【注意喚起】電子契約の落とし穴 タイムスタンプのない契約は印刷が必要!?

せっかく電子契約でペーパーレスになっても、わざわざ印刷が必要になる場合があるかもしれない、という点を注意喚起します。

説明のポイント

  • 税法の要件を満たす電子契約は、タイムスタンプが必須
  • 電子契約サービスの中には、タイムスタンプのないものがある
  • タイムスタンプがない場合は、印刷して保管する
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電子契約とは

「電子契約」とは、契約書などをネットで作成・締結できるサービスです。

電子契約がいま注目されているのは、各種のメリットがあるからです。

例えば、紙の契約書では必要だった郵送・保管コストは、電子契約では不要になります。さらに、紙の契約書ではないため、印紙税の負担も必要ありません。

契約書を作成したあとでも、契約書の紛失を恐れる必要もなく、保管を一元化することができ、効率も大幅にアップします。

……このように、電子契約には魅力的な点が目白押しなので、電子契約サービスが近年において熱い視線を集めているわけです。

しかし! 電子契約には知られていない「落とし穴」もあります。この記事では、電子契約を利用する上で知っておきたいポイントを紹介します。

税法の保存要件で気になる点

先に結論からいいましょう。要件を満たさない電子契約サービスを使うと、契約書は電子のまま保管できません。契約書を紙に印刷して保管する必要があります。

わざわざペーパーレスで処理できたのに、要件を満たせなければ、印刷する必要が生じるわけです。これでは、電子契約のありがたみは半減してしまいます。

なぜ電子契約で印刷の必要性があるのか?

なんで、こんな処理が求められるのでしょうか? この問題が生じるのは、電子帳簿保存法と税法の要件が関係しています。

税法では、取引に関する契約書等は紙で保存することが通常でした。

しかし、電子契約という新しい形態が出てきたことで、一定の要件を満たした電子契約については、これをデータのまま保存することができるようになっています。

この取り決めは、電子帳簿保存法に要件の記載があります。もう少し理解を進めてみましょう。

早わかり! 電子取引と電子帳簿保存法

【1】税務署への届出は必要ない

電子帳簿保存法というと、最近では「スキャナ保存」が有名になったことから、税務署の承認が必要な処理という印象があるようです。

しかし、電子取引については、税務署の承認は関係ありません。この電子取引には、電子契約も含まれます。

ちなみに、電子取引には、ネット通販で物を買ったという、ごく一般的な行為も含まれます。これに関連した内容は、以前の記事で紹介しました。

電子帳簿保存法第10条における「電子取引」の保存要件について、興味深い解説を紹介します。また、ネット...

【2】データのまま保存する要件は?

スタンプ

電子取引に関するデータを、紙に印刷せずに保存するには、一定の要件を満たす必要があります。ここがポイントです。

これは、データの場合だと改ざんしやすいという懸念があるため、要件が厳しくなっているわけです。

その保存要件は、おおまかにいって次のようになっています。

  • タイムスタンプを押すこと(または改ざんを防ぐ規程の整備)
  • 契約書を画面で表示できること
  • システムを利用する場合は、その説明書を備え付けておくこと
  • 日付・契約名・金額などで検索できること

とくに、タイムスタンプを押すというのは、非常に重要です。

タイムスタンプにより、契約書などを作成した日時がハッキリと明らかになり、改ざんを防ぐ効果があるためです。

紙の契約書では、作成日を確実に証明することはできないので、むしろタイムスタンプを押した電子契約のほうが、契約書の真実性は高いといえます。

【3】要件を満たせない場合はどうなる?

要件を満たせない場合は、電子契約で作成した契約書など(国税関係書類)は、印刷して紙で保管する必要があります。

電子契約サービスの利用者は、要件を認識しているのか?

