2023年4月開始「地方税お支払サイト」とクレカ納税などの変更点の整理

2023年4月、地方税共通納税システムの対象税目が拡大し、あわせて「地方税お支払サイト」がスタートしました。実務にどのような変化があったかを整理します。

説明のポイント

  • PCdeskからの納付方法に、クレジットカード納付が追加
  • 地方税の納付書に共通QRコード(eL-QR)が付されるようになり、「地方税お支払サイト」やスマホアプリ決済で納付が可能に
  • 固定資産税、自動車税など対応できる税目が増加
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1.PCdeskがクレジットカード納付に対応

2023年4月からの変化について、順を追って説明します。

まず1つ目の変化ですが、eLTAX公式税務ソフトであるPCdeskからの納付について、クレジットカードによる納付に対応しました。

これまではインターネットバンキング、ダイレクト納付、ペイジーコードの利用(インターネットバンキング・ATM)による納付が可能でしたが、これにクレジットカードが追加されました。

引用:PCdesk(WEB版)

以前の記事(2023年2月)でもお伝えしましたが、決済代行業者が国税とは異なることから、別途負担するシステム利用料も少し異なっています。

PCdeskにおける納税方法の追加は、後述する「地方税お支払サイト」と直接の関係はなさそうです。PCdeskを利用する場合において、その納付時における手段に、クレジットカードの利用が追加された、という理解になるでしょう。

クレジットカード納付の利用においては、ポップアップのブロック機能を解除する必要があります(参考:eLTAXよくある質問「クレジットカードを利用して納付手続きを行う際、「F-REGI公金支払い」サイトが開きません。」)。これは、下記の「地方税お支払サイト」で、インターネットバンキングやクレジットカード納付をする場合でも同様です。

2.「地方税お支払サイト」が開始

2つ目の変化が、「地方税お支払サイト(eLTAX for Payment)」の開始です。

これまでは、地方自治体ごとに単独で似たようなクレジットカードの決済システムはあったものの、この地方税お支払サイトでは全国共通での対応になりました。

地方税お支払サイトのホームページでは、次のように説明されています。

地方税お支払サイトとは、ご自宅やオフィスに届く納付書に印刷されたeL-QRやeL番号を使い、スマートフォンやパソコンで地方税をお支払いいただけるサイトです。

この決済システムで特徴的な機能は、今後送付される地方税の納付書において、「eL-QR」(エルキューアール)というQRコードや、「eL番号」(エルばんごう)という納付コードを利用できることです(下記の画像例の場合は納付書番号を利用)。

引用地方税お支払サイト_eLTAX_for_Payment_操作マニュアルVer.1.3

このQRコードや納付コードを、地方税お支払サイトに登録することで、納付手続を行うことができます。QRコードについては、パソコンのカメラから読み取ることも可能です。

【QRコード読み取りによる納付】

【納付書番号(eL番号)の入力による納付】

地方税お支払サイトの納付方法については、クレジットカード、インターネットバンキング、ペイジー番号の発行のほか、eLTAXの利用者IDでログインすることで、ダイレクト納付の利用も可能とされています。

引用地方税お支払サイト_eLTAX_for_Payment_操作マニュアルVer.1.3

また、ログインして納付を行った場合では、作業途中のデータ保存や、納付履歴の表示も可能とされています。

もしeLTAXの利用者IDを保有している場合は、ログイン後に納付することが望ましいでしょう。

この地方税お支払サイトの機能で、とくに強みといえるのは、QRコードの「連続読み取りモード」が用意されており、複数の納付書を一括して処理できる点です。自治体が異なっても一括納付できるようです。

多くの不動産や車両を所有する会社では、地方税の納付書を扱う枚数が多く、納税に関する事務負担が重いとされていました。

今後は地方税お支払サイトを利用することで、事務負担の軽減が見込まれます。

3.対象税目が拡大した

地方税共通納税システムの対象税目は一部に限られていましたが、2023年4月から対応する税目が拡大しました。

東京都主税局のホームページでは、次の図が見られます。

引用地方税共通納税システムの対象税目及び納付方法の拡大について(東京都主税局)

