今年中に他の会社で働いたあとに、転職してきた従業員は、以前の勤務先が交付した源泉徴収票がないと年末調整できません。
説明のポイント
- 今年、他の勤務先で働いていた従業員は、前職の源泉徴収票が必要
- 前職のある従業員には、早めに源泉徴収票を取り寄せるよう伝達する
新卒、転職してきた従業員に要注意
新卒の従業員や、転職してきた従業員(アルバイトやパートも含む)の年末調整については、注意すべき点があります。それは、以前の勤務先の源泉徴収票が必要ということです。
例えば、平成28年6月に入社した従業員がいるとします。
その従業員が、平成28年1月~5月まで別の会社で働いていた場合は、その別の会社が交付した「平成28年1月~5月までの源泉徴収票」が必要です。
前職の源泉徴収票がない社員への対応
国税庁発行の手引き書「年末調整のしかた(平成29年分)」において、次の記載があります。(53ページ)
前職分の給与とその徴収税額については、その人が前の給与の支払者から交付を受けた「給与所得の源泉徴収票」などで確認することになりますが、その確認ができるまではその人の年末調整は見合わせてください。
つまり、前職の源泉徴収票がない従業員については、年末調整ができません。
あとは従業員本人の問題になってしまい、従業員は自分で確定申告する必要が生じます。
こんな事例に要注意!
新入社員や、中途採用の従業員について、年末調整に気をつけるべき注意点を紹介しましょう。
(その1)前年分の源泉徴収票を持ってくる
よくあるのは、中途採用の従業員が、間違った源泉徴収票を持ってくることです。
- 必要なのは、今年(平成28年分)の源泉徴収票
- 従業員が持ってきたのは、前年(平成27年分)の源泉徴収票
笑い話のようですが、本当に多い事例です。
前職の退職時には、源泉徴収票を交付されていないのでしょう。このため、中途採用の従業員はよくわからないままに、手もとにあった前年分の源泉徴収票を持ってくるわけです。
このミスに気づき、再度、正しい源泉徴収票を持ってくるようにお願いしても、時間切れになってしまう恐れもあります。
中途採用の従業員には、今年の源泉徴収票であることをあらかじめ念を押したほうがよいでしょう。
(その2)アルバイトの前歴があった
新卒の従業員で多いのは、次の事例です。
- 就職したのが平成28年4月
- 平成28年1月~3月までは学生で、アルバイトをしていた
この場合でも、アルバイトは「前職」に該当します。
しかし、アルバイトの前歴について会社が確認をしていないことも多く、そのまま年末調整を行ってしまう事例も、実際にはあると考えられます。
(その3)以前の勤務先を円満に退職していない
中途採用の従業員が、源泉徴収票の持参をしぶるケースがあります。例えば、以前の勤務先を円満に退職しておらず、源泉徴収票も受け取っていないことがあります。
この場合、従業員は正直に「源泉徴収票を持ってこられない」といいづらいようです。そして、そのまま時間切れになり、年末調整ができなかったという事例も見受けられます。
会社としては、別に年末調整をしなくても問題はありません。しかし、その社員にとっては、年末調整をしないと不利になるケースも多いです。
こうした点をふまえて、次のアドバイスを事前に伝えると親切でしょう。
- 前職の源泉徴収票がないと、今年の年末調整や確定申告ができず、税金を多めに負担する場合も多いこと
- 以前の勤務先は、退職後1月以内に源泉徴収票を交付する「法律上の義務」があること(所得税法226条1項)
- 電話ではなく、書面を郵送して、源泉徴収票の交付を依頼しても問題ないこと
- 交付が見込めない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出手続」を行うことで、税務署からも指導してもらえること
- 深刻なトラブルの場合は、相談機関の利用も検討した方がいいこと(参考:離職前の会社との間で、労働に関するトラブルが発生しているのですが、公的な相談機関を教えてください。(ハローワークインターネットサービス))
ようやく源泉徴収票が交付されても、年末調整に間に合わなかった場合は、自分で確定申告をするように伝えましょう。
まとめ
新卒の従業員や、中途採用の従業員について、年末調整に気をつけるべき点を紹介しました。
はやめはやめに源泉徴収票の準備をうながしましょう。前職の源泉徴収票がないと、年末調整はできません。
従業員にとっても、年末調整が完了しないと、正しくない税金の納付状況になっているわけです。できれば、年末調整で済ませるのが理想といえるでしょう。