電子契約のサービスにおいては、「便利なサービス! コスト削減!」という面だけが強調されており、電子帳簿保存法の要件という点は、あまり注目されていないようです。

筆者がこの点に強く関心を持ったのは、「クラウドサイン」という電子契約サービスを利用していたときのことです。

「クラウドサイン」は、弁護士ドットコム株式会社が提供しています。最近では「スタートから2年で導入社数が1万社を超えた」と発表している人気サービスです。

クラウドサイン

筆者は、ある大企業が提供するサービスに申込みをしたときに、契約書の作成において、クラウドサインでの署名を求められました。

ところが、作成された契約書のPDFを見ると、タイムスタンプを押された形跡がありませんでした。

下記の画像のとおり、PDFには電子署名しかありません。タイムスタンプのない電子署名だけでは、長期にわたる証拠力は保証できないとされています。

クラウドサインの電子署名

クラウドサインは「印刷が必要」と言っている

タイムスタンプのない電子契約について、クラウドサインはどのような対応を推奨しているのでしょうか。

クラウドサインのヘルプを見ると、次の記載があります。

税法上の保存義務

注文書、契約書、領収書、見積書等の取引情報に係る書面は、紙の書面で7年間保存することが定められています。(法人税法施行規則59条、67条)

電子契約の場合には、電子契約を行った電磁的記録を出力した書面を保存することによって保存義務を満たします。(電子帳簿保存法10条但書)

クラウドサインによる保存方法

クラウドサインで契約締結し、締結したPDF書面をダウンロードし、当該書面を印刷の上、保存することによって、税法上の保存義務を満たすことになります。

引用:税法に基づく保存義務にはどのように対応すればよいでしょうか(クラウドサイン、2017年9月19日確認)

つまり、税法の保存義務を満たすためには印刷が必要、ということです。

この点を、どれだけの利用者が認識しているのでしょうか?

クラウドサインに聞いてみました

このヘルプの情報だけでは不十分と考え、筆者自身でクラウドサインに問い合わせを行いました。

その回答によれば、電子契約をした書面の印刷が必要とされているのは、

  • 「タイムスタンプ」が付与されていない場合は、印刷が必要であること
  • 「タイムスタンプ」を付与できるのは、有料プランを利用しており、追加オプションを申込んだ場合のみであること(参考)
  • 現行のクラウドサインでは「検索ができること」という要件を満たせていないこと(2017年中に改善予定)

ということでした。

追記:2018年3月、クラウドサインのサービスが改定され、有料プランについては電子帳簿保存法に対応しました。しかし、無料で利用できる個人事業主向けのフリープランでは、依然として同じ問題が残っているといえます。

書面の印刷をしておきましょう

話を理解しやすくしましょう。

クラウドサインのように、タイムスタンプのない電子契約サービスを使っている事業者は、税法に関する書類(国税関係書類)の電子契約は、紙に印刷することが必要です。

クラウドサインにおける「検索ができること」の要件は、すぐに改善される見込みとのことですから、あとはタイムスタンプの不足が問題になるでしょう。

個人事業主の場合などで、無料プランを使っている場合は、タイムスタンプは押せません。せっかく電子契約を利用しても、印刷保管の手間が生じます。

ちなみに、電子契約したPDFを印刷した場合においても、その印刷物に印紙を貼る必要はありません。これは、電子契約が主体の契約書で、PDFを印刷したものはその写しと考えるためです。(株式会社イーリバースドットコムのサイトにおいて、この点を実際に国税庁に確認したという記述が見られます。)

水を差すようで恐縮ですが……

電子契約のサービス自体は、筆者も便利であると考えており、利用は促進されるべきものと考えます。

しかし、「税法の保存義務」という観点が抜け落ちていることが気になっています。

電子契約サービスを提供する事業者は、タイムスタンプを別枠のサービスとせず、すべての書類にタイムスタンプを付与することが望まれます。

このままでは、中途半端な電子契約が量産されるのでは……という懸念は拭えません。

この記事では、「クラウドサイン」をやり玉にあげることになってしまいました。

同サービスは利用者数が急増しているようですので、利用者も注意点を認識する必要があると考え、この記事で注意喚起した次第です。

 まとめ

電子契約サービスの落とし穴について解説しました。

電子契約は確かに便利なサービスですが、税法の保存義務を満たすためには、一定の条件が必要です。

こうした部分を認識せずに、単に便利なサービスだということで飛びつくと、税法の要件を満たさないという落とし穴もあります。

電子帳簿保存法と税法の関連について、トラブルが生じたという話は、現時点で筆者は耳にしたことがありません。

しかし、実務に関わる方であれば、いまのうちからトラブルの芽を認識しておくことが重要でしょう。

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