このほか、市町村税としても「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」「軽自動車税(種別割)」などが対応しているようです(参考横浜市)。

個人の納税としては、市県民税(普通徴収)、国民健康保険税(普通徴収)なども自治体しだいで対応しているようです。

税目ごとの実務で考えてみると、法人の申告にともなう地方税や住民税特別徴収ではPCdeskを経由して納付し、これ以外の納付書が送付されるコード付きの納付では「地方税お支払サイト」を利用する、という区分けになるでしょう。

4.スマホ決済アプリからのeL-QR読み取り・支払いが可能に

地方税お支払サイトの利用とは別で、eL-QRをスマートフォン決済アプリ(○○ペイ)から読み込むことで、地方税の納税が可能になりました。

引用スマートフォン決済アプリ一覧(地方税お支払サイト)

こちらの機能は、おもに個人向けの納付で活用されるものと思われます。従来もバーコードの読み取りによるスマホ決済が可能でしたが、これにQRコードが追加されたかたちです。

なお、一部のスマホアプリでは、決済手数料がかかる場合があるとされています。(参考横浜市

5.金融機関での納税も便利に

総務省の報道資料(2023年3月31日)によると、eL-QRについては、対応する金融機関の納税でも活用されるとのことです。

eL-QR対応金融機関であれば全国どの金融機関窓口でも地方税の納付が可能となります

これまでの地方税の納税では、金融機関ごとに取扱いが異なる制限がありましたが、この共通QRコードの利用により不便さが解消されます。

対応する金融機関は、eLTAXホームページにある金融機関リストで確認でき、「窓口(QR)」があれば対応しています。

会計事務所における留意点

上記でお伝えしたとおり、地方税お支払サイトにおいては、eLTAXの利用者IDを使用したログイン機能があります。

会計事務所がeLTAXのIDを代行取得したあと、これを会計事務所だけで管理しており、会社側にIDを伝達していないケースでは、地方税お支払サイトの手続きにおいて会社側に不便さが生じることから、会社にIDと暗証番号の共有をする必要があるでしょう。

ログインページの下の方にはIDの新規取得のボタンがあり、うっかりすると会社側で重複取得の可能性があることに留意が必要です。

また、地方税お支払サイトにおいてeLTAXの利用者IDでログインすると、初回ログインにおいては、通知するメールアドレスの設定を求められます。この場合において、最初に表示される通知アドレスは、eLTAXにて現在登録済みのアドレスが宛先の候補として表示されます。

もし会計事務所のメールアドレスだけが設定されている場合では、会社側としては宛先のメールアドレスをどうすればよいか、戸惑いを覚える可能性が高いです。

この点の対応ですが、とりあえずは会計事務所のメールアドレスを指定したあとで、メニュー画面「通知先メールアドレスの設定」から、通知先を任意のメールアドレスに変更することが可能です。

地方税お支払サイトの通知先メールアドレスを変更しても、本体であるeLTAXの通知先メールアドレスには影響しないようです。

今後の電子化において、電子的な納税通知の宛先を、希望に応じてeLTAXIDとする方向性も検討されているようです(参考「地方税における電子化の推進に関する検討会とりまとめ」2022年11月)。今後、eLTAXIDの管理はさらに重要になると思われます。

まとめ

ここまで、2023年4月から変化した地方税の納税に関する実務について説明しました。

かいつまんで説明すると、

  • 地方税共通納税システムの対象税目が拡大した
  • 納付書に共通コードが付され、地方税お支払サイトで納付できるようになった
  • PCdeskからの納付もクレジットカード納付に対応した

の3点で整理できると思います。

納税の事務負担が重かった会社では、地方税お支払サイトを利用するメリットが大きいと思われます。

謝辞:この記事は小林雄気税理士のリクエストを受けて作成しました。リクエストありがとうございました。
引用元の明示がない画像は、「地方税お支払サイト」からの引用です。

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