電帳法Q&A「電子取引」令和4年6月改訂の確認

国税庁は2022年6月に、電子帳簿保存法Q&Aを改訂しました。このうち、電子取引について気になった部分をメモ的にチェックしておきます。

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改訂部分に下線部がついている

ありがたいことに、Q&Aで改訂された部分に下線部がついているものが提供されています。こちらに沿って、改訂部分をチェックします。

参照しているQ&Aはこちら(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和4年6月) です。

問4

「ヘ」の項目が追加されています。

クレジットカードの利用明細が電子データで交付された場合は、電子取引の取引情報に該当するので、保存が必要とされています。

問8

新設です。e-Taxの電子納税における納税完了通知は、電子取引の取引情報に該当しないとのことです。

その理由は、電子納税は納税者が日本銀行に納付するしくみで、税務署が納税者に領収書に相当する情報を交付する立場にない、とのことです。

この部分はやりとりが微妙な三角関係で、電子納税は

利用者がe-Taxからのダイレクト納付による納付指図又はインターネットバンキングやATM等からの納付指図を行うと、金融機関が利用者の方の預貯金を国庫金勘定に振り替えることになります(e-Taxホームページ

ということです。e-Taxはその振替があったことを金融機関経由で確認して、通知を出しているだけ、ということでしょうか。

問9

新設です。インターネットバンキングによる振込等はEDI取引に該当し、電子取引として電子データの保存が必要とのことです。

保存が必要なものとして、「金融機関の窓口で振込等を行ったとした場合に受領する書面の記載事項(振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等)が記載されたデータ」とされています。

通帳の履歴データに振込先の会社名が表示されている場合、このデータをもって「取引年月日・金額・振込先名」に該当すると思っていましたが、これとは別で「金融機関の窓口で振込等を行ったとした場合に受領する書面の記載事項が記載されたデータ」があれば、それも保存が必要ということでしょうか。

振込依頼の受付画面は関係ないとありますが、正直わかりづらいので、もう少し詳しい情報がほしいです。

問14・問38

問14に訂正の下線部は見当たらないのですが、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件の概要」のうち、次のいずれかの措置を行う(規4①)の三について、訂正があります。

この部分、改訂前の「令和3年7月版」(国立国会図書館WARP参照)では、

三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用

だったのが、改訂版では

三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う。

に改訂されています。

この改訂部分に下線部がない理由は……、要件に変更があったと誤解される可能性を考慮してのことでしょうか。(好意的な見方をしておきます)

なお、当初のQ&Aが誤解を招きやすいことは、当ブログでも2022年3月の記事で気にしていました。

あげつらいをしたいわけではありませんが、新設された問38「電子メール等で受領した領収書データ等を、訂正・削除の記録が残るシステムで保存している場合には、改ざん防止のための措置を講じていることとなりますか。」でも、

・・・同号では、上記のいずれかの要件を満たしたシステムを使用して「取引情報の授受及び電磁的記録の保存を行うこと」と規定していることから、電磁的記録の保存のみを当該システムで行っている場合は該当しません。

とあって、ここに関連する話なので念のため触れておきました。

問17

スマホだけでプリンタがない場合はどうなの? という話。こちらは、コンビニのプリンタでも「備え付け要件」を満たすことができるとのことです。

この話は、当ブログでも2022年4月にそのまま同じことを検討しており、そのときは「備え付け要件」を満たさないのでは……と疑問を書いたのですが、セーフだそうです。

問59の副業関係にも影響するため、柔軟な対応でよかったと思います。

問26

追記ありです。電子取引では、取引情報の電子データが保存されていればよいわけですが、これにあわせて、

・・・自己の管理の便宜のために書面に出力したり、データ喪失時に備えて念のため書面に出力したものを併せて保存しておくといった対応をすることは、特段禁止されていません。

とのことです。

余談ですが、当ブログでは勢いで「紙保存の禁止」と誤記したことがありますが、これは「紙保存措置の廃止」が正しいです。広く見渡すと「紙保存NG」という簡便な表現も見受けられます。

たとえ「禁止」と書いたとしても、それは保存要件や制度の改廃を指すのであって、それがまさか「電子データの印刷そのものが絶対的に許されない」なんて、そんなことは誰も思わないでしょうが。。。なぜこんな話になったのでしょうか。

ところで興味深いのは「データ喪失時に備えて念のため書面に出力したものを併せて保存しておくといった対応をすることは、特段禁止されていません。」と書かれていることです。

書面出力はデータ喪失に備える方法のひとつ、という意味では受け取れないでしょうが、結構微妙な感じです。やる分には止めないけど、推奨もしない、という程度でしょうか。本来的にバックアップは電子データでやってほしいわけでしょうし。

問28

見落としそうになるのですが、事務処理規程のサンプルに追記されています。「第6条(対象となるデータ)」の部分です。

取引先等とデータでやりとりしたもののうち、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)が含まれるデータについては、全て要件に従ってデータのまま保存していただく必要がありますのでご注意ください。

わざわざ追記があったということは、関連する質問が多かったのでしょうか……?

問44

検索機能の確保が不要である売上高1,000万円の基準について、「売上高」の詳細が示されています。

売上高なので、営業外収入、雑収入は含まないこと、消費税法上の課税売上高とは異なるということです。

また、開業から2期目までは、判定期間である2期前の売上高がないので、検索機能の確保は不要ということです。

まとめ

電子帳簿保存法Q&Aのうち、電子取引関係から、令和4年6月改訂分について、気になった点を採りあげてみました。

クレジットカードの利用明細は、意外と保存忘れがあるかもしれません。明細をダウンロードできる期間が短いカード会社もありそうなので、注意した方がよさそうです。

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