最近、国税犯則取締法の改正が検討されていると報道されました。この点について、政府の税制調査会において説明があったので、資料を確認します。
説明のポイント
- 国税犯則取締法の改正が検討されている
- 政府の税制調査会で、問題点の説明資料がアップされており、わかりやすい
国税犯則取締法とは?
国税犯則取締法とは、国税に関する犯則事件の調査について、国税査察官が犯則嫌疑者に対して質問、検査したり、裁判所の許可を得たうえで証拠を差し押さえできることを定めた法律です。
国税犯則取締法の条文はレトロな文語調で、長らく改正の手が入らなかったことがわかります。
参考:国税犯則取締法(e-gov)
税理士を目指すための税理士試験において、この法律は受験科目になっていません。
査察調査の着手件数は毎年おおむね200件弱とされており、税務の専門家である税理士にとっても、実務における関連度の低い法律といえます。
ちなみに、「犯則調査」と「税務調査」は別のものです。一般的な納税者には、犯則調査は関わりの無いもので、犯則調査が行われるのは大規模な脱税が疑われる場合です。
参考:税務執行のあらまし(国税庁)
サーバー上のデータの押収が難しい
国税犯則取締法の改正が話題になったのは、サーバー上のデータの差し押さえが難しいという事情があるようです。政府の税制調査会においてこの点が説明され、資料としても公表されています。
概要はこのような説明です。
- 査察官の差し押さえたいメールやデータが、犯則嫌疑者のパソコン内に保管されておらず、プロバイダやクラウドのサーバーにあると、すぐには差し押さえできない
- 差し押さえのために裁判所に許可を得ている間に、証拠が隠滅される恐れもある。また、サーバーの場所の特定が難しく、差し押さえが困難な場合もある
このような問題を改善するため、国税犯則取締法の改正が検討されているとのことです。
参考:第5回 税制調査会資料一覧(内閣府、2016年10月25日)
まとめ
国税犯則取締法の改正について、政府の税制調査会における資料から問題点を確認しました。
かいつまんだ話、パソコン内にデータを保管せずにクラウドで保管したら、国税査察官の調査が難しくなるという話です。
しかし、気になる点もあります。
例えば、サーバーの差し押さえが容易になった場合、そのサーバーに含まれる調査対象外のデータまでもついでに参照されるのではないか、という懸念があります。
メールや帳簿などのデータをローカルの環境で利用しないことは、今では当たり前のことですので、今後も注目しています。
【追記】2016/11/22
政府税調から、国税犯則調査手続きに関する検討結果が公表されています。
刑事訴訟法に足並みをそろえ、クラウドからデータをコピーしたうえで、差し押さえできる方向性で検討されています。
参考:【PDF】「国税犯則調査手続の見直しについて」(平成28年11月14日)
参考:国税犯則調査手続の見直しに関する会合 2016年度(内閣府)