年末調整や確定申告のために、生命保険会社などから送られてくる、所得控除のハガキ。これが、今年(平成30年)からネットで印刷もOKになりますので、ご紹介します。
説明のポイント
- 年末調整の控除用ハガキが、自分でプリントもOKになる。
控除用ハガキ、「自分で印刷」になるかも?
年末調整の風物詩といえば、生命保険会社などから送られてくる、控除用のハガキ(控除証明書)です。
当たり前のような光景ですが、これが「ハガキ」ではなく、自分で印刷する方法も認められるようになります。
これは、平成28年度の税制改正で決まったことで、およそ2年前の記事でお伝えしました。
2年前に書いた記事に「2年先の話」と書いたので、ついにその時期が到来したということです。2年はあっという間ですね。
で、話の要点をまとめると、平成30年分の11月頃に生命保険会社などから届く控除用のハガキが、「控除証明書を自分で印刷してね」という形式でもOKになる、ということです。
どんな方式ができるのか?
「自分で印刷」でもOKになる……? いったいどんな方式なのでしょうか。
現在公開されている情報
- 所得税法施行令第二百六十二条第一項に規定する国税庁長官の定める方法を定める件
- 告示の概要(パブリックコメント)
によると、
- 納税者が国税庁ホームページ上のシステムを利用することで作成される電磁的記録で、
- 生命保険会社等から送信された「電子証明書等に記録された情報の内容」 に
- 改ざん防止措置としてのQRコードが付されているものを電磁的記録印刷書面とする
とされています。これをイメージで理解しようとすると、こんな感じでしょうか。
この新しい仕組みを何と呼んでいいのかわかりませんが、たんに電子交付と呼ぶとイメージしづらいので、「ハガキ電子化」と呼んでおきます。
まあ、「電子化」と呼びつつも結局は紙にプリントするあたりに、ペーパーレスじゃない残念感があります。
控除用ハガキはなくならない
この制度ができたからといって、控除用のハガキがなくなることは、まず考えられないでしょう。
いままで根付いた固定観念は恐ろしいものです。ハガキを廃止したら、大混乱が予想されます。
このため、「ハガキの送付を望まず、自分でプリントしたい人は、こちらで登録をお願いします」という、補助的な方法に変わっていく可能性が考えられます。
この方法を採用した場合の法人側のコストが不明なので、ハッキリとはわかりませんが、方式だけを見るならば、ネット専業の生命保険会社では採用されやすいように感じます。
なお、この制度は「生命保険料控除」「地震保険料控除」だけでなく、「寄附金控除」でも採用されます。確定申告で利用する寄付金の控除証明書も、印刷方式に変わる可能性があります。
「電磁的記録印刷書面」と年末調整のペーパーレス化
関連情報として、ちょっとマニアな話題に触れておきましょう。
今回の「ハガキ電子化」で印刷できる控除用証明書は、「電磁的記録印刷書面」という用語で呼ばれています。
そして、平成30年分からは、「生命保険料控除」「地震保険料控除」「寄附金控除」について、「ハガキ電子化」がOKになります。
さらに、証券会社が送付する「特定口座年間取引報告書」も、電子交付されたものを印刷してもOKになります。(いまは、電子交付を印刷しても確定申告書に添付不可)
こちらは、平成31年分からの実施です。証券会社の電子交付の書面も「電磁的記録印刷書面」と呼ばれています。
証券会社では、ネット取引の環境が整備されていることもあり、電子交付そのものが実現していることを考えると、「特定口座年間取引報告書」の印刷対応もスムーズのように感じます。
逆にいうと、生命保険会社などの「ハガキ電子化」は、ネット生保ぐらいにしか普及しないのでは……という気もします。
年末調整をラクにする最終形態としては、マイナポータルを活用した電子化も検討されているそうです。この方法ならば、紙の印刷は一切不要になりそうです。
ただし、マイナンバーカードの普及が課題になります。もし実現すれば、企業が一斉号令で従業員にマイナンバーカードを取得させることになるでしょう。
まとめ
自分で控除証明書をプリントする方法が、平成30年分から始まることをお伝えしました。
長らく続いた既存の方法を変えることは、エネルギーを要します。
雪崩を打ったような変更は考えづらく、ぽつぽつとコストの低い制度に置き換わっていくことになるのでしょう。
追記
2018年9月、国税庁は「控除証明書等の電子的交付について」を公表し、QRコード付控除証明書等を作成するための「QRコード付証明書等作成システム」の提供を開始しました。
その情報によれば、保険会社等から交付を受けたXMLデータ(電子的控除証明書等)を用いて、QRコード付控除証明書等(書面)を作成できるほか、e-Taxでの確定申告時にそのXMLデータをそのまま添付することもできるとされています。
また、2020年からは年末調整の電子化も開始される予定で、XMLデータを活用できるとされています。