前回の記事では、マネーフォワードが決算説明資料で、法人個人の課金ユーザー数を初開示したことを紹介しました。
これを受けて、もう一方のクラウド会計の雄であるfreeeはどうかを見てます。
説明のポイント
- 課金ユーザー数は法人個人計で23万、1ユーザーあたり課金額は36.6千円と開示している(2020年9月末時点)
- マネーフォワードと比較すると、個人の比率がやや高い?
マネーフォワードは14万、freeeは23万
小見出しがまるで「関ヶ原」のようですが、最新の決算説明資料にて公開されている課金ユーザー数は、「マネーフォワードは14万、freeeは23万」ということです。
これは個人と法人のユーザー数の合計数です。
引用:株式会社マネーフォワード「2020年11月期 通期決算説明資料」(2021年1月)
引用:株式会社freee「2021年6月期 第1四半期決算説明資料」(2020年11月)
「freeeのほうがユーザー数が多いんだね、へー」という結論でこの記事も終わってよさそうですが、興味深いのは「1課金ユーザーあたりの課金単価」には、微妙な違いがある点でしょう。
課金単価は、マネーフォワードでは「APRA」、freeeでは「APRU」で表示されています。この単価を比較すると、マネーフォワードは「43,864円」、freeeは「36,600円」とされています。
freeeは個人の利用率がやや高い?
比較してみるとマネーフォワードのほうが単価が高くなっており、法人:個人の比率はおおむね「1:1」と開示されています。
この点を考えると、freeeの課金ユーザーにおける法人と個人の比率は、「個人のほうがやや多い」という見方もできそうです。
もちろん、両社では提供されているサービスや料金体系にも違いがありますし、とくに法人では企業規模によって課金額も大きく異なるので、これはあくまで可能性のひとつにすぎません。
「2年で利用者が2倍」の増加
freeeの開示資料を見ると、課金ユーザー数が「2年でほぼ2倍」になっている結果も興味深いところです。(2019年6月期1Q:119,079→2021年6月期1Q:233,341)
引用:株式会社freee「2021年6月期 第1四半期決算説明資料」(2020年11月)
一方のマネーフォワードは、過去2年のユーザー数の推移は不明です。
そこで売上高で見てみると、個人向け+法人向けの売上高は18/11期4Q→20/11期4Qの比較で、「2年で2倍」になっています。(※途中、バラ売りを一括パッケージ販売に変更したことに留意)
こちらも負けずに成長中と見てよいでしょう。
引用:株式会社マネーフォワード「2020年11月期 通期決算説明資料」(2021年1月)
弥生はどうなの?
このほか、パッケージ型会計ソフトの雄である弥生も見てみましょう。
数字を開示した資料は見当たりませんが、岡本社長のブログ(2021/1/22)を読むと、個人向けクラウド型の利用も大きく伸びていると述べています。
MM総研の調査(2020年5月)によると、弥生の個人向けクラウド会計は、シェア1位とされています。
マネーフォワードの課金ユーザー数をもとにMM総研のシェアから推定すると、個人事業主は25万程度の課金ユーザー数と推測されますが、どうでしょうか。
ユーザー数の上限は600万?
ちなみに、freeeの分析では、潜在顧客数を600万超と見積もっているそうです。
引用:株式会社freee「2021年6月期 第1四半期決算説明資料」(2020年11月)
課金ユーザー数は「マネーフォワードは14万、freeeは23万」ということですが、とくに法人では会計事務所の影響力が強いことから、パッケージ型からクラウド型への勧誘などで、顧客の争奪戦になっている状況もうかがえます。
まとめ
クラウド会計ソフトを提供する各社の資料をもとに、どれぐらいの利用者がいるのかを概観しました。
マネーフォワードが決算説明資料で課金ユーザー数を公表したことで、MF・freeeでの利用状況が見やすくなりました。ここで紹介した内容は、一部推測を含みますのでご注意ください。
政府が掲げるバックオフィスのクラウド利用率4割に向けて、各社が競い合っている状況といえます。
当事務所も、クラウド会計をオススメする会計事務所のひとつとして、興味深く見ています。