導入・利用に関する課題を調査した結果を見ても、似た傾向が出ています。

これらを見ると、

  • 「セキュリティへの懸念がある」と答えた割合が31.6%
  • 「導入の効果がわからない」と答えた割合が23.0%
  • 「取引が少なく、ATMで十分である」と答えた割合が27.7%

となっています。

セキュリティへの懸念は、たしかに事実としてありえます。しかし、導入しないことの「理由」としても、回答しやすい選択肢であることに注意が必要です。

また、「取引が少なく、ATMで十分である」という回答も、本当にそうかは判断が難しいところです。

小規模事業者とはいえ、この調査における調査対象を見るに、売上高が1,000万円以上と回答した事業者(つまり、課税事業者)は8割程度であることを考えれば、取引が「少ない」と言い切れるかは微妙です。

それに、取引件数が少ないのであれば、「基本料金が割に合わず、費用対効果が悪い」の回答割合がもっと高くてよいはずですが、この回答割合は12.7%と低いです。

こうしてみると、やはり「よくわからないから使わない(使えない)」という状況が真実味を帯びて見えてきます。

まとめ

小規模企業の3割がIT化されていないのでは、という問題点を、現場に密接している税理士の視点からお伝えする記事です。

2回目の今回は、

  • コスト負担とIT化の問題。表計算ソフトや電子メールの利用は、コスト負担とは異なる話である
  • 導入しないのは、「よくわからないから」という可能性

という点について説明しました。

この記事の続きはこちらです。

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